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ベトナムでの学校への投資の機会拡大~ 教育分野における外国投資・協力に関する規制の改正

NO&T Asia Legal Update アジア最新法律情報

著者等
澤山啓伍ホアイ・トゥオン(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Asia Legal Update ~アジア最新法律情報~ No.217(2024年12月)
業務分野
キーワード
※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1. はじめに

 ベトナムの都市部の家庭は子供の教育に熱心で、幼い頃から子供に英語教育を授けているし、高校や大学では海外留学をさせたり、人によっては自身も子供の教育のために海外移住するという話を聞くことも珍しくない。

 子供を海外留学に出すまでの余裕はない家庭には、国内で海外水準の教育が受けられるインターナショナルスクールや、国内で海外の大学の学位が取得できる大学もあり、人気が高まっている。大学レベルでは、以下のような例がある。

外国大学の進出形態 主体
外国側 ベトナム側
法人を設立せずにベトナムの学校との契約により、ベトナムの学校で外国の学校の教育プログラムを実施する方法(教育連携又は高等教育連携※1と呼ばれる。) グリニッジ大学(英) FPT大学
スウィンバーン工科大学(豪)
コーネル大学(米) VinUniversity
ベトナムに直接投資して、自らの学校又はキャンパスを設立し、運営する方法 RMIT(豪) N/A

 これらの外国教育機関によるベトナムへの投資方法については、教育分野における外国投資・協力に関する政令第86/2018/ND-CP号が規律していたが、今般、ベトナム政府は、同政令を改正する政令第124/2024/ND-CP号(以下、「政令124号」という。)を公布し、政令124号は11月20日に施行された。

 政令124号による改正は、教育における国際協力の向上に関する共産党の方針を法制度化し、国内の教育機関及び世界の先進的な教育機関との連携・協力を奨励し、世界中の名門高等教育機関がベトナムでキャンパスを開設するよう誘致するとしている2024年8月に出された政治局の政策方針を具体化するものであって、2018年の高等教育法改正、2019年教育法、2020年投資法等で定められている教育分野における外国投資・協力に関する規定の反映に加えて、(a)教育分野における外国からの協力及び投資を誘致する政策の具体化及び国内外の教育機関及び投資家への環境整備、(b)関連する行政手続きの簡素化、(c)教育に関する情報の透明化を目指したものであるとされている。本稿では、これによる変更点のうち重要なものを紹介する。

2. 外国投資・協力の範囲の拡大

 まず、(a)教育分野における外国からの協力及び投資を誘致する政策の具体化及び環境整備として、政令124号は、以下の2点において、教育分野での外国投資家の関与の方法を広げている。

改正前 改正後
① 教育連携の外国側当事者の範囲 外国の小学校、中学校、高校等の教育機関のみ 左記に加えて、教育プログラムを提供している外国法人
② 外資が設立できる教育機関
  • 短期訓練・養成機関
  • 幼児教育機関
  • 初等・中等教育機関(小学校、中学校、高等学校、一貫校)
  • 高等教育機関
  • ベトナムに設立した外資高等教育機関の支店
左記に加えて、外国の高等教育機関の支店 ※

改正前政令では、外国の教育機関がベトナムに高等教育機関(大学など)を1箇所設立し、さらにその支店として別の場所にキャンパスを設置することは可能であったが、外国の大学が直接ベトナムに外国法人の支店としてキャンパスを設置することは認めていなかった。政令124号による改正で新たに認められた「外国の高等教育機関の支店」は、これを認めるものである。但し、この方法で支店を設置できるのは、母国で適法に設立されて運営されており、過去3年のいずれかの世界の信頼性のある高等教育機関のランキングにおいて500位以内に入っているものに限られる。

3. 外国投資・協力の教育の品質の向上

 政令124号は、上記のとおり、教育における外国投資・協力の範囲を拡大しようとしているが、それと共に、外国投資・協力を得て行う教育の品質の向上も目指し、協力を行う外国側の主体及びその教育プログラムの内容に関する条件を以下のように追加している。

  1. 教育連携(ベトナムの幼児教育機関及び初等・中等教育機関と外国の教育機関等との教育プログラムでの連携)を実施するための外国側の当事者については、ベトナム教育機関と教育連携を行うまでに、母国で少なくとも5年間適法に運営されていることが必要である。
  2. 高等教育連携(前記脚注1参照)の外国側の主体については、信頼性及び品質が高い外国高等教育機関でなければならず、当該外国高等教育機関及びベトナムで実施する研修プログラムは、研修を提供し、その卒業証書を発行することが母国の管轄機関により承認されているか、有効な教育の質についての認定証を有することが必要である。
  3. ベトナムに設置された外資教育機関については、当該施設で外国教育プログラムを実施する場合には、そのプログラムは適切な外国の教育管轄機関又は組織により認証され又は品質が認定されたものであり、かつ少なくとも5年間母国で直接教えられていたものであることが必要である。また、そのプログラムがベトナム人の学生を対象とする場合、その教育目標がベトナムの教育目標と一致しなければならない。

4. 外国投資・協力に関する手続きの簡素化及び緩和

 政令124号が目指す(b)関連する行政手続きの簡素化の具体的内容としては、以下のような点が挙げられる。

  1. 改正前政令で定めている21の申請フォームのうち、14のフォームの簡素化
  2. 関連する申請書類及び各種報告書の提出方法として、従来の直接窓口での提出及び郵送に加えて、オンラインでの提出を可能とした。
  3. 政令124号は、初等・中等教育機関を設立する投資プロジェクトにつき、資金調達ロードマップに関する規定を追加した。すなわち、改正前政令では、このようなプロジェクトについては、規模が最大となる時期の生徒数を基準に生徒1人あたり少なくとも5,000万ドン、全体で少なくとも500億ドンの総投資額が必要とされている。政令124号による改正でも、この総投資額の最低必要額には変更がないものの、この金額を事業開始の審査の時点までに全額用意する必要は無く、事業開始の審査の時点で、投資家が総投資額の50%超を調達し、残りは運営許可決定日から5年以内に調達するスケジュールで計画を実施することができるようになった。これにより、新設以降順次学生数が増えていくのに合わせて、効率的な資金調達が可能になるものと考えられる。
    なお、大学を設立しようとする場合には、従前から事業開始の審査の時点での調達必要額が5,000億ドン超、総投資額は1兆ドン以上と定められており、この点については変更されていない。

5. 情報の透明化

 最後に、政令124号による(c)教育に関する情報の透明化の内容として、同政令は、教育連携を行っているベトナム及び外国教育機関に対し、連携に関する情報の開示義務を以下のように定めている。

  • 教育機関は、学生及び学生の両親に対して、教育プログラム、それに関する認定結果、外国人教師の人数、学習成果の評価方法等を十分、正確、明確に開示しなければならない。
  • これらの情報は、教育機関のホームページでも開示されなければならない。

 また、政令124号は、外資教育機関の校名に関する条件をより厳しく変更した。これにより施設の組織及び運営内容についての明確性が確保され、誤解が生じないようしなければならないとして、以下のようなルールを追加している。

  • 校名について、すでに登録されている他の教育機関の名前、投資プロジェクトを実施する企業名又は非政府組織の名前と同一又は紛らわしいものであってはならない。
  • 教育機関のランク、教育プログラムの内容について誤解がないようにしなければならない。

脚注一覧

※1
ベトナム語ではLiên kết giáo dục及びLiên kết đào tạoであり、直訳すると「教育連携」及び「研修連携」となるが、後者は、高等教育における学位や証明書を授与するプログラムを実施するものを意味するため、「高等教育連携」という用語を用いている。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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