
中村洸介 Kosuke Nakamura
アソシエイト
シンガポール
NO&T Asia Legal Update アジア最新法律情報
本ニュースレターでは、2回に分けて内容をご紹介しています。前編は以下をご覧ください。
NO&T Asia Legal Update No.128(2022年11月)
「個人情報保護法の制定(前編) -個人データの定義、適用対象、個人データの取扱い、本人の権利-(インドネシア)」
ニュースレター
個人情報保護・プライバシー 2024年の振り返りと2025年の展望 ~東南アジア・インド編~(2025年2月)
2022年10月17日、インドネシアにおいて個人情報保護法(2022年法第27号)が制定された。本法はインドネシアで初めて包括的に個人情報保護規制を定めた法令であり、現地の従業員や顧客の個人情報を取り扱う日系企業等も対応が求められる。本稿では、前川陽一弁護士の前回記事(NO&T Asia Legal Update No.128)に引き続き、本法の主要な内容を紹介する。
データ保護責任者(Data Protection Officer)の制度は、個人情報保護法令の遵守を確保するための施策としてEUのGDPRやシンガポールの個人情報保護法等においても導入されている。本法においても、データ管理者(単独又は共同で、個人データの取扱いの目的を決定し、管理を行う個人、法人、公的機関又は国際機関)及びデータ処理者(単独又は共同で、データ管理者に代わって、個人データの取扱いを行う個人、法人、公的機関又は国際機関)は、以下の場合、データ保護責任者を選任することが義務づけられている。
データ保護責任者は、プロフェッショナリズム、法律知識、個人情報保護に係る実務経験、義務履行能力等に基づいて選任される必要があるが、データ管理者及びデータ処理者の内部から選任することも外部の第三者を選任することも可能とされている。データ保護責任者の任務には、データ管理者及びデータ処理者へのアドバイスや本法の遵守状況のモニタリング等が含まれる。
海外子会社等が現地で取得した個人情報を日本の親会社に移転する場合、個人情報の越境移転規制が問題となる。本法では、以下(1)~(3)のいずれかを満たす場合、データ管理者が個人データをインドネシア国外のデータ管理者又はデータ処理者に移転することが認められている。
もっとも、本法の定める要件は抽象的な内容に留まるため、具体的にどのように対応によって要件が充足されるのかについては、今後制定される政令等を通じて明確化される必要がある。
データ管理者及びデータ処理者は、本法の定める義務に違反したり、越境移転規制に違反した場合、①文書での戒告、②個人データの取扱いの一時的な停止、③個人データの消去・削除、④過料の対象になる。
本法上、以下(1)~(4)の禁止行為を故意に行った者は刑事罰の対象となる。また、いずれの禁止行為についても追加刑罰(犯罪行為によって得た利益、資産等の没収、補償金の支払い)が科される可能性もある。
禁止行為 | 刑事罰 | |
---|---|---|
(1) | 自ら利益を得る又は他人に利益を得させる目的で、第三者の個人データを違法に取得、収集し、本人の損害を生じうる行為 | 5年以下の禁固若しくは50億ルピア以下の罰金又はその併科 |
(2) | 第三者の個人データを違法に開示する行為 | 4年以下の禁固若しくは40億ルピア以下の罰金又はその併科 |
(3) | 第三者の個人データを違法に使用する行為 | 5年以下の禁固若しくは50億ルピア以下の罰金又はその併科 |
(4) | 自ら利益を得る又は他人に利益を得させる目的で、虚偽の個人データを作成し又は個人データを改ざんし、本人の損害を生じうる行為 | 6年以下の禁固若しくは60億ルピア以下の罰金又はその併科 |
(10億ルピア:約874万円)
禁止行為が法人によって行われた場合、当該法人、マネージメント、実質的支配者等に対して刑罰が科される可能性がある。特に法人に対しては、罰金の上限額は上記金額の10倍とされている。さらに、追加刑罰として、①犯罪から得た利益、資産等の没収、②事業の全部又は一部の停止、③一定の行為の恒久的な禁止、④事業場等の全部又は一部の閉鎖、⑤懈怠していた義務の完全な履行、⑥補償金の支払い、⑦許認可の取消し、⑧解散が認められていることにも注意を要する。
データ管理者は、合併、買収、解散等を行う場合、これに伴う個人データの移転について本人に通知しなければならない。通知は合併等の前後に行う必要があるが、通知方法としては、本人への個別の通知のほか、マスメディアを通じた公表も認められている。
本通知義務により合併等のスケジュールに影響が生じるかどうかは現時点では明らかではなく、通知手続の詳細は今後制定される政令に定められる。
本法については公布から2年間の移行期間が設けられている。したがって、データ管理者又はデータ処理者に該当する者は、2024年10月17日までに本法に対応した個人情報保護体制を整備する必要がある。
本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。
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