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【From Singapore Office】SIAC仲裁規則第7版の草案公表

NO&T Dispute Resolution Update 紛争解決ニュースレター

著者等
ヴェトリース・シュー梶原啓(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Dispute Resolution Update ~紛争解決ニュースレター~ No.16(2023年12月)
関連情報

本ニュースレターは、「全文ダウンロード(PDF)」より日英併記にてご覧いただけます。シンガポール・オフィスの紛争解決チームについてPDF内にてご紹介しております。

業務分野
※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

  • 1.  2023年8月、シンガポール国際仲裁センター(以下「SIAC」という。)は SIAC 仲裁規則第7版の意見公募用草案(以下「本草案」という。)を公表した。
  • 2.  本草案の焦点は、仲裁の迅速性と費用対効果の改善である。実務的に重要と思われる次の3点について以下紹介する。
  • 1.  2023年8月、シンガポール国際仲裁センター(以下「SIAC」という。)は SIAC 仲裁規則第7版の意見公募用草案(以下「本草案」という。)を公表した。
  • 2.  本草案の焦点は、仲裁の迅速性と費用対効果の改善である。実務的に重要と思われる次の3点について以下紹介する。
  •   迅速仲裁手続(Streamlined Procedure)の新設と簡易手続(Expedited Procedure)の改正(いずれも低額かつ比較的単純な事案向け)
  •   緊急仲裁手続の迅速化
  •   暫定的に争点を判断するための規則の新設

迅速仲裁手続(Streamlined Procedure)の新設と簡易手続(Expedited Procedure)の改正

  • 3.  新設の迅速仲裁手続、現行の簡易手続、及び改正後の簡易手続の違いは次のとおり。
  • 3.  新設の迅速仲裁手続、現行の簡易手続、及び改正後の簡易手続の違いは次のとおり。
  迅速仲裁手続 簡易手続
(現行)
簡易手続
(改正後)
手続利用のための条件
※いずれか一つ
  • 当事者間の合意
  • 請求額が100万シンガポールドル未満
  • その他事情により当該手続の利用が適当な場合
  • 当事者間の合意
  • 請求額が600万シンガポールドル未満
  • 例外的な緊急事態
  • 当事者間の合意
  • 請求額が1,000万シンガポールドル未満
  • その他事情により当該手続の利用が適当な場合
仲裁人の数
  • 単独仲裁人
  • 原則単独仲裁人(SIAC裁判所長(President)の決定による例外あり)
ヒアリング
  • 原則ヒアリングなし(仲裁廷の裁量で例外あり)
  • 証人尋問や文書提出の要求はなし
  • 仲裁廷の裁量によりヒアリングの要否を決定

※証人尋問又は文書提出の要求が認められるか、ヒアリングは原則バーチャルとするかについて明記なし

  • 原則ヒアリングなし(仲裁廷の裁量で例外あり)
  • ヒアリングを実施する場合、原則バーチャル (合意による例外あり)
  • 原則証人尋問又は文書提出の要求は認められる(仲裁廷の裁量で例外あり)
タイムライン
  • 仲裁廷選任から3か月以内に最終判断
  • 仲裁廷選任から6か月以内に最終判断
費用
  • 仲裁廷及びSIACの料金は、SIACの料金表の50%が上限
  • SIACの料金表に従う

  • 4.  これらの改正は、特に、低額な請求又は(高額であっても)事実上の争いが限定的であるなど比較的単純な事案の当事者にとって、望ましい内容と考えられる。非公開の手続により秘密を保持することができるという仲裁の中核的な便益はそのままに、迅速で費用対効果の高い紛争の解決を図ることができる。
  • 4.  これらの改正は、特に、低額な請求又は(高額であっても)事実上の争いが限定的であるなど比較的単純な事案の当事者にとって、望ましい内容と考えられる。非公開の手続により秘密を保持することができるという仲裁の中核的な便益はそのままに、迅速で費用対効果の高い紛争の解決を図ることができる。

