澤山啓伍 Keigo Sawayama
パートナー/オフィス代表
ハノイ
NO&T Asia Legal Update アジア最新法律情報
ベトナムの都市部の家庭は子供の教育に熱心で、幼い頃から子供に英語教育を授けているし、高校や大学では海外留学をさせたり、人によっては自身も子供の教育のために海外移住するという話を聞くことも珍しくない。
子供を海外留学に出すまでの余裕はない家庭には、国内で海外水準の教育が受けられるインターナショナルスクールや、国内で海外の大学の学位が取得できる大学もあり、人気が高まっている。大学レベルでは、以下のような例がある。
外国大学の進出形態 | 主体 | |
---|---|---|
外国側 | ベトナム側 | |
法人を設立せずにベトナムの学校との契約により、ベトナムの学校で外国の学校の教育プログラムを実施する方法(教育連携又は高等教育連携※1と呼ばれる。) | グリニッジ大学(英) | FPT大学 |
スウィンバーン工科大学(豪) | ||
コーネル大学(米) | VinUniversity | |
ベトナムに直接投資して、自らの学校又はキャンパスを設立し、運営する方法 | RMIT(豪) | N/A |
これらの外国教育機関によるベトナムへの投資方法については、教育分野における外国投資・協力に関する政令第86/2018/ND-CP号が規律していたが、今般、ベトナム政府は、同政令を改正する政令第124/2024/ND-CP号(以下、「政令124号」という。)を公布し、政令124号は11月20日に施行された。
政令124号による改正は、教育における国際協力の向上に関する共産党の方針を法制度化し、国内の教育機関及び世界の先進的な教育機関との連携・協力を奨励し、世界中の名門高等教育機関がベトナムでキャンパスを開設するよう誘致するとしている2024年8月に出された政治局の政策方針を具体化するものであって、2018年の高等教育法改正、2019年教育法、2020年投資法等で定められている教育分野における外国投資・協力に関する規定の反映に加えて、(a)教育分野における外国からの協力及び投資を誘致する政策の具体化及び国内外の教育機関及び投資家への環境整備、(b)関連する行政手続きの簡素化、(c)教育に関する情報の透明化を目指したものであるとされている。本稿では、これによる変更点のうち重要なものを紹介する。
まず、(a)教育分野における外国からの協力及び投資を誘致する政策の具体化及び環境整備として、政令124号は、以下の2点において、教育分野での外国投資家の関与の方法を広げている。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
① 教育連携の外国側当事者の範囲 | 外国の小学校、中学校、高校等の教育機関のみ | 左記に加えて、教育プログラムを提供している外国法人 |
② 外資が設立できる教育機関 |
|
左記に加えて、外国の高等教育機関の支店 ※ |
改正前政令では、外国の教育機関がベトナムに高等教育機関(大学など)を1箇所設立し、さらにその支店として別の場所にキャンパスを設置することは可能であったが、外国の大学が直接ベトナムに外国法人の支店としてキャンパスを設置することは認めていなかった。政令124号による改正で新たに認められた「外国の高等教育機関の支店」は、これを認めるものである。但し、この方法で支店を設置できるのは、母国で適法に設立されて運営されており、過去3年のいずれかの世界の信頼性のある高等教育機関のランキングにおいて500位以内に入っているものに限られる。
政令124号は、上記のとおり、教育における外国投資・協力の範囲を拡大しようとしているが、それと共に、外国投資・協力を得て行う教育の品質の向上も目指し、協力を行う外国側の主体及びその教育プログラムの内容に関する条件を以下のように追加している。
政令124号が目指す(b)関連する行政手続きの簡素化の具体的内容としては、以下のような点が挙げられる。
最後に、政令124号による(c)教育に関する情報の透明化の内容として、同政令は、教育連携を行っているベトナム及び外国教育機関に対し、連携に関する情報の開示義務を以下のように定めている。
また、政令124号は、外資教育機関の校名に関する条件をより厳しく変更した。これにより施設の組織及び運営内容についての明確性が確保され、誤解が生じないようしなければならないとして、以下のようなルールを追加している。
※1
ベトナム語ではLiên kết giáo dục及びLiên kết đào tạoであり、直訳すると「教育連携」及び「研修連携」となるが、後者は、高等教育における学位や証明書を授与するプログラムを実施するものを意味するため、「高等教育連携」という用語を用いている。
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