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ニュースレター

中国からの撤退方法・経済補償金支払の近年の傾向と対策

NO&T Asia Legal Update アジア最新法律情報

著者等
鹿はせる小澤尚子(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Asia Legal Update ~アジア最新法律情報~ No.116(2022年8月)
関連情報

本ニュースレターの概要をPodcastで配信しています。
The NO&T Podcast – JP
中国からの撤退方法・経済補償金支払の近年の傾向と対策

業務分野
※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 近年、事業競争環境の激化、人件費の高騰、環境規制の強化等の理由により中国から日本又は他国に製造拠点を移す動きが増えていたが、今年に入ってからサプライチェーンの見直し及び新型コロナウイルスに対する政府の厳格なロックダウン対策等の影響により、改めて中国での事業の撤退及び見直しを検討する外資企業が増えている※1

 その一方で、中国からの撤退は現地法の規制及び従業員に払う退職手当(いわゆる経済補償金等)の支出等のために、想定外に費用及び時間がかかることがネックになり得る。本稿では、中国事業の撤退や見直しを検討する日本企業の参考となるよう、1.中国からの撤退の方法の概要を説明した上で、2.の現地法人を解散・清算する方法を選んだ場合の手続と実務上の留意点、及び近時の経済補償金の支払事例を概観する。

1. 中国からの撤退方法の概要

 日本企業をはじめとする外資企業が中国の現地法人を再編して撤退する場合、①現地法人の持分(株式)を第三者に対して譲渡する方法、②現地法人を解散・清算する方法、③現地法人を破産させる方法の3つが代表的な手法となる※2

 このうち最初に検討される方法は①の方法であり、清算手続を要さずに現地法人の法人格をそのまま存続させることができ、従業員の雇用が維持され経済補償金の支払も必要ないことから、売主にとってはリスク及び時間費用等のコストが低い手法である。

 しかし、前提として、現地法人の持分(株式)の譲渡先を探索する必要がある。また、実務上の留意点としては、(i)対象会社となる現地法人の持分(株式)を日本の親会社など(中国からみた)海外エンティティが保有する場合は、クロスボーダーの対価支払について、中国の外貨規制に服し手続が必要になること、(ii)(譲渡先の属性及び所在地により個別の検討が必要であるものの)中国の国有企業に持分(株式)を譲渡する場合には、国有企業による資産買取りの手続が必要となる場合があること※3、また、(iii)実務上よく問題になるのは、持分(株式)譲渡の場合、法的には従業員の雇用関係は変わらず、経済補償金の支払が必要ないものの※4、従業員側は会社の実質的な所有者の変更を退職・再就職と同視して(時には集結して)経済補償金を要求する事例がみられ、実務上の工夫が求められることである(2.(1)を参照されたい。)。

 そして、近年では、現地法人の持分(株式)の譲渡先を要さず、外資企業側で手続を主導できることをメリットとして、②や③の方法による撤退を模索する事例が増えている。

 そのうち、③の破産による撤退は、少なくとも日本企業においては、今後の中国での事業展開やレピュテーションへの影響等を懸念して、未だ採用されることは多くない。しかし、かつて中国では企業破産に関し必要となる裁判所の認可を得ることが難しかったところ、2016年以降は認可が得られやすくなり倒産件数が増加していることから※5、外資企業にとっても破産による撤退が現実的な選択肢となりつつあり、今後現地の債務超過企業の撤退手段としては検討に値する。

 ②の解散・清算は、現在日本企業が現地法人の持分(株式)の譲渡先を確保できない場合に検討する主な撤退手段であり、近時の事例も多いことから、その方法についての手続及び留意点を以下の2.で詳述する。

2. 現地法人を解散・清算して撤退する場合の手続及び実務上の留意点

 中国の現地法人を解散及び清算する場合、基本的に中国の会社法が適用されるが、中国の外商投資法や行政法規で特別規定が定められている場合にはそれらの規定が適用される。

 会社法上の解散事由は、①会社定款に定める営業期間が満了したとき又は会社定款に定めるその他の解散事由が発生したとき、②株主(総)会が解散の決議を行ったとき、③会社の合併又は分割により解散が必要なとき、④法により営業許可証が取り消され、閉鎖を命じられ、又は取り消されたとき、⑤人民法院が会社法182条の規定に基づき解散命令を発した場合の5つである(会社法180条)。会社法182条※6が定める人民法院の解散命令はデッドロックに陥った会社を想定しており、通常の撤退であれば、②の株主(総)会の解散決議による手法が用いられるであろう。

