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LGBTQ+座談会ー近時の動向と法律事務所としてのあり方ー


【はじめに】


人見

6月はPRIDE月間※1とされ、世界各地でLGBTQ+に関わる活動が行われています。そこで、本日は、当事務所におけるLGBTQ+の取り組みを牽引してきた事務所代表の杉本弁護士と、取り組みに携わっている井上弁護士、長谷川弁護士、鐙弁護士、そしてスタッフの川浪さんと加藤さんとともに、LGBTQ+に係る当事務所の取り組みや法律事務所の役割などについて紹介していきたいと思います。

座談会メンバー

上段左から

  • 川浪美恵(スタッフ/事務局)
  • 人見愛弁護士
  • 鐙由暢弁護士
  • 長谷川紘弁護士
  • 井上皓子弁護士
  • 杉本文秀弁護士(マネージング・パートナー(当時))
  • 加藤恵理(スタッフ/事務局)

CHAPTER
01

LGBTQ+についての最近の話題

人見

LGBTQ+については、最近、特に議論が盛んなように思いますが、どのような背景があるのでしょうか。

記憶に新しいものとして、元総理大臣秘書官が「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」などと発言をしたことを理由に解任されたことが話題となりましたよね。

加藤

最近は、いわゆるLGBT理解増進法※2のニュースもよく聞くのですが、よく分からないことが多いなというのが正直なところです。

川浪

当事務所でもプロボノ活動として支援している、いわゆる同性婚訴訟の判決のニュースもよく目にしますね。

長谷川

皆さんがおっしゃるとおり、最近は話題になるようなニュースがあり、それを受けて、SNS上などでもいろいろな方がコメントしていますよね。

井上

そうですね。おかげで、言葉としてのLGBTQ+や、LGBTQ+が抱えている問題点、例えば、結婚など、戸籍上同性のカップルが家族になれるような国全体の法制度がないことや、戸籍上同性のカップルの間では遺産の相続、遺族年金の受給資格、病院でのパートナーの病状説明への立ち会いが認められないこともあるといったところは広く知られるようになったかもしれません。他方で、一方的な思い込みによると思われるヘイトスピーチなども散見されるのは残念ですね。

PRIDE月間のパレードのような、LGBTQ+についての認識を広めようという対面イベントもここ数年はコロナ禍ということで、物理的に開催が難しかったところでしたが、今年は対面でのイベントもいろいろと盛り上がっているようですよね。

人見

杉本さんは先日アメリカ出張に行かれたとのことですが、ちょうどPRIDE月間の雰囲気を味わわれたのではないですか。

杉本

そうですね。ちょうどPRIDE月間だったので、街中いろいろなところにレインボーフラッグがはためいていて、とても華やかな雰囲気でしたよ。


CHAPTER
02

LGBT理解増進法・同性婚訴訟

SECTION.01

LGBT理解増進法

人見

ところで、やはり今年このテーマを扱うのであれば、先ほどお話のあったいわゆるLGBT理解増進法といわゆる同性婚訴訟、そして、それらによる世論の盛り上がりに触れないわけにはいかないと思いますが、いかがでしょうか。

川浪

そうですね。いわゆるLGBT理解増進法のニュースはよく見かけるのですが、具体的な内容が分からないまま、なんだか大変なことが起きるという意見も耳にしています。

長谷川

いわゆるLGBT理解増進法ですが、様々な意見や修正案が出された上で6月13日に衆議院で、16日に参議院で可決されました。各党から法案が出されている段階から、世間でも話題になっていましたよね。ただ、一部では法案の内容が誤解されているのかなと思うところもありました。

そうですね。そもそも、いわゆるLGBT理解増進法とは、その名前のとおり「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策の推進」について、基本理念を定めるとともに、国などがやることを明らかにするための法律です。そして、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性を受け入れる精神」を養い、その「多様性に寛容な社会の実現に資すること」を目的として掲げているのですよね。

長谷川

基本理念として、「全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、性的指向及びジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならないものであるとの認識の下に、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを旨として行われなければならない」とも謳っていますよね。

加藤

それだけ聞けば、ごく当たり前のことを言っているような気もしますが、この法律ができたことで、何か変わるのでしょうか。

長谷川

依頼者からも「何か対応が必要でしょうか」と聞かれることがあるのですが、先の「不当な差別はあってはならない」とするものは、あくまで基本理念を掲げたものであり、事業主や個人に、何らかの義務や制約を課すものではないですよね。また、事業主らに一定の努力義務を課す規定も設けられていますが、これもあくまで努力義務に留まり、かつ、具体的な施策や義務は定められていません。今後、政府は基本理念にのっとり、基本計画や指針を策定することとされていますので、事業主等における具体的な義務内容は、今後策定される基本計画や指針の内容を注視する必要があります。

