
中翔平 Shohei Naka
アソシエイト
バンコク
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NO&T Data Protection Legal Update 個人情報保護・データプライバシーニュースレター
著書/論文
タイ:個人情報保護法の個人データの侵害に係る下位規則の制定(1)(2)(2023年1月)
個人情報保護法のデータ保護責任者の選任に係る下位規則の制定(1)(2)(2023年10月)
ニュースレター
個人データの域外移転に係る下位規則の制定(タイ)(2024年2月)
個人情報保護法違反を理由に制裁金が課された初めての事例(タイ)(2024年9月)
個人情報保護・プライバシー 2024年の振り返りと2025年の展望 ~東南アジア・インド編~(2025年2月)
2024年8月13日に個人データの消去・破棄・匿名化の基準に関する下位規則(「本下位規則」)が制定された。本下位規則は、同年11月11日に施行される。
タイの個人情報保護法(「PDPA」)上、次の4つの場合には、データ主体は、データ管理者に対して個人データを消去、破棄又は匿名化(「消去等」)することを請求できる。
本下位規則は、データ主体から、個人データの消去等を請求されたときに、データ管理者が、個人データを消去等するための手続・方法を規定したものである。特に、本下位規則には、後述のとおり、個人データを匿名化する際にとるべき措置の手順が規定されており、データ主体から個人データの匿名化を請求された場合のみならず、自ら、個人データを匿名化して利活用(いわゆるビッグデータとして利活用)することを検討する際にも参照する価値があると考えられる。そのため本稿では、個人データの匿名化に関する基準を中心に本下位規則の概要を紹介する。
データ管理者が、データ主体から、個人データの消去等を請求された場合において、本下位規則上、留意すべき点は以下のとおりである。
本下位規則は、個人データを匿名化するために次のような手順を踏むことを定めている。
まず、個人を直接識別可能なデータを消去することが必要となる。本下位規則において個人を直接識別可能なデータの例として以下のデータが挙げられている。
本下位規則によれば、上記(1)の措置を講じた後のデータに対して、特定の個人を間接的に識別される可能性が十分に低いといえる程度になるまでの追加の措置を検討しなければならないとされている。本下位規則においては追加措置が具体的に定められているわけではなく、追加措置を検討するにあたっての考慮要素が定められているに留まる。具体的には、技術、文脈、環境条件、同種又は類似の事業において一般的とされる基準、個人データの種類、データ主体の種別及び状況、匿名化に必要な媒体、現実的にとり得る措置、個人データが復元されることに伴うリスク、個人データを復元する動機及び能力を考慮すべきと定められている。なお、間接的に個人を識別し得るデータの例として、生年月日、年齢、役職、所属、サービスの提供日、自宅・勤務先の住所、IPアドレスを挙げている。
日本の個人情報保護法においては、匿名加工情報を作成した事業者は、削除した情報や匿名加工の方法に関する情報の漏えい防止のための安全管理措置等一定の義務が課されるが、PDPAにおいては、匿名化されたデータや削除されたデータの取扱いについての定めはない。しかし、PDPA上、個人データとは、直接・間接を問わず、特定の個人を識別可能なデータと定義されており、本下位規則は、個人データの匿名化にあたって、個人データの直接識別性と間接識別性を排除するための措置を求めている。そうだとすると、双方の措置によって匿名化されたデータは、直接及び間接にも個人識別性を失うため個人データに該当せず、PDPAの適用を受けないと考えられる。本下位規則により、個人データの匿名化のための指針が示されたことで、一定の客観的な基準をもって匿名化を検討できるようになった点は事業者にとって朗報である一方で、実際に、どの程度の処理を行えば個人データが匿名化されたといえるかどうかの判断については、引き続き慎重な検討を要すると考えられる。
本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。
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