LGBT理解増進法
-
人見
- ところで、やはり今年このテーマを扱うのであれば、先ほどお話のあったいわゆるLGBT理解増進法といわゆる同性婚訴訟、そして、それらによる世論の盛り上がりに触れないわけにはいかないと思いますが、いかがでしょうか。
-
川浪
- そうですね。いわゆるLGBT理解増進法のニュースはよく見かけるのですが、具体的な内容が分からないまま、なんだか大変なことが起きるという意見も耳にしています。
-
長谷川
- いわゆるLGBT理解増進法ですが、様々な意見や修正案が出された上で6月13日に衆議院で、16日に参議院で可決されました。各党から法案が出されている段階から、世間でも話題になっていましたよね。ただ、一部では法案の内容が誤解されているのかなと思うところもありました。
-
鐙
- そうですね。そもそも、いわゆるLGBT理解増進法とは、その名前のとおり「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策の推進」について、基本理念を定めるとともに、国などがやることを明らかにするための法律です。そして、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性を受け入れる精神」を養い、その「多様性に寛容な社会の実現に資すること」を目的として掲げているのですよね。
-
長谷川
- 基本理念として、「全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、性的指向及びジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならないものであるとの認識の下に、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを旨として行われなければならない」とも謳っていますよね。
-
加藤
- それだけ聞けば、ごく当たり前のことを言っているような気もしますが、この法律ができたことで、何か変わるのでしょうか。
-
長谷川
- 依頼者からも「何か対応が必要でしょうか」と聞かれることがあるのですが、先の「不当な差別はあってはならない」とするものは、あくまで基本理念を掲げたものであり、事業主や個人に、何らかの義務や制約を課すものではないですよね。また、事業主らに一定の努力義務を課す規定も設けられていますが、これもあくまで努力義務に留まり、かつ、具体的な施策や義務は定められていません。今後、政府は基本理念にのっとり、基本計画や指針を策定することとされていますので、事業主等における具体的な義務内容は、今後策定される基本計画や指針の内容を注視する必要があります。
-
井上
- ただ、現在、多くの企業で、例えば、戸籍上同性のカップルについても、結婚祝金を支給したり、戸籍上同性のカップル間で養育している子も看護休暇や育児休暇の対象としたり、LGBTQ+の理解に関する研修をするなど、すでに具体的な対策を取っているところも多いように感じています。後にも触れますが、その意味では、民間企業のほうが、具体的施策において先を行っていると言えるところもありそうですね。
-
鐙
- そうですね。与党案について、自由民主党、公明党、日本維新の会、国民民主党の4党が修正することで合意し、この修正案の段階で、「この法律に定める措置の実施等に当たっては、性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする。」とする条文が加わりました。
-
井上
- LGBTQ+に限らず、多様性を尊重しながら、すべての国民が安心して生活できるようにしていきたいということですよね。本来、多様性が尊重される社会というのは、あらゆる人にとって、自分が自分らしく生きていきやすい社会だと思います。