前川陽一 Yoichi Maekawa
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NO&T Asia Legal Update アジア最新法律情報
本ニュースレターでは、2回に分けて内容をご紹介しています。後編は以下をご覧ください。
NO&T Asia Legal Update No.132(2022年12月)
「個人情報保護法の制定(後編) -データ保護責任者の選任、越境移転規制、制裁、その他-(インドネシア)」
2022年10月17日、個人情報保護法(2022年法律第27号)は、大統領の署名を受け、制定された。同法案が2020年1月に国会に提出されて以来、実に足掛け3年の審理を経ての成立となった。東南アジア諸国では近年、個人情報保護法制が整備されてきた。本法制定以前、インドネシアでは、各事業分野に応じて個人情報の規制がされるほかには、通信情報大臣令2016年第20号や政令2019年第71号が電子システム上で取り扱われる個人情報について規制を定めていた。本法は、事業分野にかかわらず、また電子システムを介するかどうかにかかわらず、包括的に個人情報の保護について定めたものである。なお、本法以前に制定された個人情報保護に関する各法規は、本法施行後も本法に抵触しない範囲で引き続き効力を有するものとされている。
NO&T Asia Legal Updateでは、本号と次号の2回に分けて、本法の内容を詳しく紹介していきたい。
本法において、個人データとは「特定の個人に関するデータ、又は電子的若しくは非電子的システムを通じ、直接若しくは間接に、単独で若しくは他の情報と組み合わせて特定可能な個人に関するデータ」と定義される。
個人データは、さらに、特別個人データと一般個人データに分類されている。特別個人データとは、その処理にあたり本人に重大な影響を及ぼしうる情報と定義され、例えば、健康に関する情報、生体情報、遺伝子情報、犯罪歴、子どもに関する情報、個人の財産に関する情報が含まれている。一方で、一般個人データには、氏名、性別、国籍、宗教、婚姻状況、その他組み合わせることで個人の特定が可能になる個人データ(携帯電話番号やIPアドレス等)が含まれる。
インドネシア国内において本法所定の行為を行う者が対象とされるのは言うまでもないが、インドネシア国外の者であっても、本法所定の行為を行うことにより、インドネシア国内に法的影響が及ぶ場合、又は国外にいるインドネシア国民である本人に法的影響が及ぶ場合にも適用があると規定されている。「法的影響」の意義は明らかにされていないが、インドネシアに拠点を有しない外国企業であっても、インドネシアの顧客の個人データを取り扱う場合や、海外でインドネシア人を雇用する場合にも本法の適用対象となりうるとも解される。いかなる「法的影響」が本法の対象となるのか、当局によるさらなる説明が待たれる。
本法は、個人データを取り扱う者をデータ管理者とデータ処理者の2つに分類して各種の義務を課している。データ管理者とは「単独又は共同で、個人データの処理の目的を決定し、管理を行う個人、法人、公的機関又は国際機関」と、データ処理者とは「単独又は共同で、データ管理者に代わって、個人データの取扱いを行う個人、法人、公的機関又は国際機関」と定義される。特別個人データの大規模な処理を主たる業務とするデータ管理者は、データ保護責任者を任命しなければならない。
なお、個人的ないし家事的活動で個人データを扱う場合には、本法は適用されない。
本法による規制の対象となる個人データの「取扱い」は、取得、収集、処理、分析、保管、訂正、更新、提示、公表、移転、頒布、開示、消去、破棄を含む広範な概念である。データ管理者が個人データを取り扱う場合、以下の根拠に基づくことが求められる。
この点は、一般個人データと特別個人データとで扱いを異にしていない。したがって、例えば、個人データを取得する際には、その内容にかかわらず、上記(2)ないし(6)に該当する場合を除いて、本人から事前に同意を得る必要がある。この点において同意の取得が要配慮個人情報についてのみ求められている日本法の規制と大きく異なる。
同意の取得にあたって、データ管理者は、取扱いの正当性、目的、態様及び期間、個人データの種類及び保管期間、本人が有する権利を本人に通知しなければならない。同意は、書面等により記録されなければならず、同意の要請には、明確かつ平易なインドネシア語を用いなければならない。子どもや障害者の個人データの取扱いについては、保護者等からの同意を要する。
公共の場所に設置する監視カメラ等の映像データ機器については、特別な規定が置かれている。すなわち、かかる機器は、①防犯、防災、交通規制の目的で、②設置されている場所を表示し、③個人を特定しない方法で利用しなければならない。但し、防犯目的の設置においては②及び③の制約は適用がない。
個人データの主体である本人は、本法に基づき以下の権利を有する。
上記のうち(6)、(8)及び(9)の諸権利に関しては、追って施行規則により詳細が規定されるものとされている。
本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。
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