
石原和史 Kazushi Ishihara
アソシエイト
東京
NO&T Asia Legal Update アジア最新法律情報
2025年7月3日、シンガポール財務省(Ministry of Finance、以下「MOF」という。)は、居住用不動産に係る売主印紙税(Seller’s Stamp Duty、以下「SSD」という。)の改正を発表した。また、法人を通じた居住用不動産の間接的な売却に適用される売主追加譲渡税(Additional Conveyance Duties for Sellers、以下「ACDS」という。)についても、SSDの変更に合わせて改正された。以下、これらの改正内容について概説する。
改正の主な内容は、以下のとおりである。
SSDは、購入後一定期間内に居住用不動産を売却した場合にその売主に課される印紙税である。改正内容は以下表のとおりであり、改正前は、保有期間が3年を超える場合SSDは課されず、最大税率は12%であったが、改正後は、保有期間が3年を超え4年以内である場合にもSSDが課されるようになり、それぞれの期間における税率も引き上げられた。改正後のSSDは、2025年7月4日以降に購入された居住用不動産に適用される。
保有期間 | 改正前(~2025年7月3日) | 改正後(2025年7月4日~) |
---|---|---|
1年以内 | 12% | 16% |
1年超~2年以内 | 8% | 12% |
2年超~3年以内 | 4% | 8% |
3年超~4年以内 | 0% | 4% |
4年超 | 0% | 0%(変更なし) |
例えば、購入から2年半後に居住用不動産を売却することを想定する場合、①購入が2025年7月3日以前であれば、売却時のSSDは4%であるが、②購入が2025年7月4日以降であれば、売却時のSSDは8%ということになる。このように、早期売却によるSSDの負担が増すことになり、投資方針にも影響が生じうる。
MOFの発表によれば、今回の改正は、未完成物件の転売を含む短期保有取引の増加に対応し、不動産の短期売却を抑制することを趣旨としている※1。
ACDSは、居住用不動産を主たる資産とする法人(Property-Holding Entities、以下「PHEs」という。)の持分を譲渡する際に売主に課せられる印紙税※2であり、居住用不動産を直接売却する場合とPHEsの持分を譲渡することで間接的に居住用不動産を売却する場合との差異を調整するものである。今回の改正により、SSDと同様に保有期間が延長され、税率も引き上げられた。
持分取得日 | 取得日からの保有期間 | ACDSの税率 |
---|---|---|
2017年3月11日~2025年7月3日 | 3年以内 | 12% |
2025年7月4日以降 | 4年以内 | 16% |
上記SSDの改正(及びそれに関連するACDSの改正)は、居住用不動産市場の短期売買が増加している現状を踏まえ、市場の過熱を抑制するためのものである。居住用不動産やPHEsの保有期間や売却の際のリターンに影響が及ぶものであるため、これらの取得に際し考慮が必要と思われる。
本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。
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