主旨
この裁判例紹介では、近時公表された裁判例のうち、ビジネス上参考となりそうなものについて、事案の概要と判決・決定の要旨をご紹介するとともに、各関連分野を専門的に取り扱っている弁護士が簡潔な解説を行います。各記事は、短時間で目を通せる程度の文字数に収めています。定期的に新しい裁判例を追加してまいりますので、継続的にご確認いただくと、主要な最新裁判例を限られた時間内でフォローいただくことができます。
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裁判例紹介一覧
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NEW 会社法(新株発行)
公開会社による支配株主の変更を伴う第三者割当増資について、総株主の議決権の10分の1以上の議決権を有する株主が反対する旨を会社に対し通知したにもかかわらず、会社法206条の2第4項ただし書に該当するとして同項に定める株主総会決議(特定引受人承認決議)を経ないままされた新株発行が、無効と判断された事例
東京地判 -
不祥事調査
会社が設置した取締役責任調査委員会の委員として調査を実施した弁護士が、その後に調査対象者であった元取締役に対する損害賠償請求事件において同社を代理し、訴訟行為を行うことが弁護士法25条2号及び4号の趣旨に反するとして、当該弁護士の訴訟行為を排除した事例(関西電力取締役責任調査委員排除決定事件)
大阪高決 -
株主総会
事前に賛成の議決権行使を行っていた株主が株主総会当日に議場で投じた白票を、議長が賛成票と扱うことで承認された株式交換契約承認決議について、決議取消事由があるとして申し立てられた株式交換の仮の差止めが、理由がないとして却下された事例
最二小決 -
不正競争防止法(品質等誤認表示)
八ッ橋を製造販売する会社が、その創業年又は八ッ橋の製造開始年が元禄2年(1689年)であるとの記載を含む表示を暖簾・看板等の営業表示物件に付する行為について、平成30年改正前の不正競争防止法2条1項14号(現行法では同項20号)の品質等誤認表示に該当しないとされた事例
大阪高裁(令和元年(受)第1968号) -
会社役員責任
監査役は、計算書類等の監査を行うに当たり、会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても、計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば、常にその任務を尽くしたといえるものではないとした事例
最二小判(令和2年(ネ)1568号) -
外国判決(民事訴訟)
民事訴訟法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償を命ずる部分が含まれる外国判決について、当該外国において一部弁済がなされた場合において、当該一部弁済を懲罰的損害賠償部分に係る債権に充当されたものとして執行判決をすることができないと判断された事例
最三小判(令和2年(受)第170号、令和2年(オ)第135号) -
環境法
上告人らの採る立証手法により特定の建材メーカーの製造・販売した石綿含有建材が特定の建設作業従事者の作業する建設現場に相当回数にわたり到達していたとの事実が立証され得ることを一律に否定した原審の判断に経験則又は採証法則に反する違法があるとされた事例
最一小判(平成31年(受)第596号) -
証拠(民事訴訟)
電気通信事業に従事する者及びその職を退いた者は、民訴法197条1項2号の類推適用により、職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて証言を拒むことができるとされた事例
電気通信事業者は、その管理する電気通信設備を用いて送信された通信の送信者の特定に資する氏名、住所等の情報で黙秘の義務が免除されていないものが記載され、又は記録された文書又は準文書について、当該通信の内容にかかわらず、検証の目的として提示する義務を負わないとされた事例
最一小決(令和2年(許)第10号) -
国際裁判管轄合意(民事訴訟)
平成23年法律第36号の施行前に締結された契約における米国カルフォルニア州裁判所を専属的管轄裁判所とする合意について、一定の法律関係に基づく訴えを定めるものとして有効とした事例
東京高判 -
不動産賃貸借
新型コロナウィルス感染症の影響により賃貸物件による飲食店の利益が減少したとしても、賃貸物件を使用収益させる賃貸人の債務が一部消滅し、これに伴い賃借人の賃料支払債務も一部消滅したと解することはできないとされた事例
東京地判(令和2年(ワ)第24027号) -
損害賠償
土地の売主が売買契約上の債務を履行しない場合に、買主がこれを請求する訴訟の追行等を弁護士に委任したとしても、その弁護士報酬について、売主に対して債務不履行に基づく損害賠償請求をすることはできないとされた事例
最三小判(令和1年(受)第861号) -
会社法一般(D&O保険)
取締役が善管注意義務違反を認識して行為を行った場合には、D&O保険における免責条項(法令に違反することを被保険者が認識しながら行った行為に起因する損害賠償請求に起因する損害に対しては保険金が支払われない)が適用されるとした事例
東京高裁 -
不正競争防止法
