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ニュースレター

公取委「官公庁における情報システム調達に関する実態調査報告書」の公表 ― 報告書の概要とシステムベンダーにとっての留意点

NO&T Competition Law Update 独占禁止法・競争法ニュースレター

著者等
小川聖史
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Competition Law Update ~ 独占禁止法・競争法ニュースレター~ No.5(2022年2月)
関連情報

本ニュースレターの英語版は以下をご覧ください。
NO&T Japan Legal Update No.33 (July,2022)
Key takeaways for system vendors from the Japan Fair Trade Commission’s survey report on procurement of information systems by government offices

業務分野
キーワード
※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 公正取引委員会(公取委)は、2022年2月8日、「官公庁における情報システム調達に関する実態調査報告書」を公表しました※1

 本報告書は、公取委が実施した実態調査をベースとしつつ、同じく公取委が開催した「情報システム調達に関する意見交換会」における議論も参考として作成されたものです。この実態調査は、「行政のデジタル化の推進」という政府全体の取組みの中において、特にベンダーロックイン※2の回避に焦点を当てつつ、国の機関及び地方公共団体における情報システム調達の実態を把握する、という目的で実施されたものです。

 このように、本報告書は、官公庁における情報システムを対象とする実態調査がそのベースとなっていますが、民間における情報システムに係る取引においても参考となる独禁法上の考え方が幾つか示されています。そこで、本稿では、本報告書の要点をまとめるとともに、官公庁・民間を問わず、情報システム調達に係る取引における独禁法コンプライアンスの観点からの留意点を検討します※3

本報告書が検討している主な行為類型と独禁法上の考え方・留意点

 本報告書において独禁法上の考え方が整理・検討されている五つの行為類型と、ベンダーとしての留意点の概要を次ページの表1にまとめました。なお、冒頭記載のとおり、公取委の実態調査は「ベンダーロックイン」の回避に焦点が当てられていますが、ベンダーロックインの状況それ自体が直ちに独禁法上問題とされるわけではなく、以下のような具体的行為により競争への影響が生じる場合に独禁法上問題となるおそれがある、とされています。

表1 五つの行為類型に対する独禁法上の考え方及びベンダーとしての留意点
行為の概要 独禁法上の考え方 ベンダーとしての留意点
仕様書の作成に際し、自社のみが対応できる機能を盛り込む行為 ベンダーが不正確な情報提供などをして自社のみが対応できる仕様書による入札を実現し、他のベンダーの入札参加を困難にさせる場合などには、私的独占等として独禁法上問題となるおそれがある。
  • 自社独自の製品であるか汎用品であるかを明示する。
  • 仕様書の作成や入札方式の決定などにつき、虚偽の説明などの不当な働きかけをしない。
  • 仕様書の要求を満たすためには他社製品で代替不可の場合は、事前に合理的根拠を示す。
合理的な理由なく、仕様の開示やデータ引継ぎを拒否する行為
  • 既存ベンダーが、正当な知的財産権の行使として認められる範囲内で左欄の行為を行うこと自体は、直ちに独禁法上の問題となるわけではない。
  • しかし、合理的な理由なく左欄の行為を行い、他のベンダーの入札への参加や受注を妨げるような場合には、取引妨害等として独禁法上問題となるおそれがある。
  • 仕様の開示や接続等に係るコスト負担の金額については、その内訳や理由について十分説明する。
  • 仕様の開示や接続等を拒否する場合には、その理由を十分に発注者側に説明して対応を協議する。
既存ベンダーが、別々の物品・役務を一括発注することを要求する行為
  • 複数の物品・役務の組合せを提案すること自体は通常の営業行為であり、直ちに独禁法上問題となるものではない。
  • 他のシステムへの不利益の示唆や虚偽説明等により、別々の物品・役務を一括発注させる場合、排他条件付取引、抱き合わせ販売等として独禁法上問題となるおそれがある。
  • 一括発注の方が発注者にとって有益である場合には,その理由(例えば、技術的な必要性など)や費用内訳について発注者に事前に十分に説明する必要がある。
安値応札 原価を著しく下回る入札価格で繰り返し※4受注することにより、他のベンダーの事業活動を困難にさせるおそれが生じる場合は、不当廉売として独禁法上問題となるおそれがある。
  • 安値応札に関しては公取委の警告の先例※5が複数存在している。
  • 公取委先例に照らすと、ごく極端な安値での応札については要注意。
ベンダー間(発注支援を行う事業者を含むベンダー側)の受注調整等の行為
  • ベンダーが共同して受注予定者を決定していた場合、カルテルとして独禁法違反となる。
  • 発注支援業務を行う事業者がベンダー間の受注調整を容易にする行為を行った場合や、あるベンダーのみが対応できる仕様を盛り込み他のベンダーの入札参加を困難にさせた場合、当該事業者の行為も独禁法上問題となるおそれがある。
  • ベンダー間による受注調整・カルテルが独禁法違反となることはいうまでもないが、発注支援業務を行う事業者(コンサル事業者等)の行為(例えば、コンサル事業者とベンダー間での案件の回し合いなど)も、一定の場合には独禁法違反となりうることは要注意。

