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<CASE/モビリティ Update> 無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)の改正について

NO&T Technology Law Update テクノロジー法ニュースレター

著者等
犬島伸能中村彰男(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Technology Law Update ~テクノロジー法ニュースレター~ No.61(2025年4月)
業務分野
キーワード
※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 本ニュースレターでは、2025年2月25日に公布され、3月24日から施行された「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)」の改正について、概要をお知らせします。※1

 まず、これまでの経緯として、ドローン分野においては、2022年に航空法が大きく改正され、機体認証・型式認証制度と操縦者技能証明制度が創設されるとともに、飛行禁止空域と飛行方法に関する規制の再構成が行われました。具体的には、下記表記載の空域及び方法での飛行(特定飛行)については、飛行のリスクの程度に応じて設けられた3つのカテゴリーに応じて、下記の規制が設けられています。

飛行の空域 飛行の方法
132条の85第1項 132条の86第2項
1号 2号 1号 2号 3号 4号 5号 6号
空港周辺・150m以上 人口集中地区(DID) 夜間 目視外 人・物件30m未満 イベント上空 危険物輸送 物件投下
カテゴリーⅠ 機体認証・操縦ライセンスの取得は不要 (飛行の空域、飛行の方法がこれらに該当しないため、許可・承認は不要)
カテゴリーⅡ 機体認証・操縦ライセンスを取得しない場合 飛行毎に許可・承認が必要
機体認証・操縦ライセンスを取得する場合 総重量25kg未満 飛行毎に許可・承認が必要(但し、審査は簡略化可) 飛行毎の許可・承認は不要 飛行毎に許可・承認が必要(但し、審査は簡略化可)
総重量25kg以上 飛行毎に許可・承認が必要(但し、審査は簡略化可)
カテゴリーⅢ 機体認証(第一種)・操縦ライセンス(一等)の取得が必要 飛行毎に許可・承認が必要

  • カテゴリーⅠ:特定飛行に該当しない飛行
  • カテゴリーⅡ:特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じたうえで行う飛行(=第三者の上空を飛行しない)
  • カテゴリーⅢ:特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じないで行う飛行(=第三者の上空で特定飛行を行う)

(出典)国土交通省の公表資料を参考に筆者らが作成

 この改正により、カテゴリーⅢに含まれる、いわゆるレベル4飛行(有人地帯(第三者上空)での補助者なし目視外飛行)が解禁され、一等無人航空機操縦士の資格を取得した者が、第一種機体認証(あるいは第一種型式認証+第一種機体認証)を得た機体を飛行する場合には、飛行毎に許可・承認を得ることによって、レベル4飛行も可能となりました。

 しかしながら、現時点までに第一種機体認証を得た機体は1機のみで※2(申請中の機体は4機)、レベル4の実証実験が行われた件数も5件と、依然レベル4飛行のハードルは高く、実用化までにはまだ時間がかかる見通しです。

 したがって、現時点においては、飛行許可・承認の申請のうち大半を占めるのはカテゴリーⅡ飛行(上記表のグレーハイライト部分)であるところ、カテゴリーⅡ飛行の許可・承認申請においても、申請手続が比較的厳格であり、審査が終わるまでに時間がかかるという問題がありました。

 そのような中、規制改革推進会議により2024年5月31日に公表された「規制改革推進に関する答申~利用者起点の社会変革~」※3において、様々な分野での活躍が見込まれるドローンの事業化を促進すべく、許可・承認手続の迅速化(1日化)を目指すことが掲げられ、それを受けて行われたのが、この度の「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)」の改正(2025年2月25日公布、3月24日施行)です。

審査要領(カテゴリーⅡ飛行)の改正のポイント

1. 機体及び操縦者に関する申請手続の簡素化

 審査要領(カテゴリーⅡ飛行)においては、審査基準に適合するか否かを審査するために、主に①飛行概要、②機体、③操縦者、④安全対策の4点について申請することが要求されています。今回の改正は、そのうち②機体と③操縦者について申請手続の簡素化を図るものです。

