
東崎賢治 Kenji Tosaki
パートナー
東京
NO&T IP Law Update 知的財産法ニュースレター
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日本の裁判所における民事訴訟事件の訴訟記録、すなわち、裁判所に提出された訴状、答弁書、準備書面、証拠等や裁判所が作成した判決原本、調書等は、原則として、何人も閲覧を請求することができ、また、「利害関係を疎明した第三者」は謄写等も請求できる(民事訴訟法91条1項及び3項)。このように、訴訟記録については、一般公開が原則とされている。
この原則の例外として、①「当事者の私生活についての重大な秘密」のうち第三者の閲覧により「その当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがある」もの及び②「当事者が保有する営業秘密」について、秘密保護のための閲覧等制限の制度が設けられている(民事訴訟法92条1項)※1。そして、裁判所に提出された準備書面や証拠等の訴訟記録に記載された「営業秘密」を第三者が閲覧した場合、原則として、(不正競争防止法2条6項の「営業秘密」の3要件のうち)非公知性や秘密管理性が失われると解され、また、仮に第三者に閲覧されていないとしても長期間、第三者が自由に閲覧できる状態が継続した場合、非公知性や秘密管理性が充足しなくなる可能性があると考えられていることから、「営業秘密」が記載された準備書面や証拠を裁判所に提出する際には、その「営業秘密」としての法的保護を守るために、閲覧等制限の制度は極めて重要な制度である。特に、知的財産関係訴訟においては、製品の仕様や製造方法、売上げや利益の額等を開示して主張立証する必要がある場合が少なくなく、そのような場合には、準備書面や証拠に「営業秘密」が記載されていることを理由として閲覧等制限の申立てをすることが必須である。
この「営業秘密」の閲覧等制限の制度について、最高裁令和4年(マ)第246号同6年7月8日第一小法廷決定(以下「本決定」という。)が裁判所ウェブサイトに掲載された※2。本決定は、上告審における閲覧等制限の申立てを却下するものであり、その具体的な理由は記載されていないものの、深山卓也裁判官の補足意見(以下「本補足意見」という。)が記載されている。本ニュースレターでは、最高裁令和4年(マ)第246号閲覧等制限の申立て事件(以下「本事件」という。)の概要(下記2)及び本補足意見の概要(下記3)を紹介し、本補足意見の今後の実務への影響についてコメントする(下記4)。
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