
大久保涼 Ryo Okubo
パートナー(NO&T NY LLP)/オフィス共同代表
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ニュースレター
デラウェア州M&A最新判例アップデート 2024年上半期編(2024年11月)
本ニュースレターでは、2024年の下半期においてデラウェア州裁判所から出された米国M&Aに関する重要判例のうち注目すべき3件を紹介する。
本判決は、①アーンアウト条項※1のマイルストーン達成のための買主の努力義務※2に関して「外向き(outward facing)」の基準が適用される場合には、買主側の特異な事情を考慮することができないこと、②マイルストーンに関する文言が曖昧な場合には、その文言解釈のために外部証拠(当事者の内部コミュニケーション等)が考慮されうることを判示した事案である。詳細は以下のとおりである。
2018年11月2日、Alexion Pharmaceuticals, Inc.(以下「Alexion」という)は、Syntimmune, Inc.(以下「Syntimmune」という)を買収した(以下「本買収」という)。Alexionは、本買収のクロージング時に4億ドルを支払い、さらに8つのマイルストーン達成時に総額最大8億ドルを支払うアーンアウトの支払いに合意していた。
本買収に関する買収契約(以下「本買収契約」という)上、各マイルストーンは、Syntimmuneの製品であるモノクロナール抗体(ALXN1830、以下「本製品」という)の今後の開発に関連して設定されており、1つ目のマイルストーンは「第一臨床試験の成功」時に1億3,000ドルを支払うというものであった。そして、「第一臨床試験の成功」は、決められた5つの技術的指標を満たすことと定義されており、1つ目の技術的指標は「長期安全性及び有効性試験において、週1回又はそれ以下の頻度の皮下投与を裏付けるPK/PDプロファイルが観察されること」(以下「本技術的指標」という)とされていた。また、本買収契約上、本製品の開発に関してAlexionの完全な裁量を認める文言が規定されていた。そして、Alexionは、7年間、各マイルストーンを達成するための商業上合理的な努力義務を負うこととされていた。ここにいう商業上合理的な努力とは、Alexionと類似の規模及び分野のバイオ製薬企業が、類似の開発段階にある類似製品の開発及び商業化のために典型的に用いる努力並びにリソースを用いることと定義され、安全性、効率性、参入の順序、規制当局の承認、その他の要因を考慮して判断されると規定されていた。
本買収後、本製品の開発プログラムは、薬剤の汚染やCOVID-19パンデミックによる試験の一時中断等、多くの問題に直面した。そして、2020年4月、Alexionは、投資家に対して価値を示すための「10 by 2023」という社内プログラム(2023年までに10製品をローンチするというもの)の達成のため、本製品の開発の優先順位を下げ、本製品の開発プログラムの資金を他の製品の開発に振り向けることにした(以下「本資金削減」という)。その結果、Alexionは、本製品について、類似の製品を開発する競合他社に遅れをとることとなった。
2021年7月、Alexionは、より規模の大きな製薬会社であるAstraZeneca plc(以下「アストラゼネカ社」という)に買収され、その結果、本製品を含む開発プログラムポートフォリオは全体的に見直されることとなった。2021年12月、Alexionは、潜在的な安全性リスクその他の要因を理由として、本製品の開発プログラムを終了した(以下「本開発プログラムの終了」という)。
そこで、原告であるShareholder Representative Services LLC(以下「SRS」という)は、Syntimmuneの旧株主を代理して、Alexionがマイルストーンを達成するための商業上合理的な努力義務を怠ったこと(請求①)、第一臨床試験のデータは本技術的指標を満たすものであり、1つ目のマイルストーンが達成されているにもかかわらず、Alexionはアーンアウトの支払いを行わず、本買収契約に違反したこと(請求②)等を理由に、Alexionに対して訴訟を提起した。
デラウェア州衡平裁判所(以下「裁判所」という)は、SRSの請求①及び請求②を認めた。
裁判所は、アーンアウト条項におけるマイルストーン達成のための買主の努力義務として求められる義務の程度は、「外向き(outward facing)」の基準により判断される場合と「内向き(inward facing)」の基準により判断される場合があることを前提にして、本買収契約上当事者は「外向き(outward facing)」の基準により判断されることに合意していると認定し、Alexionと同一の規模で、本製品と類似の開発段階にある製品を開発中の「仮想企業(hypothetical company)」を設定し、Alexionの行った努力を当該仮想企業の行う努力に照らして検討する手法をとった※3。