 事業がネガティブリスト上の規制業種に該当しない外商投資企業は、解散・清算に際して、別途商務部門による認可を受ける必要はない。会社法に定める手続に従い、清算委員会の成立(会社法183条)→債権者への通知・新聞での公告(同法185条)→清算案の作成及び株主(総)会又は人民法院への確認(同法186条1項)→清算費用、従業員賃金、社会保険費用及び法定補償金の支払、未納税金の納付、既存債権者への弁済、株主への配当(同法186条2項)(会社の財産が債務弁済に足りない場合は、人民法院に対して破産宣告を申請する。同法187条)→清算完了後の清算報告書の作成、株主(総)会又は人民法院への確認(同法188条)→清算報告書を登記機関へ提出/会社抹消登記の申請(同法188条)を経て解散する。但し、前提として、中国において解散・清算は債務超過のまま行うことができないため、増資等の方法により損失を補填して債務超過を解消した上で解散手続を行うことが必要となる※7

 解散・清算による撤退について、実務上よく問題となる事項は以下のとおりである。

(1) 従業員との間の労働契約の解約に向けた交渉

 実務上は、労働紛争を防止し、円滑かつ迅速に手続を進めるため、労働契約を一方的に解除せず、従業員との間で合意解約をすることが多い。使用者からの申出に基づき協議の上で合意解約をする場合や、使用者側の事由により労働契約の解除をする場合その他労働契約法46条に定める場合には、労働者に対し、経済補償金の支払が必要になる。

 経済補償金は、原則として、当該従業員の「労働契約終了前12ヶ月間の平均賃金」(月平均賃金)×「勤続年数」※8で算定した金額となるが、会社の過度な負担を軽減する見地から、会社所在地の前年度の労働者の月賃金の3倍を上回る労働者については上限が定められており、算定における月平均賃金は会社所在地の前年度の労働者平均賃金の3倍の金額、勤続年数は最高で12ヶ月分がそれぞれ上限となる。したがって、解散・清算を行う場合に限らず、経済補償金を検討する際には、まず会社所在地の賃金水準を確認する必要がある。

 また、経済補償金の金額については、撤退の際に従業員から法定金額に加え、月給数ヶ月分の上乗せを要求されることがしばしばあり(中国では、法定金額を「N」といい、上乗せ分の月給を加えN+3といった言い方をすることが多い。)、合意に至るまでに長期間を要するおそれがある。この点については、近年の傾向をとりまとめた以下の3.を参照されたい。

(2) 当局対応※9

 清算・解散にあたり税務登録の抹消手続を行うことになるが、この手続には通常かなり長い期間がかかる上※10、適切に処理が行われない場合には行政処分を受けるリスクもあるため、慎重な対応が求められる。当局から過去の納税状況を微細にわたり確認を受け追納を求められる可能性があるほか、現地進出時に地元政府から外資優遇措置を受けている場合や廉価での土地の払い下げを受けている場合には、当初合意していた事業規模の不達成を理由に追加の支払を求められる可能性もある。早期の段階で当局と相談・調整を行い、滞りなく手続を進めていくことが肝要である。

(3) 取引先対応

 取引先との間で締結している契約については、理論上は契約の規定に従って期間満了や解除による終了が可能であると解されるが、取引先からの反発を受けて取引解消に際して補償金の支払を求められるケースや、取引先から一方的に取引を停止されるケースがある一方、早期に情報開示を行うと、従業員に漏れ伝わるなど不測のリスクもあるため、慎重な対応が求められる。

3. 撤退における経済補償金支払の傾向と対策

 外資企業にとって中国から撤退する際、従業員への経済補償金の支払の要否及び金額規模はよく問題となる。持分(株式)譲渡のように、法的には従業員の雇用関係は変わらず経済補償金の支払が必要ないケースであっても従業員から支払を求められることがあり、また解散・清算のように法的に支払が求められる場合でも、往々にして法定金額の上乗せを従業員から求められ、応じない場合労働紛争に発展するリスクがあるためである。

 この点、報道等の公開情報に基づき、近年の外資企業による撤退の際の労働紛争及び経済補償金の支払事例を調査したところ、2015年以降では以下の参考となる事例が発見された。

  • ① 約1,000人の従業員が勤務する工場の閉鎖に際し、解雇前日に突然従業員の一斉解雇を発表したところ、従業員が抗議し、担当者に詰め寄る、数十人で工場に押しかける等の騒動に発展した事例。
  • ② 4,000人を超える従業員が勤務する工場を中国企業に持分譲渡することを公表した際に、2週間以上にわたり従業員による補償金を求めるストライキ及び抗議が発生し、負傷者及び逮捕者が発生した事例(その後一定の協力金を支払うことで従業員の納得を得られたとの報道が見られた)。
  • ③ 2,000人を超える従業員が勤務する工場を閉鎖した際、工場長が当日朝出勤してきた従業員に対して工場閉鎖を社内放送で発表し、法定金額に加えて5ヶ月分の月給を上乗せ(N+5)して経済補償金を支払ったと報道された事例。
  • ④ 約650人の従業員が勤務する工場を閉鎖した際、法定金額に加え、従業員の勤続年数に応じて傾斜をつけた上乗せ金額を支払った事例(勤続年数が長いほど、上乗せ分が多くなる仕組みをとった)。
  • ⑤ 約4,500人の従業員が勤務する工場を閉鎖した際、使用者側は当初は法定金額に1ヶ月分の月給を上乗せした経済補償金(N+1)を提示し、その後は法定金額に3ヶ月分の月給を上乗せした経済補償金(N+3)を提案したが、数千人の従業員が工場の閉鎖に反対し、会社側の補償案を受け入れられないとして、連日抗議を受けた事例。
  • ⑥ 約900人の従業員が勤務する工場を閉鎖した際、従業員に対し、法定金額に1ヶ月分を上乗せした経済補償金(N+1)を支払うと共に、春節の慰労金も支払った事例。

