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ニュースレター

医療広告を巡る規制動向・執行状況のアップデート ~ウェブサイト等事例解説書の改訂、ステマ規制の処分事例~

NO&T Health Care Law Update 薬事・ヘルスケアニュースレター(法律救急箱)

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 医療広告(医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告)に対する規制については、未承認医薬品等の自由診療における使用に関連して2024年3月22日付で医療広告ガイドライン(医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針)の改正※1が行われるなど、近時様々な動きが見られます。同年3月28日には、厚生労働省医政局総務課より、「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第4版)」が事務連絡として発出されました。「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」では、厚労省が実施しているネットパトロールにおいて蓄積された実際の事例等を基に、医療広告ガイドラインのみではイメージしにくい事例等が図等を用いて具体的に解説されています。今般の改訂では、新たに「SNS・動画における事例」が新章として追加されるなど、SNSや動画における情報発信が活発になされている状況を踏まえたアップデートがなされています。

 本ニュースレターでは、医療法による広告規制(医療広告規制)を概観した上で、事例解説書(第4版)における改訂の概要を紹介します。また、2023年10月1日より、広告であるにもかかわらず広告であることを隠すいわゆるステルスマーケティングに対する不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」といいます。)に基づく規制(ステマ規制)が施行されたところ、2024年6月6日に医療法人社団に対してステマ規制に基づく初の措置命令が行われたため、医療広告に関連する近時のトピックとして、併せてご紹介します。

医療広告規制の概要

 医療広告とは、①患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)、②医業・歯科医業を提供する者の氏名・名称又は病院・診療所の名称が特定可能であること(特定性)の要件を満たすものをいい、医療広告規制の対象となります。医療広告規制の名宛人は、「何人も」とされており(医療法第6条の5第1項)、医師や医療機関だけではなく、マスコミ、広告代理店、アフィリエイター、患者、一般人等も規制対象となります。

 医療広告規制の内容は、①全ての広告に適用される一般的規制(虚偽広告、比較優良広告、誇大広告、公序良俗に反する広告、患者の主観に基づく治療等の内容又は効果に関する体験談、治療等の内容又は効果について患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等(「ビフォーアフター広告」の禁止))(医療法第6条の5第1項、第2項、同法施行規則第1条の9)と、②医療法及び厚生労働省の告示(「医業、歯科医業若しくは助産師の業務又は病院、診療所若しくは助産所に関して広告することができる事項(平成19年厚生労働省告示第108号)」)で認められている事項以外の広告を禁止する広告可能事項の限定(医療法第6条の5第3項)に大別されます。ただし、後者②については、下記の4要件を満たした場合には、例外的に広告可能事項以外の事項の広告が可能とされています(広告可能事項の限定解除)。なお、(iii)及び(iv)については、自由診療について情報を提供する場合にのみ必要とされています。このうち(iv)については、2024年3月22日付け医療広告ガイドライン改正により、未承認医薬品等を用いた自由診療に該当する場合に情報提供すべき内容が具体的に列挙されています。

  1. 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
  2. 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
  3. 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
  4. 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第4版)」の改訂の概要

 事例解説書(第4版)のうち、「第1章:ウェブサイトにおける事例」については、前述の2024年3月22日付け医療広告ガイドラインの改正と同様、GLP-1製剤に関する違反例など美容・痩身目的での医薬品等の適応外使用に関する違反広告が多くみられることを念頭に置いたアップデートが中心となっています。アップデートの概要は下記のとおりです。なお、本ニュースレターでは、紙幅の関係で割愛いたしますが、事例解説書(第4版)では、イメージ図とともにわかりやすく解説がなされています。

分類 事例 アップデートの概要
1. 広告が禁止される事例 (9)提供する医療の内容等について誤認させる広告(誇大広告)
  • GLP-1製剤に関する広告における、「痩せホルモン」といった表記や、以前から2型糖尿病で保険適用されている薬をあたかも初めて保険適用になったかのような表記は、誇大広告に該当する。
(10)処方箋医薬品等を必ず受け取れると期待させる広告(誇大広告)
  • オンライン診療に関する広告において、「すぐに医薬品のお受け取りが可能!」とのみ記載しているケースなど、本来医師の診察や処方箋の交付を経て処方される処方箋医薬品等が、いかなる患者でも必ず受け取れるかのような「期待感」を抱かせているケースは、誇大広告に該当する。
  • 医師の診察が必要である旨と、薬の受け取りの説明の付近に「医師の判断によりお薬を処方できない場合があります」などの文言を最低限記載する必要がある。
(20)ビフォーアフター写真(省令禁止事項)
  • ビフォーアフター広告については、術前又は術後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付すことが必要となるところ(医療広告ガイドラインP.9)、「※画像またはこちらをクリックすると、詳細が表示されます。」とするなど写真等をクリックしなければ必要な情報提供が表示されないケースも違反となる。
3. 限定解除要件の記載が不適切な事例 (27)未承認医薬品等を用いた自由診療における限定解除
(28)医薬品等を承認された効能・効果と異なる目的で用いた自由診療における限定解除
  • 未承認医薬品等を用いた自由診療に該当する場合に必要な情報提供について、「諸外国における安全性等に係る情報(承認国がないなど、情報が不足している場合は、重大なリスクが明らかになっていない可能性がある旨)」の下線部と「医薬品副作用被害救済制度の対象にはならないこと」の記載を求めることが解説に追加された。
(29)医薬品等を承認された効能・効果と異なる目的で用いた自由診療における限定解除(GLP-1関連)
  • 上記(28)と同様の事例解説であるが、GLP-1製剤に関する違反例が多いこと等から、GLP-1製剤の場合の事例と解説を明示するため、追加された。