本資金削減について
裁判所は、本資金削減は、2023年までに10製品をローンチするという特異な会社方針に基づいて行われたものであり、Alexionの競合他社が本製品に類似する製品の開発を継続していることを踏まえても、仮想企業であれば本製品のような製品の開発のための資金を削減することはないと判断した。したがって、本資金削減により、Alexionはマイルストーンを達成するための商業上合理的な努力義務を怠ったと判示した。
本開発プログラムの終了について
裁判所は、Alexionが本製品の開発終了の理由として挙げた複数の要素を検討している。そのうち、Alexionが主張する本製品の潜在的な安全性リスクについては、安全性リスクを指摘するデータは決定的なものとはいえず、仮想企業であれば追加のデータ収集を行って対応し、開発プログラム自体を終了させることはないとしている。そして、裁判所は、本開発プログラムの終了は、実際にはシナジーの創出※4を目指したAlexionのアストラゼネカ社への売却に起因しており、仮想企業がこのような特異な目的を追及するとは限らないとした。したがって、本開発プログラムの終了により、Alexionはマイルストーンを達成するための商業上合理的な努力義務を怠ったと判示した。
SRSとAlexionは、どのようなデータが得られればPK/PDプロファイルを裏付けるために必要なデータが得られたといえるか(すなわち、マイルストーンが達成されたといえるか)という点に関して、異なる解釈を主張した。裁判所は、本買収契約上に規定された本技術指標が曖昧であると判断した上で、当事者の意図を認定するために、当事者間で交換された本買収契約のドラフト等を踏まえた交渉の経過や、問題となった文言に関するAlexion内部のコミュニケーション等の外部証拠を検討した。そして、第一臨床試験において、本製品の週1回又はそれ以下の頻度での投与が可能であることを裏付けるPK/PDデータが得られれば、本技術的指標を満たすとし、SRSの主張を認めた。
本判決は、①アーンアウト条項におけるマイルストーン達成のための買主の努力義務に関して「内向き(inward facing)」基準が採用された場合であっても、その内容次第では買主が重い努力義務を負う可能性があること、及び②買主はアーンアウト条項におけるマイルストーン達成に関して誠実かつ公正な取引に関する黙示の誓約義務(implied covenant of good fair and fair dealing)を負うことを判示した事案である。詳細は以下のとおりである。
2019年4月1日、Johnson and Johnson(以下「J&J」という)は、Monarch及びiPlatformという手術用ロボットを開発するスタートアップ企業であるAuris Health, Inc.(以下「Auris」という)を買収した(以下「本買収」という)。J&Jは、本買収のクロージング時に34億ドルを支払い、さらに8つの許認可取得のマイルストーン及び2つの商業上のマイルストーンの達成時に総額最大23億5,000万ドルを支払うというアーンアウトの支払いに合意していた。なお、J&Jは、AurisのiPlatformと潜在的競合関係にある手術用ロボット製品(Verb)を開発していたが、多額の投資にもかかわらず開発は苦戦していた。
本買収に関する買収契約(以下「本買収契約」という)上、J&Jは、Monarch及びiPlatformに関する許認可取得のマイルストーンを達成するために商業上合理的な努力を行う義務を負っていた。そして、J&Jが商業上合理的な努力を行ったかどうかは、「inward-facing(内向き)」基準に基づき判断されるものとされていたが、Aurisの売主を保護する観点から、次の3つの限定が合意された。
本買収契約上、許認可取得のマイルストーンは、510(k)経路※7による薬事上の許認可取得に紐付いていた。本買収契約上、Aurisの事業に関する決定についてJ&Jに完全な裁量を与える文言は存在しなかった。
本買収のクロージングから数週間後、J&Jは、AurisのiPlatformとJ&JのVerbのいずれの開発プロジェクトを支援するかを決定するための社内コンペ(以下「本コンペ」という)を開催することとした。Aurisは、iPlatformの存続をかけた本コンペの準備等のために多額の資金や人材等のリソースを割くことを強いられ、本コンペには勝ったものの、結果としてiPlatformの許認可取得に向けた作業が遅延した。
そして、J&Jは最終的にVerbとiPlatformを1つのプロジェクトに統合すること(以下「本統合」という)を決定し、iPlatformは事実上「Verbの部品工場(“a parts shop for Verb”)」となった。
