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ニュースレター

シンガポール国際仲裁の最新動向 2022

NO&T Asia Legal Update アジア最新法律情報

NO&T Dispute Resolution Update 紛争解決ニュースレター

著者等
青木大
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Asia Legal Update ~アジア最新法律情報~ No.113/NO&T Dispute Resolution Update ~紛争解決ニュースレター~ No.4(2022年7月)
関連情報

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The NO&T Podcast – JP
シンガポール国際仲裁の最新動向 2022

業務分野
※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

 本稿では2022年4月12日に公表されたSIACの2021年度年次報告をベースに、シンガポールにおける国際仲裁に関する近時の動向について説明する。

SIACにおける新件数の推移

 SIACの2021年における新件受任数は469件と、前年(2020年)の1080件から大幅に減少した。ただ一昨年(2019年)の数字(479件)と比べると同レベルであり、2020年の数字が異常値であった可能性はあるものの、総訴額(65億SGD)は一昨年(109.1億SGD)と比べても相当減少しており、平均訴額(2181万SGD)も昨年、一昨年より減少していることからすると、数字だけをみれば2021年は振るわなかった年といわざるを得ない。2020年は正にコロナ禍が始まった年であり、ビジネス上も種々混乱がみられたことが紛争案件の増加につながった可能性はあるが、2021年は非常事態がある意味常態化しつつあるなかで、企業としてもポストコロナを見据え、大きな紛争案件を開始することについて様子見していたというような状況もあったのかもしれない。いずれにせよ、SIACが紛争解決地としての魅力を失っているという評価は特段聞こえてきておらず、2019年の案件数の水準は概ね維持していることからすると、基本的にはサイクリカルな変動(あるいは2020年の急増の反動減)と捉えるのが適当であろう。

(新件受任数)

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
188 235 259 222 271 343 452 402 479 1080 469

(新件の総訴額の推移 (Billion SGD))

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
1.32 3.61 6.06 5.04 6.23 17.13 5.44 9.65 10.91 11.25 6.5

(新件の平均訴額(Million SGD))

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
7.03 15.36 24.44 23.65 23 55.63 19.34 32.84 41.81 25.51 21.81

国別新件数の推移

 シンガポールを除く国別新件数(申立人側・被申立人側の当事者の合計)では、1位インド、2位中国、3位香港となった。昨年はインド、米国が突出していたのに対し、今年は各国の数値が相当程度平準化されている印象である。その他は東南アジアを中心とする常連の他、ウクライナが8位にランクインしているのが目に留まる(なお、ウクライナの当事者は全て被申立人側のようである。)。

 日本の当事者が関係する案件は20件と、昨年からは半分以下に減少し、トップ10から脱落した。内訳としては、申立人側10件、被申立人側10件となっており、昨年が申立人側37件、被申立人側9件であったことと比べると、日本当事者側が仲裁のトリガーを引くケースが減少している。

(国別新件数の推移)

2017 2018 2019 2020 2021
1 インド(176) 米国(109) インド(485) インド(690) インド(187)
2 中国(77) インド(103) フィリピン(122) 米国(545) 中国(94)
3 スイス(72) マレーシア(82) 中国(76) 中国(195) 香港(80)
4 米国(70) 中国(73) 米国(65) スイス(135) 米国(74)
5 ドイツ(68) インドネシア(62) ブルネイ(49) タイ(101) マレーシア(56)
6 香港(38) ケイマン諸島(53) UAE(49) インドネシア(85) ベトナム(55)
7 UAE(34) UAE(51) インドネシア(39)、タイ(39) 香港(60) 韓国(46)
8 インドネシア(32) 韓国(41) マレーシア(38) ベトナム(52) ウクライナ(39)
9 日本(27) 香港(38) 英国(34) 日本(46) UAE(34)
10 韓国(27) 日本(30) 香港(33) ケイマン諸島(42) インドネシア(33)
日本 27件 30件 26件 46件 20件

緊急仲裁(Emergency Arbitration)

 訴訟における仮差押・仮処分に対応する制度として、緊急仲裁人による緊急仲裁の制度がある。下記のとおり、緊急仲裁の申立件数は2021年において15件あり、(その年の新件数の多寡にかかわらず)近年横ばいが続いている。2021年において緊急仲裁が申し立てられたのは新規受件数のうち約3%であり、それほど活発な利用が図られているわけでは必ずしもない。

(緊急仲裁の申立件数)

2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
5件 6件 19件 12件 10件 20件 15件

簡易仲裁手続(Expedited Procedure)