 公取委の実態調査では、官公庁に対して、表1の五つの行為類型に該当する行為を受けたことがあるか(あるいはそのような行為が見られたか)についても質問されています。その調査結果としては、「ある(Yes)」という回答割合はいずれも相当低くなっており(0.5%~3.9%)、これらの行為が広く行われている、という実態までは確認されておりません。

 さはさりながら、本報告書において示された独禁法上の考え方・理論や、近時の公取委の執行傾向等を踏まえて、(ベンダーとしての主な留意点としては上記表1のとおりですが)以下、幾つか補足としてコメントいたします。

1. 仕様書の作成に際し、自社のみが対応できる機能を盛り込む行為

 仕様書の作成の際、特にスクラッチ開発等の場合には、発注者側がベンダーに意見照会をかける場合があります。ベンダーの営業担当者としても、自社の独自仕様を仕様書に盛り込み受注しようとするインセンティブを有している場合があります。もっとも、ベンダーにおいて何らの不正な手段もなく、結果として特定の事業者のみが対応できる仕様・機能が含まれた仕様書による入札がなされた場合、それ自体が直ちに独禁法に違反するものではないと考えられます。

 この点、公取委報告書は、著名なパラマウントベッド事件※6を参照しつつ、以下の①から③の要素がいずれも認められる場合には、競争相手を排除する行為(排除行為)が認められ、排除型私的独占※7として独禁法上問題となるおそれがあるとしています。

  • ①不正確な情報等を提供して自社のみが対応できる仕様書による入札を実現すること
  • ②自社の仕様を盛り込むことにより、競争事業者のコストを引き上げ、入札への参加を困難にすること
  • ③ベンダーが発注者の方針に反する入札をさせていること

 システム調達の場合には、上記①の要素が認められる場合には③の要素も満たすことが多いと考えられます。この行為類型は、特に上記の①から③の要素をいずれも満たす場合には、表1の五つの行為類型のうち、(以下2.と並んで)独禁法上のリスクの高い行為であると考えられますので、特に留意が必要と考えられます。

2. ベンダー間(コンサル事業者等を含むベンダー側)の受注調整等

 ベンダーが共同して受注予定者を決定する受注調整は、典型的な独禁法違反(カルテル)であることはいうまでもありません。もっとも、本報告書も指摘するとおり、受注調整の行為者・独禁法違反の名宛人は、ベンダーに限られません。例えば、発注支援業務を行うコンサル事業者がベンダー間の受注調整を容易にする行為を行った場合や、あるベンダーのみが対応できる仕様を盛り込み他のベンダーの入札を困難にさせた場合には、カルテルや私的独占として、当該コンサル事業者の行為も独禁法上問題となるおそれがあります。

 近年、公取委が法的措置を講じた事件において、発注支援業務等を行う事業者が関与していた私的独占※8やカルテル※9・10のケースが目に付きます。特に、近年の公取委の執行を見ますと、(同一の取引段階にあるベンダー事業者のみならず)取引段階が異なる事業者が独禁法違反行為に関与している場合に、当該事業者も排除措置命令の名宛人に含めて処理するなど、違反行為者の範囲を広めにとることも珍しくなくなってきている印象があります。