井上

ただ、現在、多くの企業で、例えば、戸籍上同性のカップルについても、結婚祝金を支給したり、戸籍上同性のカップル間で養育している子も看護休暇や育児休暇の対象としたり、LGBTQ+の理解に関する研修をするなど、すでに具体的な対策を取っているところも多いように感じています。後にも触れますが、その意味では、民間企業のほうが、具体的施策において先を行っていると言えるところもありそうですね。

そうですね。与党案について、自由民主党、公明党、日本維新の会、国民民主党の4党が修正することで合意し、この修正案の段階で、「この法律に定める措置の実施等に当たっては、性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする。」とする条文が加わりました。

井上

LGBTQ+に限らず、多様性を尊重しながら、すべての国民が安心して生活できるようにしていきたいということですよね。本来、多様性が尊重される社会というのは、あらゆる人にとって、自分が自分らしく生きていきやすい社会だと思います。
SECTION.02

同性婚訴訟

人見

戸籍上同性のカップルに対して婚姻制度が利用できないことの違憲性を争う「結婚の自由をすべての人に」訴訟(いわゆる「同性婚訴訟」)でも、5地裁での判決が出ましたね。井上さんは、この訴訟の弁護団にも参加されていますが、どのような感想を持っておられますか。

井上

はい。私は、いわゆる同性婚訴訟の東京弁護団に加入しており、事務所からもプロボノ活動として認定していただいています。この訴訟では、戸籍上同性のカップルが法律上の婚姻ができないことが違憲違法だとして、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡の5地裁で6つの訴訟を提起してきたのですが、これまでに、札幌、東京一次、名古屋、大阪、福岡の各地裁の判決が出ました。

長谷川

違憲判決が2件と、違憲状態とする判断が2件出ましたね。

井上

そうなんです。これまでに、2021年3月の札幌地裁、2022年11月の東京地裁、2023年5月の名古屋地裁、6月の福岡地裁で違憲の判断が出されました。

加藤

札幌の違憲判決が最初に出てきたときは、ニュースでもかなり大きく取り上げられていたのを見ました。

違憲判決が出たという一報を聞いたときも驚きましたが、違憲判決が立て続けに出ているということにも驚いています。法律家としては、違憲という判断は相当に重く感じますよね。判決評釈などの議論も活発になっているのを目にします。

井上

そうですね。そして、唯一の合憲判断をした大阪地裁判決を含め、すべての判決が、現状ではLGBTQ+に対する社会的な認識や人々の意識も変わってきていることを認定したうえで、戸籍上同性のカップルが婚姻による利益を一切受けられない現状は人格的利益にも関わる非常に大きな問題であると考えていることを明確にしました。これほど多くの裁判所が、正面から憲法問題であるということを認めたことの意義は大きいと思いますし、確実に、差別解消に向けた大きな一歩になっていると感じます。
CHAPTER
03

具体的な取り組み

SECTION.01

これまでの当事務所の取り組み

事務所内の取り組み

人見

先ほど井上さんもおっしゃっていたように、いわゆるLGBT理解増進法にかかわらず、企業での具体的な取り組みは進んでいるのですよね。当事務所の取組状況はいかがですか。

杉本

まず、NO&T Diversity&Inclusion Policyがありますね。マネジメントとして、当事務所は、様々なバックグラウンドを有する弁護士・スタッフが一丸となって最高の質を有するリーガルサービスを提供するためには、事務所の所属メンバーが、性別、年齢、国籍、人種、民族、性的指向・性自認、障がいの有無、信条、宗教、価値観、ライフスタイル等にかかわらず、尊重され、受け容れられる風土の醸成に取り組むことや、所属メンバーの一人ひとりが、そのような風土の下、その能力を最大限に発揮し、プロフェッショナルとして、また社会の一員として、自分らしく成長し活躍できる組織になることが必要だと考えています。

川浪

このほかにも、規程の整備が進んでいます。例えば、「弁護士慶弔見舞金規程」、「職員慶弔見舞金規程」、「職員就業規則」の「結婚」には「同性間の結婚に準ずるパートナーシップ」が含まれ、また、「配偶者」/「妻」には同性婚のパートナーが含まれています。

