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タイにおける医薬品・医療機器の製造・販売に関する外資規制

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NO&T Health Care Law Update 薬事・ヘルスケアニュースレター(法律救急箱)

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 タイには医薬品・医療機器の製造・販売に従事する日系の事業者が既に多く進出しているが、タイにおける事業展開にあたっては、各種産業や製品毎に課される業法上の規制を遵守していることに加えて、外国人に包括的に適用される外資規制を遵守していることも肝要である。そこで、医薬品や医療機器の製造・販売を行うにあたって適用されうる外資規制について、本稿により概観したい。

1. タイにおける外資規制

 タイにおける外資規制は、大要、以下の2つの法令にて規律されている。

  1. 外国人事業法:事業に関する規制
  2. 土地法:土地保有に関する規制

 土地保有に関する規制は、本稿の内容からはやや関連性の薄い内容となるため、本稿では外国人事業法に基づく事業に関する規制を中心に解説を行う。

 外国人事業法に基づく外資規制を検討するにあたり、①外資規制の対象になる者は誰か、②外資規制の対象になる事業は何かを確認する必要がある。

2. 外資規制の対象となる者

 外国人事業法の規制対象となる「外国人」は、以下の者が含まれる。

  1. タイ国籍を有しない自然人(例:日本人、シンガポール人)
  2. タイ国外で設立された法人(例:日本で設立された法人、シンガポールで設立された法人)
  3. タイ国内で設立された法人で全株式数又は株式の価値に占める上記(ⅰ)又は(ⅱ)の者が保有する割合が50%以上の者(例:タイで設立された法人であるが、(ⅰ)又は(ⅱ)が50%以上の株式を有している者)
  4. タイ国内で設立された法人で全株式数又は株式の価値に占める上記(ⅰ)、(ⅱ)又は(ⅲ)の者が保有する割合が50%以上の者(例:(ⅲ)の法人が50%以上の株式を有する、タイで設立された法人)

3. 外資規制の対象となる事業

 外資規制の対象となるか否かは、当該事業が製造業か、サービス業かで整理すると分かりやすい。製造業は、原則として外資規制の対象外であるが、サービス業は、原則として外資規制の対象となる。

4. 医薬品・医療機器の製造・販売と外資規制

医薬品・医療機器の製造:

 製造業は上記の通り、原則として外資規制の対象とならない。但し、一般的な感覚に照らせば、「製造業」又はそれに関連する事業として捉えられるような事業も、タイの外資規制の解釈においては、製造業ではなく、「サービス」であると捉えられて、外資規制の対象となるものと当局に判断されている事業もあるため、注意が必要である。

 例えば、以下の事業は外資規制の対象になるものとして解されている。

 受託製造:特定の顧客の指示にしたがって、製品を加工・製造し、当該顧客に対して完成品を提供する事業。当該事業は、特定の顧客の要望に従って、製品を加工・製造するため、当該顧客に対する「サービス」として扱われる。

医薬品・医療機器の販売:

 タイの外資規制上、販売事業は、サービス業として扱われる。サービス業は上述の通り、原則として外資規制の対象となるため、医薬品・医療機器の販売も原則として外資規制の対象になる。そのため、医薬品・医療機器の販売に従事する者は、通常、何らかの外資規制への対応を行っている。具体的には、以下のいずれかの対応が採られていることが一般的である。

  1. 商務省より許可を取得する:
    外資規制の管轄当局である商務省より、小売業又は卸売業に従事することに関する許可(外国人事業ライセンス(FBL)又は外国人事業許可(FBC))を取得する。なお、FBLは、原則制限が課されている事業を例外的に許容するものであるため、その取得は一般的には容易ではないとされている。FBL取得の確度を高めるためには、許可の範囲を限定して申請をするべきである。例えば、取り扱う製品はどのようなものか、販売する顧客は誰か等を特定の上、申請をする方が許可を取得できる可能性が高まる。
  2. 外資規制の対象とならない法人を介して事業を行う:
    法人の資本構成を調整することにより(例えば、タイ人の事業パートナーを見つけてきて、タイ人の事業パートナーに株式の過半数を保有してもらうことにより)、法人のステータスを「外国人」ではないようにし、外資規制の適用を免れる方法である。
  3. 資本金要件を充たす:
    卸売事業・小売事業は、例外的に、1億バーツを超える資本金を有している場合には、外資規制の適用を受けない場合がある。そのため、資本金要件を充たすことにより、外資規制の適用を免れることもできる。

5. 外資規制違反のトラブル

 上述の受託製造は、一般的な感覚からすれば、「製造業」に該当するものと思われるため、特段手続を行う必要は無いと誤信し、FBLを取得する等の外資規制対応を行わないまま、事業を継続している者は多い。

 2024年は(特に前半は)、このような事業者に対する警察による摘発が散見された。

 現状、当職らが把握する限り、自動車部品を製造している事業者に対する摘発が多いように見受けられる。また、警察による摘発も2024年の前半に比すると、2025年の年始はやや落ち着いており、警察の取り締まり強化の状況も一段落したかのように思われる。

 しかしながら、同様の規制は医薬品や医療機器の受託製造にも当てはまる。特に、医療機器は、顧客の注文にあわせて製造することを通常業務に組み込んでいる場合も多いため、留意が必要である。

 なお、受託製造に該当する事業に従事している場合も、タイ投資委員会(BOI)から当該医療機器の製造に関する投資恩典を取得している場合、当該投資恩典を利用して商務省許可(外国人事業許可・FBC)を取得することができる。FBCの場合、取得に遡及的効力が認められるため(投資恩典を取得したタイミングまで、FBC取得の効果が遡るため)、警察等により外資規制違反の指摘を受けた場合も、FBCを取得することにより瑕疵を遡及的に治癒することができ、責任追及を免れることができる可能性がある。

6. まとめ

 以上の通り、医薬品や医療機器に関する事業に適用のある外資規制を概観したが、特に製造業は、外資規制の適用がないものとして、「外国人」のステータスにて事業に従事している場合が多い。そのため、従事している事業に製造業ではなく、「サービス業」として判断されるものが含まれている場合はトラブルに発展するおそれがある。このことから、既に医薬品・医療機器の製造に従事している者は、「サービス業」として判断されるような事業形態はないか、仮にあると判断される場合も、適切な対応がなされているかを再度確認しておくことは有益と考える。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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