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ニュースレター

2023年2月・3月の株主総会招集通知の動向速報~コロナ対応、電子提供措置対応の最新実務~

NO&T Corporate Legal Update コーポレートニュースレター

著者等
田原一樹片瀬麻紗子(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Corporate Legal Update ~コーポレートニュースレター~ No.24(2023年3月)
関連情報

本ニュースレターに関連するウェビナーは以下をご覧ください。
ADVANCE企業法セミナー「2023年定時株主総会に向けて -電子提供制度を踏まえた最新実務-
(配信期間:2023年3月13日(月)~2024年2月29日(木)16:00)

業務分野
キーワード
※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 新型コロナウイルス感染症について、3月13日からマスク着用が個人の判断に任せられることとなり、5月には感染症法上の位置づけが5類に移行することが決定される中、これから総会を開催予定の企業においては、本年の総会におけるコロナ対応をどうするか改めて検討されているところと存じます。また、本年3月1日以降に開催される上場企業の株主総会から新たに義務づけられることとなった総会資料の電子提供措置に関しましても、対応が求められます。本ニュースレターでは、直近の2023年2月・3月に公表された各社の招集通知の傾向を踏まえた上で、今後の総会における招集通知の作成上の留意点という観点から、コロナ対応及び電子提供措置の最新実務について、解説いたします。

直近の株主総会の傾向を踏まえた今後の総会におけるコロナ対応

1. 招集通知におけるコロナ対応の記載ぶりの傾向

 本年2月1日から3月22日までの間に総会の招集通知を公表した上場企業83社の招集通知におけるコロナ対応の記載ぶりを調査したところ、下表のとおり※1、引き続き、来場の自粛を促す会社が約7割に及び、依然として多数派を占めていますが、来場自粛を呼びかけつつも、「ご自身の体調をお確かめの上、くれぐれもご無理をなされないようお願い申し上げます」といった若干緩和された表現を用いるものや、招集通知で総会当日におけるコロナ対応について大々的に紙面を割くのではなく、ごく簡潔な記載に留めるものが多くありました。また、来場が原則であることを前提とした記載をする会社は1割弱と少数に留まりましたが、来場するかどうかは各株主の判断に委ねる旨の中立的な記載に留める会社が1割弱、コロナ対応について一切記載を行わない会社が1割強見受けられます。

2. 今後の総会におけるコロナ対応

 このように、少なくとも、3月下旬までのところでは、依然として総会への来場の自粛を促す会社が多数派ではあるものの、自粛を求めるトーンや会場での感染拡大防止対策の内容は緩和させる方向で検討する会社が相当数出てきている等、基本的に自粛を求めてきた昨年までの対応から、変化の兆しが生じていることが見て取れます。本年度のコロナ対応としては、引き続き、マスク着用を事前に促し、会場における検温等のコロナ対応を継続することも考えられますが、他方で、マスクの非着用を理由とする入場拒否までは行わずに、会場に予備のマスクを用意しておき、任意の着用を働きかけるといった対応も考えられます。これらのいずれでなければならないということはなく、最終的には各社のご判断に委ねられるところかと存じますが、実際の総会開催時点における世の中の常識・人々の行動様式を踏まえた上で、各社の株主総会の位置づけ・方針等も踏まえて、適切な対応を検討することになるかと存じます。

総会資料の電子提供措置制度導入に伴う対応

 本年3月1日以降、上場企業においては総会資料の電子提供措置が義務づけられております。もっとも、その対応については各社の任意の裁量に委ねられるところも多く、具体的にどのような対応をとるべきか悩ましい場面もあるかと思われます。以下では、2月1日から3月22日までの間に電子提供措置の適用を前提とした招集通知を公表した37社の事例を分析し、招集通知(アクセス通知)の記載内容における実務上の検討ポイントを整理いたします。

1. ウェブサイトの記載方法

 電子提供措置制度の下では、企業は総会資料を掲載するウェブサイトを招集通知に記載する必要があります※2。もっとも、記載するウェブサイトのURLは、各電子提供措置事項を直接ダウンロードできるURLである必要はなく、いわゆるリンクによって各電子提供措置事項がアップロードされているページに辿り着くことができる場合には問題ないと解されています。今回確認した37社の対応状況は、下表のとおりであり、自社のIRのトップページや株主総会に関するページを記載する会社が約7割と多数に及んでおり、その他には、自社のトップページを記載する会社が約2割、独自に開設した電子提供措置期間用の特設ページを記載する会社が2社ありました。他方で、各電子提供措置事項を直接ダウンロードできるURLを記載する事例は見当たりませんでした。

