クレア・チョン Claire Chong
カウンセル
シンガポール
NO&T Dispute Resolution Update 紛争解決ニュースレター
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シンガポールにおいて、外国の裁判所が下した判決の承認と執行に関する法制の改正が行われた。
一般的に、シンガポールにおいて外国判決は、(i) コモンロー上の判決債務に関する請求によるほか、(ii) 法令の定めに基づいて登録を行うことによって執行可能になる。後段の外国判決の登録手続は、2023年3月1日から、「外国判決相互執行法」単一の枠組みにより、規律されることとなる。
新法制の重要な点としては、外国判決相互執行法において対象となる判決の範囲が拡大されたことが挙げられる。さらに、シンガポールが個別の国との間で相互執行の合意を取り付ける交渉を行う基盤ができたともいえる。外国判決相互執行法の体制が確立していく中で、訴訟の当事者はより幅広く、外国裁判所から得られる民事上の救済の実現を期待することができる。
今回の法制変更は、「1921年コモンウェルス諸国判決相互執行法」の廃止とそれに伴う「外国判決相互執行法」の改正の組合せによるものである。コモンウェルス諸国判決相互執行法の廃止により、判決の相互執行の法制は外国判決相互執行法の下での単一の枠組みに統合された。統合の意図は、手続を合理化するとともに、外国裁判所の判決をシンガポールにおいて執行しようとする当事者のために効率性を高めることにある。
外国判決相互執行法は、現状、下記の法域に適用される。多くはコモンウェルス諸国判決相互執行法からそのまま持ち越されたものである。
シンガポールと上記国との相互執行の取決めの詳細(すなわち承認された裁判所と登録可能な判決の種類など)は次の二つの施行令によって定められる。
外国判決相互執行法の下で登録された判決は、執行の目的においてはシンガポールの裁判所が発行した判決と同一の効力を有する。
外国判決相互執行法は、追って、他国との相互執行合意や取決めを含むよう拡大する可能性がある。こうした拡大は、それぞれの国と個別に交渉・合意されることとなる。これに関するあり得る考慮要素は、シンガポールの裁判所システムと対象となる外国のそれとの間に互換性が認められるか、訴訟当事者のニーズ及び各国の国益などである。
改正前は、承認された法域の上級裁判所の最終的な金銭的判決のみが登録によって執行可能であった。外国判決相互執行法においては、その対象として新たに次の四種類の民事判決が加えられている。
この改正は、次の点で重要といえる。
外国判決相互執行法の枠組みは相互主義を基礎にするものであることから、同法においては外国判決が承認されない場合が列挙されている。例えば、次の判決は承認されない。
シンガポールは日本との間で相互執行合意や取決めを締結していないため、日本の裁判所の金銭的判決をシンガポールで執行するためには、当該判決の金額の支払を求める新たな訴訟提起によることとなる。この訴訟の成否はコモンロー上の要件、すなわち判決が確定金額の支払を命じるものであり、同一の当事者間で終局的なものであることなどを充足するかどうかによって左右される。
ただし、外国判決相互執行法の下で承認されている上記法域において同法の対象となる判決を取得した日本の訴訟当事者は、外国判決相互執行法の登録によって執行を求めることができる。
シンガポールは、定期的な法制の見直しや改正を通じて、引き続き国際紛争解決の中心地としての地位を固めている。新しい外国判決相互執行法の枠組みにより、実務的な観点からは、訴訟当事者が、重要な非金銭的判決や保全処分を含む、外国裁判所のより幅広い判決を執行することができることとなる。
本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。
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