不正競争防止法(平成27年法律第54号による改正前のもの)2条1項10号にいう技術的制限手段の効果を妨げることにより影像の視聴を可能とする機能を有するプログラムに当たるとされた事例
最一小決(平成30年(あ)第10号) -
買収防衛策
敵対的買収に対する対抗措置として実施された新株予約権の無償割当てが、著しく不公正な方法によるものとはいえないと判断された事例(富士興産事件)
東京高判 -
消滅時効
同一の当事者間に複数の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合に、借主が弁済を充当すべき債務を指定することなく全債務を完済するのに足りない額の弁済をしたときは、特段の事情のない限り、当該弁済は各元本債務の承認として消滅時効を中断する効力を有するとした事例
最判 -
買収防衛策
取締役会決議のみによって導入・発動され、株主意思の確認が予定されていなかった買収防衛策に基づく新株予約権の無償割当てについて、「著しく不公正な方法」(会社法247条2号類推適用)によるものとして、その差止めが認められた事例
東京高決 -
会社法
レセプト債に係る虚偽の情報提供に関して、発行体SPCの取締役の会社法第429条第1項の責任が否定され、主幹事会社の取締役の会社法第429条第1項の責任が肯定された事例
札幌地判 -
著作権法
音楽教室における楽曲の使用(演奏)のうち、教師による演奏行為については演奏権の侵害が成立し、生徒による演奏行為については演奏権の侵害が成立しないとされた事例
知財高判 -
インサイダー取引規制
会社の創業者であり代表取締役である者が他社との業務提携を行うことについての決定をした旨の重要事実を知りながら株式を買い付けたと認定された課徴金納付命令について、業務提携の決定が認定された時点までに当該決定がなされたとは認められないとして当該納付命令が取り消された事例
東京地判 -
ファイナンス
利息制限法1条所定の制限利率を超える利率の利息を定めた社債について、特段の事情がある場合を除き、社債には利息制限法1条の規定は適用されないとした事例
最三判 -
キャピタルマーケット
粉飾決算に基づく虚偽の有価証券届出書を提出し新規上場を行った会社の上場前募集における元引受証券会社である主幹事証券会社について、金融商品取引法上の責任が認められた事例(エフオーアイ事件最高裁判決)
最三判 -
税務
中小企業再生支援協議会事業実施基本要領に基づく再生計画のための債務免除に起因して第二次納税義務が課された事例
東京地判 -
株主総会
招集株主から他の株主へのクオカード贈与が表明された場合であっても、保全の必要性が認められないなどの理由で株主総会開催禁止の仮処分が認められなかった事例
東京高決 -
労働(同一労働同一賃金)
無期雇用の従業員に対して年末年始勤務手当、年始期間における祝日給、扶養手当を支給し、有給の病気休暇、夏期冬期休暇を与える一方で、有期雇用の従業員に対してこれをしないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例
最一判 -
労働(同一労働同一賃金)
無期雇用の従業員に対して賞与を支給し、私傷病による欠勤中の補償を行う一方で、有期雇用の従業員に対してこれをしないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例
最三判 -
労働(同一労働同一賃金)
無期雇用の従業員に対して退職金を支給する一方で、有期雇用の従業員に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例
最三判 -
事業再生・倒産
支払停止前に締結された請負契約に基づく注文者の破産者に対する違約金債権の取得が、相殺禁止の例外である破産法72条2項2号にいう「前に生じた原因」に基づく場合に当たるとされた事例
最三判 -
知財関連訴訟
通常実施権者は、特許権者を被告として、特許権侵害を理由とする特許権者による第三者に対する損害賠償請求権についての債務不存在確認訴訟の確認の利益を有しないとされた事例
最判 -
株主総会
役員を選出する選挙(決議)取消しの訴えについて、当該役員退任後においても、訴えの利益が消滅しないとした事例
最判 -
株主総会
株主総会の招集通知発出後、取締役会決議によらずに株主総会の開催場所及び時間を変更したことは違法でないとした事例
大阪地決 -
使用者責任
被用者が使用者の事業の執行について第三者に加えた損害を賠償した場合における被用者の使用者に対する逆求償が認められた事例
最二判 -
特許法
特許法102条1項による損害額の算定に関する大合議判決
知財高判(平成31年(ネ)第10003号) -
会社法
取締役選任に関する株主間合意の法的拘束力が、合意当事者の相続人・承継人に及ばないとした事例
東京高判 -
租税法
完全支配関係下の組織再編行為に係る繰越欠損金の引き継ぎにつき、事業の継続性が認められないことを理由に否認された事例
東京高判 -
会社法(証券発行)
転換社債型新株予約権付社債の発行につき、有利発行や不公正発行と認められず、発行会社の取締役の損害賠償責任が否定された事例
東京高判 -
個人情報保護法・プライバシー
個人情報(通信教育事業者の顧客情報)の漏えいによる精神的苦痛に対する慰謝料の支払請求が認められた事例
東京高判