 また、ウェブサイトのURLの記載にとどまらず、そのQRコードも併せて記載する会社が半数以上ありました。従前から、インターネットによる事前の議決権行使を採用し、その投票ページのQRコードを招集通知に載せる会社は多く見受けられたことも踏まえると、電子提供措置に際しても同様の対応を採用する会社が多いのではないかと思われます。

2. 中断リスク軽減措置

 サーバーダウン等により電子提供措置に「中断」が生じた場合には、総会決議の取消のリスクが生じるため、かかる中断のリスクを軽減するための措置として、複数のウェブサイトを利用して電子提供措置を実施することが考えられます。複数のウェブサイトにおいて電子提供措置を行う場合には、いずれのウェブサイトのURLも招集通知に掲載する必要がありますが、今回確認した37社のうち、約9割の会社が複数のウェブサイトを掲載していることが確認されましたので、中断リスク軽減措置として、スタンダードなものとなっていることが窺われます。なお、掲載先の内訳としては、自社のウェブサイトに加えて、東証のウェブサイトを採用する会社が殆どであり、東証以外のウェブサイトを記載する例は1社(自社のトップページに加えて、自社の特設ページに掲載)に留まりました。

3. 招集にあたっての決定事項の記載

 電子提供措置制度の下では、株主の書面交付請求に基づいて交付する総会資料(交付書面)のうち、取締役会において決定した事項については交付書面への記載を省略することが可能であるものの※3、当該決定をした場合には、当該省略事項は、役会での招集にあたっての決定事項として、招集通知に記載する必要があります※4

 その記載方法として、全国株懇連合会が公表した招集通知モデル※5では、会社法施行規則63条の表題(招集の決定事項)に即して、「招集にあたっての決定事項」という項目を設けた上で、上記の交付書面への省略事項や、議決権の取扱いについて記載されています。もっとも、直近の総会の招集通知をみると、同モデルと同様に、「招集にあたっての決定事項」という項目を設けて記載を行っているものは、37社中、2割程度に留まっています。会社法施行規則63条の内容は、交付書面での省略事項以外にも議決権行使関連の事項等、多岐に及んでおります。役会での招集の決定事項は、上述のとおり招集通知での必要的記載事項ですので、同条に定める内容を決定した場合には、招集通知に記載漏れのないように留意する必要があります。

4. 電子提供措置制度導入の経過措置

 電子提供措置制度導入にあたっての任意の経過措置として、特に電子提供措置制度の適用開始初年度である本年については株主からの書面交付請求の有無にかかわらず、従来どおり、全ての株主に対して株主総会資料を送付する措置(いわゆるフルセット・デリバリー)を採用する会社がそれなりの数に及ぶことが予想されています。公表された招集通知の記載のみからは、各社が株主に対して具体的にどのような書面を郵送しているかは必ずしも明らかではありませんが、今回分析した電子提供措置制度を導入している37社のうち、招集通知に、全ての株主に対して、書面交付請求を行った株主に交付する書面と同じものを送付する旨を記載している例が3社ありました。このような記載は法令上求められるものではありませんが、フルセット・デリバリーや任意の書面の郵送を行う会社においては、このような記載を招集通知に付記することも検討に値するものと考えられます。

おわりに

 以上述べてきましたとおり、本年度の総会においては、日々刻々と変化する社会的状況の変化を踏まえた上でのコロナ対応が求められ、また、電子提供措置についても、他社事例や個々の会社の実情を踏まえた対応が求められることになると思われます。本ニュースレターが、本年度の総会準備の検討の一助となれば幸いです。

脚注一覧

※1
EDINETより取得した各社の招集通知に基づき集計

※2
会社法325条の4第2項第3号、会社法施行規則95条の3第1項第1号

※3
会社法298条1項・2項・会社法施行規則63条3号ト

※4
会社法298条1項5号

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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