 上記以外の過去事例も含め傾向を分析すると、経済補償金については、法定の金額に1-3ヶ月分の月給を足した金額(N+3)程度を支払う事例が多く、従業員が多い工場の撤退事案においては経済補償金の支払をめぐって紛争及び上乗せを求められるリスクが高い傾向にあるといえる。従業員同士が連携を取って団結しやすい上、中国において外資企業の工場は往々にして特定の地域に密集しているため、過去に周辺の外資企業が撤退した際に支払った経済補償金が知られている場合には、労働者側がその金額をベースに交渉することが行われやすいためである。

 悩ましい問題であるが、特に持分(株式)譲渡といった法的な支払義務のないことが明確なケースにおいては、「ごね得」を防ぐためにも毅然とした態度をとり、従業員に経済補償金の支払義務がないことを説明することと共に、事前に地方の警察当局とも打ち合わせの上、万が一紛争が発生した場合の騒動を最小限化する紛争防止策をとることも考えられる。他方で、紛争リスクが高い場合には、法的な義務ではないものの、一定の金額を協力金として、勤続年数や協力の度合に応じて従業員に支払い、円滑な撤退に協力してもらうことも考えられ、リスクに応じて併用する工夫も実務上みられる。また、譲渡先の企業がある場合は、従業員に対して今後の雇用方針に関し説明させるなど、協力を求めることが考えられる。

 なお、従業員に対して撤退を公表するタイミングも問題となりやすい。先に情報が知れ渡る場合には従業員に動揺が走り、離職者が相次ぎ生産に影響を与える可能性や、早期から経済補償金の要求が行われやすくなる一方、唐突に発表した場合には従業員に強い衝撃を与え、突発的な紛争に発展することがあるためである。特に撤退の規模が大きい場合には、本社及び現地法人がそれぞれの専門家と共に、十分な期間をとった綿密な調整をすることが求められる。

脚注一覧

※1
報道によると、中国で欧州連合(EU)商工会議所が4月下旬に実施したアンケート調査(372社回答)では、23%が中国からの撤退や投資先の見直しを検討していると回答し、8割弱が中国の投資先としての魅力が落ちたと答えた。米商工会議所が5月初旬にかけて実施した調査(121社回答)では、対中投資を「減らす」との回答は26%、「延期する」も26%に上り、「増やす」はわずか1%にとどまった。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022052400543&g=int

※2
その他、日本側株主と中国側株主によるJVであれば、日本側株主からの中国側株主に対する持分譲渡の他に、日本側株主が保有している分の持分を減資する方法等も考えられるが、減資に関する現地規制に服する必要があり、個別の検討が必要になる。

※3
かつては持分(株式)の譲渡自体に当局の認可が要求されていたが、現在は原則として当局の認可を受ける必要はない。

※4
後述するように、原則として経済補償金は使用者側からの申出により労働者との雇用関係を終了する場合にのみ求められる。

※5
背景としては、2016年以降最高人民法院の指示で各地の地方裁判所に倒産の専門法廷が設立されたことが大きい。2019年から2021年の3年間において、全国の企業倒産件数は毎年1万件を超えている。

※6
会社法182条は株主による解散請求を定めた条項であり、具体的には、会社の経営管理に著しい困難が生じ、引き続き存続すると株主の利益に重大な損失を被らせるおそれがあり、その他の方法によっても解決できない場合、会社の全株主の議決権の10%以上を保有する株主は、人民法院に会社の解散を請求することができると定めている。「『会社法』適用の若干問題に関する規定(二)」も合わせて参照されたい。

※7
債務超過のまま会社を解散・清算する方法、すなわち日本会社法における特別清算に相当する手続は中国会社法において法定されていない。

※8
勤続年数が6ヶ月以上1年未満の場合は1年として計算する。勤続年数が6ヶ月未満の場合は半月分の賃金を支払う。

※9
税務調査のほか環境調査を求められ、汚染等があった場合は除去した上で撤退することを求められる場合もある。

※10
会社の規模及び所在地にもよるが、2年から3年程度を要する例もある。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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