加藤

規程の改定のほかに、LGBTQ+に関する相談窓口も設置されました。また、LGBTQ+に関する事務所内の研修の実施、事務所内でのLGBTQ+アライの有志での登録や、アライの方によるNO&T LGBTQ+アライステッカーの表示等を通じて、よりインクルーシブな環境になるよう進めてきました。

人見

LGBTQ+アライステッカーの表示というのは、あまり聞き慣れない方もいるかもしれませんが、どのような取り組みでしょうか。

川浪

LGBTQ+アライとは、「仲間」や「味方」などを意味する英単語「ally」に由来し、LGBTQ+の人たちに寄り添いたいと考え、支援する人のことを指します。当事務所では、このようなアライであるという方が有志でアライである旨を登録することができるサイトを設け、登録した方にはLGBTQ+アライであることを示すステッカーをお配りしております。ステッカーを貼るか否かは各自のアライの方のご判断となりますが、例えば自らのデスク等においてステッカーを貼ることで、自分がアライであるということを示すことが可能となります。また、実際のステッカーに限らず、事務所内部のイントラネットにおける各自のプロフィール欄の写真に同様のアライのマークを付すことも可能となっています。

長谷川

アライの存在が可視化されることで、LGBTQ+をより身近に感じたり、安心感を覚えたりするオフィス環境になることを企図したものとなりますでしょうか。私も、このような制度ができて以降、思いのほか、LGBTQ+アライのマークをオフィス内で見かける機会があり、皆様の関心の高さも伺うことができ、驚くと同時に、不思議とLGBTQ+に限らず、より風通しの良いオフィス環境を提供していただくきっかけの一つになったような印象を受けています。

加藤

そうですね。そのほかに、今月はPRIDE月間ということもあり、受付ロビーエリアにレインボーカラーのバラのアレンジメントをディスプレイしたり、図書室にLGBTQ+に関する書籍を集めた「PRIDEコーナー」を設置したりしました。

プロボノ活動

法律事務所ならではという点としては、これらのほかにも、有志の弁護士によるプロボノ活動も行われていますよね。

人見

例えば、2022年に東京都がパートナーシップ宣誓制度を導入したときには、その素案に関する意見の作成に当事務所の弁護士が参加しました。ほかにも、先ほどあったように、井上弁護士は、いわゆる同性婚訴訟の東京訴訟を代理する弁護団に参加されていますね。

井上

はい。各地の弁護士や専門家の先生方と日夜活発な議論が繰り広げられており、非常に勉強になる弁護団です。当事務所では、ほかにも、LGBTとアライのための法律家ネットワーク(LLAN)を通じて、この訴訟において提出する証拠作成のためのグローバルな法令制度の調査、英文証拠資料の和訳、訴訟の内容を広く英語スピーカーに伝えるための訴状や判決の英訳もお手伝いいただいています。いずれも、プロボノ活動として事務所からも支援いただいています。

人見

プロボノ活動の参加者は、所内のイントラネットを通じて募集していますが、募集開始後すぐに定員に達することが多く、関心の高さを感じています。

長谷川

弁護士だけでなく、パラリーガルの方からも積極的に手を挙げていただいていますよね。

川浪

所内のイントラネットにLGBTQ+に関する各種情報を掲載する専用スレッドを設けているのですが、そのスレッドを通じて、所内の活動だけでなく所員が参加しやすい外部のイベントなども紹介しています。例えばオンラインで参加できるトークイベント、プライドパレードや東京パートナーシップ宣言制度開始のライトアップ情報なんかも共有しました。こうした情報の提供がより身近なところでLGBTQ+について考えるきっかけになっていけばよいと思っています。
SECTION.02

法曹界・ビジネス界での取り組み

人見

法曹界・ビジネス界への問題対応の広がりも見受けられますよね。

井上

LGBTQ+について、日本で議論が大きな盛り上がりを見せるようになった一つのきっかけは、2015年に渋谷区や世田谷区でパートナーシップ制度が導入されたあたりでしょうか。この年には、経済産業省でトランスジェンダー職員への対応を巡って訴訟が提起されたこともあり、注目が集まりました。2016年には自民党がLGBTに対する提言を出したり、PRIDE指標が公開されたりするということもあり、機運が高まってきたと思います。企業の取り組みもその前後から徐々に増えていたように思いますが、2017年に日本経済団体連合会『ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて』という提言を出したことも一つの大きな契機でしたよね。