 また、今回の改訂では、「第2章:SNS・動画における事例」が新規に作成されました。医療広告規制との関係で留意すべき点は「第1章:ウェブサイトにおける事例」と基本的に同様ですが、下記の点については、SNS・動画における広告特有の事項として特に注意する必要があると考えられます。

  • SNSの投稿に文字制限がある場合、自らの投稿に返信を行うことで、一連の医療広告に当たるケースもありうる。(事例解説書(第4版)P.56)
  • 他者の投稿を引用することで、自院のサービス等の体験談を紹介している場合も「患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談」として違反となる。(事例解説書(第4版)P.57)
    ※ X(旧Twitter)のリツイート機能を利用した体験談の紹介等が該当しうると考えられます。
  • ビフォーアフター写真については、SNSの投稿又は動画において、通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な情報の記載が必要であり、医療機関のHP等へのリンク等の掲載では足りない。(事例解説書(第4版)P.58、63)
  • 自由診療における広告可能事項の限定解除要件を満たすための情報提供についても、医療機関のHP等の別リンク先での情報提供では不十分で、一連の広告の中での説明が必要。(事例解説書(第4版)P.59、60、64、65)

上記3、4点目の情報提供は、SNSについては「プロフィール、投稿、返信」、動画については「動画、タイトル、概要欄」のいずれかにおいて情報提供がされていれば足りるとされていますが(事例解説書(第4版)P.56、62)、「広告の具体的な内容に応じて、実際のSNSにおける全体の構図や医学的状況等を考慮して、誤認を与えない対応が必要である」とされています。SNSについては投稿、動画については動画本体のみ閲覧するユーザーも相応にいると思われるため、そのようなユーザーについても十分な情報提供がなされ、誤認が生じないような配置や構成とする必要があると考えられます。

医療法人社団に対するステマ規制に基づく措置命令について

1. 景表法に基づくステマ規制の概要

 広告であるにもかかわらず広告であることを隠すいわゆる「ステルスマーケティング」(ステマ)への規制として、令和5年10月1日付で、景表法第5条第3号に基づく不当表示として禁止される新たな表示の類型を指定する「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」という内閣府告示(ステマ告示)が施行されました。ステマ告示では、①事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、②一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるものが規制対象とされています。また、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(2023年3月、消費者庁長官決定)(ステマ告示運用基準)において、ステマ規制の趣旨、上記①②の要件についての考え方等が示されています。

2. 医療法人社団に対するステマ規制に基づく措置命令

 消費者庁は、2024年6月6日、医療法人社団(以下「本医療法人」といいます。)に対し、同法人が運営する医療機関(以下「本クリニック」といいます。)において供給する診療サービスに係る表示がステマ告示で指定する表示に該当し、景表法に違反するとして、同法第7条第1項の規定に基づき、措置命令(表示行為の中止、一般消費者への周知徹底等)を行いました。同庁が公表した資料によると、消費者庁は、本クリニックが、インフルエンザワクチン接種のために本クリニックに来院した者(以下「来院者」といいます。)に対し、Googleマップ上のプロフィールに表示される口コミ評価として星5又は星4の投稿をすることを条件に、来院者が本クリニックに対して支払うインフルエンザワクチン接種費用から割り引くことを伝えることにより、来院者に星5又は星4の口コミ評価を投稿させ、それらの口コミ評価を表示したことが、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」に該当すると認定しています。

 本事例で問題となった表示は、ステマに該当する典型的なケースであるといえます。実務的には、ある表示がステマに該当するかどうか悩ましいケースも相応にあり、上記事例がステマ告示に関する初の措置命令であり事例の集積が十分でない現状に鑑みると、ステマ告示運用基準等を参照しつつ、引き続き慎重な対応が求められます。

 また、医療広告ガイドラインにおいても、患者等に広告と気付かれないように行われるステマ等について、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどの場合には、医療広告として取り扱うことが適当な場合があるとされています。したがって、ステマに該当する広告については、景表法のみならず、医療広告規制の遵守も必要となる可能性があり、注意が必要です。なお、景表法に基づくステマ規制の対象は、商品・サービスを供給する事業者(広告主)であり、企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は直接の規制対象とはならない一方で、医療広告規制の対象は「何人も」とされているため、インフルエンサー等の第三者も規制対象となりえます。

おわりに

 事例解説書(第4版)は、これまでの医療広告規制の内容に変更を加えるものではありませんが、前述のとおり、最近の医療広告の内容・形態を踏まえたアップデートが行われており、医療に関する発信を行う上で、実務上の参照価値が高いものとなっています。なお、2024年3月25日付で開催された厚生労働省の分科会(第3回医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会)では、「最近は特にSNSに投稿されたインフルエンサーの投稿などを見て医療機関の施術内容を判断するなど、SNS上の口コミ等が消費者に大きな影響を与えていることを受けまして、昨年10月の医療広告協議会でこういったSNS・動画の指摘の方針の協議を行ったところでございまして、本年度のネットパトロール事業でも監視を開始したところであります。」との発言があり、今後、SNSやインターネット動画における違反事例の摘発が活発化する可能性があります。SNSやインターネット動画による医療に関する情報発信に当たっては、より一層慎重な対応が求められます。

 また、本ニュースレターでは、景表法に基づくステマ規制についてご紹介しましたが、医療に関する広告については、医療法等の医療関連法令のみならず、一般的な広告規制もあわせて遵守する必要があるため、医療に関する情報発信を行う医療機関や事業者においては、広告に関する規制の動向及びその執行状況を幅広く注視しておく必要があります。

脚注一覧

※1
2024年3月22日付け医療広告ガイドラインの改正については、粂内将人・鳥巣正憲・布山雄大「医療広告ガイドラインの改正案について」(NO&T 薬事・ヘルスケアニュースレター No.27)(2024年2月)もご参照ください。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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