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民間事業者による非臨床の消費者向け検査サービスと「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」改正

NO&T Health Care Law Update 薬事・ヘルスケアニュースレター(法律救急箱)

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 2025年3月28日に、厚生労働省・経済産業省から「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」(本ガイドライン)の改正が公表され、昨今広がりを見せている遺伝子検査、血液検査、尿検査等の民間事業者が消費者向けに提供する非臨床の検査サービスに関する法解釈が明確化されている。非臨床の消費者向け検査サービスについては、2024年6月に厚生労働省のヘルスケアスタートアップ等の振興・支援策検討プロジェクトチームにより公表された「ヘルスケアスタートアップの振興・支援に関するホワイトペーパー」でも法規制の明確化を図ることが提言されており、本ガイドライン改正により検査ビジネスの健全な育成・発展が促進されることが期待される。

改正の内容

 本ガイドラインは、2014年3月に定められたものであるところ、本改正の前から、民間事業者の非臨床検査サービスに関して、医師法に基づき医師免許が求められる「医業」への該当性や、臨床検査技師等に関する法律に規定する衛生検査所登録義務との関係について、解釈が示されていた。今回の改正により、「医業」該当性につき、より詳細な留意事項や事例が追加されており、民間事業者における各種検査サービスの適法性を検討する際に参考になる。

 本改正により、医師等の資格者ではない民間事業者が、「医業」に該当せずに提供可能なサービスとして、以下のものが掲げられている。

  1. 検査結果の事実、検査項目の一般的な基準値、検査項目に係る一般的な情報を通知する
  2. 当該利用者の検査結果と、医学的・科学的根拠があり、かつ客観的で民間事業者等により恣意的に変動させることが不可能な値(例:統計的に有意であるといえる程度の一定の母集団における平均値や数値分布であって、査読付き論文に依拠している値。これを図示したものも含む)を、客観的に比較した結果を、医学的・科学的根拠とともに通知する
  3. 当該利用者の検査結果が、医学的・科学的根拠があり、かつ客観的で民間事業者等により恣意的に変動させることが不可能な値に基づき設定された疾患のり患や健康状態の医学的評価に係るリスク分類(例:Aランク・Bランク・Cランク、リスク低・リスク高)のいずれに属するかといった、リスク分類との相対的な位置づけを医学的・科学的根拠とともに通知する

 他方で、提供が認められないサービス内容として以下が掲げられている。

  1. 利用者の個別の検査結果を用いて、当該利用者個人の疾患のり患可能性を通知する(形式的に「これは一般的な情報提供である」等の注意書きをしていたとしても、利用者の個別の検査結果を用いて、当該利用者個人の疾患のり患可能性を通知することは違法となる)
  2. 利用者の個別の検査結果が、疾患のり患や健康状態の医学的評価に係るリスク分類のいずれに属するかを通知する場合で、当該リスク分類の根拠となる基準値について、実質的になんらの医学的・科学的根拠が示されてない場合や、民間事業者等が恣意的に設定している場合
  3. 検査項目が基準値内にあることをもって、利用者が健康な状態であることを断定する
  4. 検査項目が基準値外にあることをもって、利用者個人の疾患のり患可能性を提示する

 また、検査結果に基づき医学的判断がなされているとの誤解が生じないような表示を、検査結果の通知書や通知画面等に、通常一般人が無理なく認識可能な方法により記載することが望ましいとされている。具体的な方法として、「当該サービスは検査結果に基づき疾患のり患可能性の提示や診断等の医学的判断をするものではない」旨を、検査結果の記載箇所に使用している文字のうち最も大きい文字の3分の2以上の大きさで記載した上、当該記載を赤枠で囲む方法が掲げられている。

実務上のポイント

 本改正後のガイドラインでは、医師法上の医業に係る規制との関係で、民間事業者は、検査結果に基づく疾患のり患可能性の提示や診断等の医学的判断を行うことができないため、検査結果の事実や検査項目の一般的な基準値、検査項目に係る一般的な情報を通知することに留めるとともに、利用者から見て事実や一般的な基準値・情報が示されているということが客観的に認識可能な程度に医学的・科学的根拠が示された通知内容としなければならないことが明確化されている。ここでいう一般的な基準値については、「医学的・科学的根拠があり、かつ客観的で民間事業者等により恣意的に変動させることが不可能な値」をいう(上記②③参照)とされており、例として「統計的に有意であるといえる程度の一定の母集団における平均値や数値分布であって、査読付き論文に依拠している値」が挙げられている(上記②参照)。査読付き論文は、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」において、医療用医薬品に関して販売情報提供活動で提供する情報に求められる科学的根拠として例示されている。他方で、「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」においては、疾病リスクを表示するプログラムについて医療機器該当性を否定する「信頼性の高い医学薬学上公知の情報に従った情報提供」に関して、「教科書として使用される医学書」や「医学系学会ガイドライン」が該当例として挙げられていると同時に、「公表論文は、単に公表されていることのみをもって、信頼性の高い公知の情報とはいえない」とされている。プログラム医療機器該当性と医業該当性は判断基準が類似するものと捉えられがちであるが、本ガイドラインでいう「一般的な基準値」は、プログラム医療機器該当性における「信頼性の高い医学薬学上公知の情報に従った情報提供」に比べると、その射程はより広く認められると思われ、それぞれの該当性判断の基準が異なることに留意を要する。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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