長谷川

厚生労働省も、2020年5月に、「多様な人材が活躍できる職場環境に関する企業の事例集~性的マイノリティに関する取組事例~」を公表しており※3、企業における実際の取組事例を確認することができます。多くの企業で、すでにLGBTQ+に対応した人事制度の構築が進んでいると伺っておりますし、LGBT-friendlyであることや同性婚に賛成の立場を表明している企業もあります※4

人見

在日米国商工会議所(ACCJ)が公表している婚姻の平等に関する意見書(正式名称:Support the Recruitment and Retention of Talent by Instituting Marriage Equality in Japan)の支持を表明している企業も多いですね。当事務所も2021年にこの意見書を支持する表明を行いました。

当事務所は、LGBTQ+などの性的マイノリティに関するダイバーシティ・マネジメントの促進と定着を支援する団体であるwork with Pride(wwP)がLGBTQ+に関する企業の取り組みを評価する「PRIDE指標」※5において、最高ランクである「ゴールド」を2022年に受賞しました※6が、同団体により公表された「PRIDE指標」の受賞企業・団体一覧を拝見しますと、本当に多種多様な分野から様々な企業が積極的に取り組んでいることが分かります。

長谷川

外資系企業・ベンチャー企業だけでなく、いわゆる伝統的な日本の大企業でも次々と取り組みを表明していますね。中には、LGBTQ+向けの商品を提供する企業もあり、例えば、不動産の住宅ローンといった場面においても、戸籍上同性のカップルを対象としたペアローンといった商品も、近年当たり前のように見受けられるようになってきましたよね。

杉本

法曹界やビジネス界を横断する取り組みとしては、当事務所はLLAN※7の賛同団体の一員として参加しています。私も、当初から会議などには積極的に顔を出すようにしています。実は、LLANの結成時は当事務所の会議室フロアでパーティーを開いたんですよ。

人見

LLANは、「実務法律家としての経験と知識を活かして、法制度の調査研究、法律上の論点に係る提言などを通じて、LGBTその他のセクシュアル・マイノリティに関する理解そして対話を促進し、性的指向や性自認を理由とする差別を解消するための法的支援等を行い、もって個人の尊厳と多様性が尊重され、すべての人々が安心してその能力をフルに発揮して活躍することのできる平等かつインクルーシブな社会の実現に貢献することを目的」として、2016年2月に発足した団体ですね。

長谷川

LLANには当事務所を含む法律事務所のほか、著名な企業の方々も賛同団体としてご参加いただいており、法曹界及びビジネス界を横断する広がりを見せていますよね。

人見

なぜ法曹界を横断する取り組みが必要なのでしょうか。

杉本

LGBTその他のセクシャル・マイノリティ当事者が社会で直面する困難に取り組むべきであるという機運が日本でも広まってきていますが、セクシャル・マイノリティ当事者に対する社会の理解不足などにより、当事者の多くはそのアイデンティティを秘して生きることを強いられているという側面も依然見受けられるように思われます。LLANの目的にもあるように、また、当事務所が目指してきたことがそうであるように、個人の尊厳と多様性が尊重され、各個人がその能力を最大限に発揮できるインクルーシブな社会を実現するためには、法的支援は不可欠です。例えば、そうした社会を実現するため、実務法律家としての経験と知識を活かして、法制度の調査研究や法律上の論点に係る提言を行うことは、法律家だからこそできることでもあり、我々が社会に貢献できる取り組みのあり方の一つと考えています。
SECTION.03

事務所構成員の立場として

人見

このような事務所の取り組みについて、皆様はどのように受け止めていますでしょうか。また、このような事務所の取り組みに関わるきっかけはどのようなものになりますでしょうか。

弁護士の使命である基本的人権の擁護と社会正義の実現の観点から、重要なものとして受け止めています。このような取り組みに関わるきっかけは、所内のイントラネットで、いわゆる同性婚訴訟の英訳活動の参加者を募集する投稿を目にしたことです。LGBTQ+の方々を含む性の多様性・平等性の問題は、生き方や考え方を各自が自律的に決定できる自己決定権、生き方や考え方に基づいて差別されることのない個人の尊重等に関係する重要な問題であり、プロボノ活動への参加を通じて、より理解を深める良い機会になりました。

長谷川

私は2019年にボストン近郊に留学後、昨年まで当事務所のニューヨークオフィスで勤務していました。ボストン及びニューヨークが、米国において比較的リベラルな土地柄であったということもありますが、より身近な問題として捉えるようになり、プロボノの一環として、先にもありました、いわゆる同性婚訴訟の英訳等に微力ながら協力させていただきました。昨今、LGBTQ+をめぐる法制度のあり方についてさまざまな議論がなされておりますが、やや誤解や偏見に基づく意見も見受けられるかなという事項もあり、LGBTQ+に係る相互理解を深める取り組みとして、上述の当事務所の対内的・対外的な取り組みは肯定的に捉えています。

