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ニュースレター

ゴールデンビザ(インドネシア)

NO&T Asia Legal Update アジア最新法律情報

著者等
前川陽一
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Asia Legal Update ~アジア最新法律情報~ No.211(2024年10月)
業務分野
キーワード
※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1. ゴールデンビザによる投資家誘致合戦

 「ゴールデンビザ」とは、外国人に対して一定額の投資を条件として長期間の在留資格を与える査証制度の通称であり、投資家による直接投資や富裕層による不動産購入の誘致等を目的として多くの国々で実施されているところである。東南アジアにおいては、シンガポールではGlobal Investor Programme(2004年)、マレーシアではPremium Visa Programme(2022年)、タイではLong-Term Resident Visa(2022年)、カンボジアではCambodia My 2nd Home(2022年)と呼ばれる制度が導入されている。投資額等のゴールデンビザの取得要件、ゴールデンビザによる在留期間、その他ゴールデンビザ保有者に付与される優遇措置は国によって異なるが、個人投資家にとって魅力的な制度とすべくそれぞれに工夫を凝らし、外国人富裕層による投資の呼び込みを図っている。

2. インドネシアにおけるゴールデンビザの導入

 インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、2024年7月25日、ゴールデンビザの正式導入を発表する記念式典を行い、サッカーのインドネシア代表監督を務めているシン・テヨン氏(韓国籍)にゴールデンビザを授与した。インドネシアのゴールデンビザは、法務人権省令2023年第22号に基づき、すでに昨年8月から導入され、米国Open AI社のCEOサム・アルトマン氏が最初の受給者となっている。「正式導入」に法的な意味合いはなく、セレモニー的な対外発表の色彩が強い。法務人権省は、この記念式典の時点ですでに300名に上るゴールデンビザの申請があり、総額約2兆ルピア(約200億円)の投資を受けたと発表した。

3. インドネシアのゴールデンビザの概要

 法務人権省令2023年第22号(法務人権省令2024年第11号により一部改正)は、ゴールデンビザの支給対象者、取得要件、在留期間、優遇措置等を定めている。同省令によれば、ゴールデンビザは、暫定滞在ビザ、暫定滞在許可(ITAS)、定住許可(ITAP)、及び再入国許可により構成される。

 ゴールデンビザは、資本投資、家族の再会、元インドネシア国籍保有者及びその子孫の帰還、又はセカンドホームを目的とする者を対象とし、5年又は10年の在留期間が認められる。

 資本投資に関しては、会社設立を目的とする個人投資家、会社設立を目的としない個人投資家、外国企業がインドネシアに子会社を設立する場合における当該子会社の取締役又はコミサリス(但し、1社につき10名まで)、及びインドネシアに子会社を設立する外国親会社の代表者(但し、1社につき1名まで)が対象となり、ゴールデンビザ取得に必要な投資額の要件はそれぞれ以下のとおりである。

対象者 在留期間 投資額要件
会社設立を目的とする個人投資家 5年 設立する会社に対する250万米ドル以上の投資
10年 設立する会社に対する500万米ドル以上の投資
会社設立を目的としない個人投資家 5年 35万米ドル以上のインドネシア国債、インドネシア国内の上場企業株式又は投資信託の購入
10年 70万米ドル以上のインドネシア国債、インドネシア国内の上場企業株式若しくは投資信託の購入、又は100万米ドル以上のマンションの購入
外国企業がインドネシアに子会社を設立する場合における当該子会社の取締役又はコミサリス 5年 設立する子会社に対する2,500万米ドル以上の投資
10年 設立する子会社に対する5,000万米ドル以上の投資
インドネシアに子会社を設立する外国親会社の代表者 5年 設立する子会社に対する2,500万米ドル以上の投資
10年 設立する子会社に対する5,000万米ドル以上の投資

 セカンドホームに関しては、国有銀行に対する13万米ドル以上の預金又は100万米ドル以上のマンションの購入を要件として、5年又は10年の在留期間が認められるものとされている。インドネシアでは、ゴールデンビザの導入に先立つ2022年にセカンドホームビザが新設されており、国有銀行に20億ルピア(約2,000万円)の預金があることがその取得要件とされていた。今般のゴールデンビザの導入に伴い、かつてのセカンドホームビザはゴールデンビザのカテゴリーの一つとして再編されたものと見られる。

 セカンドホームのサブカテゴリーに世界的著名人(global figure)という項目が設けられている。上述した預金やマンション購入の要件は課されず、インドネシア政府が特に推薦した外国人に対して5年又は10年の在留期間を認めるものとなっている。ゴールデンビザの事例として大きく報道されたサム・アルトマン氏やシン・テヨン氏に対しては、この枠組みの下で支給されたものと推察される。

 ゴールデンビザ保有者に対しては、出入国手続時における優先レーンの利用、及び入国管理局その他関係当局における優先的取扱い(但し、取扱いの具体的な内容は法令上明記されていない。)という優遇措置が与えられるが、現時点では免税措置等の税制上の特典は認められていない。

4. おわりに ―ゴールデンビザの光と影―

 東南アジア諸国で近年導入が相次ぐゴールデンビザであるが、資金洗浄等の組織犯罪への悪用や住宅価格の高騰等の市民経済への悪影響の懸念から欧州では廃止する動きも見られている。インドネシア政府には、制度の透明性と健全性を確保しつつ、インドネシアに対する投資の機運を盛り上げていく施策が望まれるところである。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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