緊急仲裁手続の改正

  • 5.  既存の緊急仲裁手続についても本草案は変更を加えており、利便性と迅速性の向上につながると考えられる。
  • 6.  本草案によれば、仲裁提起前に緊急仲裁の申立てをすることができることとなる。現行制度上、緊急仲裁の申立ては少なくとも仲裁提起と同時に行わなければならないとされているので、これは重要な変更である。また、本草案によれば、緊急仲裁人は任命から(現行制度の定める14日より短い)10日以内に緊急仲裁判断を出さなければならない。
  • 7.  緊急仲裁の救済が必要になるのは、通常、(i)被申立人の行為の差止めを求める場合や、(ii)金銭的手段では十分に補償できない損失(例えば、被申立人の行為が申立人の評判に回復不能な損害をもたらす場合など)を避けるために被申立人に一定の行為を強制させることを求める場合である。今回提案された手続の変更は、これらの場面において緊急仲裁制度の有効性を高めることとなる。
  • 5.  既存の緊急仲裁手続についても本草案は変更を加えており、利便性と迅速性の向上につながると考えられる。
  • 6.  本草案によれば、仲裁提起前に緊急仲裁の申立てをすることができることとなる。現行制度上、緊急仲裁の申立ては少なくとも仲裁提起と同時に行わなければならないとされているので、これは重要な変更である。また、本草案によれば、緊急仲裁人は任命から(現行制度の定める14日より短い)10日以内に緊急仲裁判断を出さなければならない。
  • 7.  緊急仲裁の救済が必要になるのは、通常、(i)被申立人の行為の差止めを求める場合や、(ii)金銭的手段では十分に補償できない損失(例えば、被申立人の行為が申立人の評判に回復不能な損害をもたらす場合など)を避けるために被申立人に一定の行為を強制させることを求める場合である。今回提案された手続の変更は、これらの場面において緊急仲裁制度の有効性を高めることとなる。

暫定的決定に関する規則の新設

  • 8.  仲裁の他の争点に影響を及ぼす特定の重要な争点を早期の段階で解決するために、部分的な判断を求める暫定的決定(Preliminary Determination)に関する規則が新設された。暫定的決定を利用する主な目的は、争点及び仲裁の範囲を早期に削減し仲裁の残余部分の判断を合理化することであり、これにより当事者は時間とコストを節約できる。また、重要な争点に関する暫定的決定は、本案の所在をより明確にし、仲裁が本格的に進行する前の段階で最終的な和解の契機となる可能性もある。
  • 9.  本草案においては、当事者が暫定的決定を利用するための申請の手続、考慮事項、スケジュールが明示されている。これは当事者が暫定的決定の申請を適切に検討するための指針となり得るもので、例えば、最終判断に重大な影響を及ぼす重要な法的問題がある場合や、責任の有無と損害額に関する問題を分離できる場合などの適切な事案において暫定的決定の申請を適時に行うことが考えられる。
  • 8.  仲裁の他の争点に影響を及ぼす特定の重要な争点を早期の段階で解決するために、部分的な判断を求める暫定的決定(Preliminary Determination)に関する規則が新設された。暫定的決定を利用する主な目的は、争点及び仲裁の範囲を早期に削減し仲裁の残余部分の判断を合理化することであり、これにより当事者は時間とコストを節約できる。また、重要な争点に関する暫定的決定は、本案の所在をより明確にし、仲裁が本格的に進行する前の段階で最終的な和解の契機となる可能性もある。
  • 9.  本草案においては、当事者が暫定的決定を利用するための申請の手続、考慮事項、スケジュールが明示されている。これは当事者が暫定的決定の申請を適切に検討するための指針となり得るもので、例えば、最終判断に重大な影響を及ぼす重要な法的問題がある場合や、責任の有無と損害額に関する問題を分離できる場合などの適切な事案において暫定的決定の申請を適時に行うことが考えられる。

おわりに

  • 10. SIAC仲裁規則の最後の改正は2016年である。本草案には、迅速性、費用対効果、及び利用しやすさを向上させる有益な特徴が盛り込まれており、改正が実現すれば国際紛争解決の選択肢としてのSIAC仲裁の魅力はさらに高まる。
  • 11. 本草案に関する意見公募期間は本年11月に終了した。意見公募に基づき変更すべき点がある場合には最小限の修正を加えた形で、本草案は2024年前半に施行される見込みである。
  • 10.  SIAC仲裁規則の最後の改正は2016年である。本草案には、迅速性、費用対効果、及び利用しやすさを向上させる有益な特徴が盛り込まれており、改正が実現すれば国際紛争解決の選択肢としてのSIAC仲裁の魅力はさらに高まる。
  • 11.  本草案に関する意見公募期間は本年11月に終了した。意見公募に基づき変更すべき点がある場合には最小限の修正を加えた形で、本草案は2024年前半に施行される見込みである。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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