井上

私は、自身の出産・育児を経て、多様なライフスタイルを尊重するという事務所の雰囲気に救われたこと、また、元々人事労務が主な取扱分野の一つであったこともあり、Diversity & Inclusionに関心を持つようになりました。

川浪

スタッフとしても、いろいろな事情を抱えていてもいなくても、みんなが自然に生きやすい環境作りが重要だと感じています。

加藤

事務所メンバーそれぞれが尊重されていると感じられることが大事ですよね。

杉本

マネジメントとしても、今後も取り組みは推進していきたいと思います。皆さんからこうしたらというアイデアがあれば教えてください。
CHAPTER
04

最後に

人見

いろいろ議論は絶えないところですが、お時間にも限りがありますので今後の展望や皆様の希望ということで今回は締めさせていただこうかと思います。

冒頭にあった元総理大臣秘書官の事例もありますし、今後もLGBTQ+に対する認識のあり方というのはより重要性を増すように思われます。

長谷川

そうですね。例えば今年5月時点の世論調査において、「同性婚」を法的に認めることについて、63%の人が賛成と答え、特に18歳以上30歳未満の男性で賛成が75%、反対が20%、18歳以上30歳未満の女性で賛成が91%、反対が4%と答えたとする報道もあったと聞きました※8。LGBTQ+について理解を深めることの重要性は増してきているように思われます。特に事業主の視点では、いわゆるLGBT理解増進法との関係において、どのような基本計画や指針の策定がなされるか、今後注視する必要があると考えられます。

井上

そうですね。また、政府が策定する基本計画や指針に留まらず、多様性についての認識も、LGBTQ+に関する問題状況も、日々、変化し進化していくものなのだと思いますので、柔軟に対応していきたいと思いますし、LGBTQ+だけではなく、一人一人が尊重される事務所・社会という目標に向かってみんなで取り組んでいきたいですね。

川浪・加藤

本日は、LGBTQ+に係る法制度の動向について理解を深めることができました。コロナ禍も過ぎたので、これから発表されるガイドラインに沿って幅広く取り組みを行っていきたいと思います。

杉本

皆さんのおっしゃるとおりですね。先の見えない世の中ではあるけれども、多様性・個性の尊重というNO&Tの価値観を大切にしながら、皆さん一人一人が生き生きと過ごせる事務所を目指していきましょう。

人見

皆様、本日はお忙しいなかありがとうございました。お時間の都合上あまり深掘りできなかった事項やお話しできなかった事項もあるかと存じますので、引き続き機会がございましたらこうした議論ができる場があればと考えております。


脚注

※1
PRIDE月間とは、LGBTQ+(セクシュアル・マイノリティ)の権利を啓発する月間のことです。1969年6月28日、ニューヨークのゲイバーである「ストーンウォール・イン」において、不当な踏み込み捜査を行った警察に対して客が暴動を起こした「ストーンウォール事件」が発生し、これがセクシュアル・マイノリティの抵抗の象徴となったことから、毎年6月がPRIDE月間とされています。

※2
性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解の増進に関する法律(https://www8.cao.go.jp/rikaizoshin/pdf/jobun.pdf)。

※3
https://www.mhlw.go.jp/content/000630004.pdf

※4
http://bformarriageequality.net/

※5
「PRIDE指標」とは、LGBTQ+の人々が誇りを持って働ける職場の実現を目指して定められ、企業のLGBTQ+などの性的マイノリティに関する取り組みを「Policy(行動宣言)」「Representation(当事者コミュニティ)」「Inspiration(啓発活動)」「Development(人事制度、プログラム)」「Engagement/Empowerment(社会貢献・渉外活動)」の5分野で評価する指標です。同様の指標は海外でも広まっており、例えば、Human Rights Campaign(米国)が公表する「コーポレート平等指標」(Corporate Equality Index)や、Stonewall(英国)が公表する「職場における平等指標」(Stonewall Workplace Equality Index)、COMMUNITY BUSINESS(香港)が公表する「LGBT+INCLUSION指標」が存在します。

※6
https://workwithpride.jp/wp/wp-content/uploads/2022/11/prideindex2022report2.pdf

※7
http://llanjapan.org/aboutus

※8
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/463899?display=1

本座談会は、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。