 訴額が600万SGD(約4.8億円)以下の案件等、比較的少額かつシンプルな紛争について単独仲裁人の下、原則6ヶ月以内に仲裁判断が下されるという手続が簡易仲裁手続である。2021年は前年に比して、仲裁手続全体の新規受件数が減少しているにもかかわらず、簡易仲裁手続の申立件数は増加した。前述の総訴額・平均訴額の減少が影響している可能性があるほか、当事者としてもより迅速でコストが節減できる可能性がある簡易仲裁を選好するケースが増えてきている可能性がある。

(簡易仲裁の申立件数)

2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
69件
(27件認容)
70件
(28件認容)
107年
(55件認容)
59件
(32件認容)
61件
(32件認容)
88件
(37件認容)
93件
(26件認容)

早期却下手続(Early Dismissal)

 早期却下手続については、①明らかに法的根拠を欠く、あるいは②明らかに仲裁廷の管轄外の事由に関する主張について、仲裁廷が早期却下手続として審議することを許可した場合、申立後60日以内に仲裁廷がこれらの主張を却下するかどうかを判断するというものであり、コモンロー圏のSummary Judgementに近い制度として2016年仲裁規則改正で導入された。2021年には10件の申立があり、2020年に比してその数は増えている。

 しかし、認容例(すなわち申立に基づいて相手方主張が早期却下された例)は少なく、当事者としてはこの制度に基づいて相手方主張の早期却下を求めることには未だ躊躇が感じられるところがある。活発な利用が図られるためにはもう少し制度的工夫も必要であろう。

(早期却下手続の申立件数)

2017 2018 2019 2020 2021
5件申立
4件許可
(認容数は不明)
17件申立
6件許可
(うち3件が認容)
8件申立
5件許可
(うち1件のみ認容)
5件申立
2件許可
(うちいずれも棄却)
10件申立
3件許可
(1件棄却、
2件は未決)

最後に

 2021年は、SIACにおける仲裁案件の増加傾向は一段落したが、減少に転じたという明らかな兆候までは見られず、引き続き世界各国の多くのユーザーに利用されている。上述の近時導入された制度については、簡易仲裁は一定の利用者を獲得しているものの、緊急仲裁及び早期却下手続については利用状況が必ずしも芳しくない。今後、より迅速・低廉な紛争解決の実現に向けたイノベーティブな新制度の導入も期待される。

 なお香港の仲裁機関HKIACの2021年の新規受件数は514件であり、2020年の318件から大幅増加している。2021年のQueens Mary大学の調査で魅力的な仲裁地・仲裁機関の順位をSIACに抜かれたことからの巻き返しが図られる可能性もあるが、中国に関連する事案が取扱事案の多くを占めるようであり、今後もグローバルにユーザーをひきつけることができるかについては課題もあろう。

 なお、中国と香港間の取決めにより、中国の裁判所は、HKIAC仲裁に関連する事案について、仮差押・仮処分を下すことができる(SIACその他の中国国外の仲裁機関に関連する事案については同様の取扱はなされていない。)。従ってこの点に関しては、中国国外当事者が中国当事者と仲裁合意を締結する場合に、HKIACとしておくことに一定のメリットがある。当該取決めが成立した2019年10月1日以降、2021年9月14日時点で、50件の仮差押・仮処分申立(そのうち47件が仮差押)が中国の裁判所になされ、そのうち23件の請求が認容されているとのことである。中国裁判所が判断を下す期間は平均で申立から8日であり、紛争が目前に迫り、中国当事者の財産保全が喫緊の課題となる海外当事者にとっては有用なツールとなっている。

 前述のとおり、SIACにおける緊急仲裁は活発な利用が図られているとは必ずしもいえないが、このような中国裁判所における状況をみると、更なる活用拡大の余地はあり得る。申立から約1週間程度で判断が下され、しかも約半分の請求が認容されるというのは申立人側の立場からみると大変使い勝手がよい制度に映る。SIACにおける緊急仲裁は早くとも2週間程度はかかり、認容件数は公表されていないが、緊急仲裁における仮差押・仮処分の認定の基準は必ずしも明確ではなく、認容のハードルも低くない。もう少し緊急仲裁の使い勝手の良さがユーザーにみえるようになってくることに今後期待したい。

 日本においても仲裁廷による緊急保全措置に関連する仲裁法の改正が控えているが、日本の仲裁機関においても、緊急保全措置の使い勝手のよさを強くアピールすることができれば、ユーザーの拡大に資するのではないだろうか。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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