 改正前においては、許可・承認申請にあたり、基準に適合していることを確認するために、下記資料の提出が要求されていました。

機体

  • 無人航空機の運用限界(最高速度、最高到達高度、電波到達距離、飛行可能風速、最大搭載可能重量、最大使用可能時間等)及び無人航空機を飛行させる方法(点検・整備の方法を含む。)が記載された取扱説明書等(飛行の目的が研究開発の場合等、取扱説明書等がない場合には、設計図等)の写し
  • 追加基準への適合性について、無人航空機に装備された安全性向上のための機器又は機能を付加するための追加装備(オプション)を記載した資料※4

操縦者

  • 操縦者の追加基準への適合性について、過去の飛行実績又は訓練実績等を記載した資料(訓練実績については、訓練内容についても要記載)

 今回の改正によって、上記各資料の提出は不要となり、代わりに、申請者が自らにおいて、上記各資料をもとに基本基準・追加基準への適合性を確認し、その確認結果を原則「適・否」で申請すれば足りることになりました。これに伴い、許可・承認申請に用いられる「ドローン情報基盤システム」(DIPS)の改修もなされました。

 従前要求されていた各資料の準備には手間と時間がかかるものもありましたので、その提出が不要となることで、申請者の負担は大幅に軽減され、審査にかかる期間も短縮されることが期待されます。冒頭で述べたように、現時点においては、飛行許可・承認の申請のうち大半を占めるのはカテゴリーⅡ飛行の申請であるため、その審査手続を大幅に簡素化する今回の改正は、実務に大きな影響を与えるものといえるでしょう。

2. 留意点

 今回の改正によって提出が不要となる資料についても、全く不要になるわけではなく、申請者において用意し、具備する必要があることについては注意が必要です。許可・承認申請時においては提出不要でも、許可・承認の条件として、当局は上記各資料の提出又は説明を求めることができるとされているため、後日当局から提出を求められる可能性があり、その際には速やかに提出できる状態にある必要があります。もし、資料が具備されておらず速やかに提出できない場合、あるいは提出できたとしても基準に適合していないことが判明したような場合には、条件違反として認可・承認が取り消される可能性もあります。今回の改正は、手続面で申請者の負担を軽減するものではあるものの、基準に適合していることについての責任を軽減するものではないことについては十分理解しておく必要があります。

おわりに

 上記「規制改革推進に関する答申~利用者起点の社会変革~」によれば、今後ドローンについて、総重量25kg以上のドローンの社会実装を進め審査要領の要件を具体化する※5、外国人等を役員に含む企業であっても登録講習期間及び登録更新講習期間として認定されるよう省令を改正する、といった制度改正が行われる可能性があります。また、内閣府、厚生労働省、総務省、経済産業省等の他省庁においてドローンの利活用の促進に関する検討を行うことが予定されており、多分野にわたって今後の動向に注目する必要があります。

脚注一覧

※1
なお、その後、総重量25kg以上の無人航空機に関する改正(2025年3月19日公布、3月24日施行(一部については10月1日施行))も行われています。

※4
本文に記載のとおり、今回の改正によって原則として提出不要となりましたが、例外として、補助者を配置せずに飛行させる場合には、改正前と同様、かかる資料を提出する必要があります。但し、その場合でも、①ホームページ掲載無人航空機と同一の製造者名、名称、総重量及び飛行形態の場合、又は、②機体に取り付けられたカメラにより進行方向の飛行経路の直下及びその周辺への第三者の立入が無いことを確認できる場合には、原則に戻り、かかる資料の提出は不要とされています。すなわち、資料の提出に代え、申請者が自らにおいて、上記各資料をもとに基本基準・追加基準への適合性を確認し、その確認結果を原則「適・否」で申請すれば足りるものとされています。

※5
本ニュースレターで取り上げた審査要領の改正の後に行われた2025年3月19日付けの改正(注1ご参照)においても、総重量25kg以上の無人航空機につき、①機体が備えるべき機能及び性能としての従前の「堅牢性」や「耐久性」との曖昧な文言が、「実施しようとする飛行において想定される気象条件その他の運用条件を設定し、当該条件下において、安定した離陸、着陸及び飛行ができること。」との文言に修正され(審査要領4-1-2(1))、また②飛行にあたって第三者賠償責任保険への加入が義務づけられました(審査要領4-3-1(19))。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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