 以上からすると、ベンダーに限らず、発注支援業務を行うコンサル事業者等におかれても、本報告書の考え方や留意点をご理解いただく必要性が高いものと考えられます。

おわりに

 本報告書は、公取委のアドボカシー(唱導)活動の一環として公表された実態調査報告書であり、具体的な事件調査を前提にしたものではありません。また、本報告書において独禁法上の考え方が整理・検討された行為類型や、独禁法上の考え方・理論それ自体は、特に目新しいものではなく、比較的オーソドックスな内容になっていると思います。

 しかしながら、冒頭申し上げたとおり、本報告書に示された独禁法上の考え方は、官公庁におけるシステム調達に限らず、民間におけるシステム関係の取引においても広く参考としうる内容を含んでいます。また、独禁法上の考え方が示された行為類型や、独禁法上の考え方・理論に関していえば、公取委としても執行経験・参考となる先例があるものが多くなっております。

 そのため、ベンダー事業者や発注業務支援に関わる事業者の皆様におかれましては、本報告書の考え方や検討された行為とその留意点をご理解いただき、今一度、独禁法コンプライアンスにご留意いただくことが重要ではないかと思われます。

※2
「ベンダーロックイン」とは、ソフトウェアの機能改修やバージョンアップ、ハードウェアのメンテナンスなど、情報システムを使い続けるために必要な作業を、それを導入した事業者以外が実施することができないために、特定のシステムベンダーを利用し続けなければならない状態をいう、とされています。

※3
なお、本報告書は、独禁法上の考え方や留意点に加えて、競争政策上望ましい状況・対応や調達官公庁における体制、デジタル庁等の関係省庁への提言等についても検討されておりますが、本稿では割愛します。

※4
本報告書では、安値応札に係る独禁法上の考え方の箇所において「繰り返し」との表現が用いられています。もっとも、課徴金対象となる不当廉売に関しては「継続して」なされることが要件とされているのに対して(独禁法2条9項3号)、課徴金対象ではない一般指定6項の不当廉売に関してはこのような要件はありませんので、少なくとも理論上は、繰り返しの安値応札ではなくても、独禁法上問題となる可能性はあると考えられます。

※5
株式会社エヌ・ティ・ティ・データに対する件(公取委警告平成14年4月12日)、松下電器産業株式会社に対する件(公取委警告平成16年12月14日)並びにヤフー株式会社及びシンワアートオークション株式会社に対する件(公取委警告平成17年12月9日)。

※6
パラマウントベッド株式会社に対する件(公取委勧告審決平成 10 年3月 31日、平成 10 年(勧)第3号)。

※7
本報告書は、この行為類型に関しては主に私的独占を念頭に置いて検討しておりますが、同様の行為が、不公正な取引方法の一つである取引妨害に該当するケースもあると思われます。例えば、公取委が2021年11月2日に情報システム開発会社であるスマートバリューに対して立入検査を行った件では、取引妨害に該当する可能性も報じられています(公正取引情報2792号(2021年11月8日号)2頁)。この事件は、スマートバリュー及び業務提携先が、自治体に対し、システムの仕様書にオープンソースソフトウェアの利用を認めない旨を盛り込むように働きかけ、競争事業者の参入を妨害した疑いがあるとされたものであり、現在も公取委の審査が継続中となっています。

※8
福井県経済農業協同組合連合会に対する件(公取委命令平成27年1月16日、平成27年(措)第2号)では、同連合会が受注予定者を指定するとともに、受注予定者が受注できるよう、入札参加者に入札価格を指示し当該価格で入札させることにより、これらの事業者の事業活動を支配していたとして、このような行為は私的独占に該当し独禁法に違反するとして、同連合会に対して排除措置命令が行われています。

※9
全日本空輸株式会社が発注する制服の販売業者に対する件(公取委命令平成30年7月12日、平成30年(措)第13号)では、制服販売業者が受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにする旨を合意していたとともに、全日本空輸から仕様書作成等の業務委託を受けていた事業者も受注予定者が受注できるように関与する旨合意していたとして、制服販売業者のみならず当該業務受託者もカルテルの行為者として排除措置命令が行われています。

※10
地方公共団体が発注する活性炭の販売業者に対する件(公取委命令令和元年11月22日、令和元年(措)第9号)では、活性炭の供給事業者のみならず、供給事業者による地方公共団体への供給につき媒介者となっており、カルテルに関与していた事業者に対しても、排除措置命令及び課徴金納付命令が行われています。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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