その後、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration、以下「FDA」という)の政策変更により、iPlatformは本買収契約上に定められた501(k)経路による許認可取得の対象ではなくなった。2020年4月14日、J&Jは、501(k)経路とは異なる経路を通じて認可を取得することになったことを理由に、本買収契約上の許認可取得のマイルストーンの評価額をゼロとすることを公表し(以下「本減損処理」という)、Aurisに対して、許認可取得のマイルストーンはキャンセルされたと伝達した。さらに、J&Jは、本買収契約上のマイルストーンとは異なる指標及び本買収契約上のアーンアウト期間よりも長い期間を内容とする従業員インセンティブプログラムを導入した(以下「本インセンティブプランの導入」という)。
そこで、原告であるFortis Advisors LLC(以下「Fortis Advisors」という)は、Aurisの旧株主を代理して、①J&Jがマイルストーンを達成するための商業上合理的な努力義務を怠り、本買収契約上の義務に違反したこと(請求①)、及び②J&Jがデラウェア州法上の誠実かつ公正な取引に関する黙示の誓約(implied covenant of good fair and fair dealing)に違反したこと(請求②)等を理由に、J&Jに対して訴訟を提起した。
デラウェア州衡平裁判所(以下「裁判所」という)は、Fortis Advisorsの請求①及び請求②を認め、各マイルストーンに関するアーンアウト価格に、J&Jが努力義務を遵守していれば当該マイルストーンが達成されたであろう確率を乗じて損害賠償額を決定した。
本コンペについて
裁判所は、J&Jにおける「優先医療デバイス製品」であれば、開発プロジェクトの存続をかけて、本コンペのようなコストを伴う競争を強いられることはないとして、J&Jは、本コンペを実施することにより、iPlatformに関する許認可取得のマイルストーン達成のための商業上合理的な努力を怠ったと判断した。
本統合について
裁判所は、J&Jは本統合がiPlatformに関する規制当局の許認可スケジュールに悪影響を与えることを知っており、許認可取得が遅滞することによりアーンアウトの支払いを避けることが自らにとって利益となると考えていたと認定し、アーンアウトの支払いコストの考慮に基づく行動をとってはならないという買主の義務に違反していると判断した。また、J&Jは、本統合は、商業上合理的な事業上の決定であり、本買収契約上で認められたJ&Jの裁量の範囲内であると主張したものの、裁判所は、J&Jの努力は、そもそも(J&Jの他の目的ではなく)許認可取得のマイルストーン達成のために用いられなければならず、当該主張は本買収契約の誤った解釈に基づくものであるとした。また、iPlatformが「優先医療デバイス製品」として扱われていれば、そのシステム、技術及び開発チームが別のデバイスの問題解決のために希釈化されることはなかったとした。
本減損処理及び本インセンティブプランの導入について
裁判所は、本減損処理自体は会計上の処理であり、それ自体をもってJ&Jの本買収契約上の支払義務を消滅させるものではないとした上で、本減損処理及びその後の本インセンティブプランの導入は、許認可取得のマイルストーンの達成に向けた従業員のモチベーションに悪影響を与えたと認定し、本減損処理及び本インセンティブプランの導入により、J&Jは「優先医療デバイス製品」の通常の実務に合致する商業上合理的な努力を怠ったと判断した。
J&Jは、501(k)経路による許認可を取得することは、本買収契約上の重要な条件であったため、FDAの政策変更により501(k)経路による許認可取得ができなくなったことにより、許認可取得のマイルストーンの達成は不可能になったと主張した。もっとも、裁判所は、両当事者が、特定の許認可経路を通じた許認可取得を前提としたマイルストーンの達成について特別に交渉したという証拠はなく、本買収契約が交渉された時点で予想された許認可経路である501(k)経路が本買収契約上に規定されただけであって、本買収契約締結時に、当事者がFDAの政策変更を知っていたならば、あえて501(k)経路を明記することはなかったはずであるとした。そして、そのような場合、J&Jは、デラウェア州法上の誠実かつ公正な取引に関する黙示の誓約(implied covenant of good fair and fair dealing)に基づき、少なくともiPlatformに関して、代替的な経路を通じた許認可取得を達成するための努力義務を負うのであって、J&Jには当該義務違反があると判断した。
2018年、米国の電気自動車メーカーであるTesla, Inc.(以下「テスラ社」という)の報酬委員会、取締役会及び同社のCEOであるイーロン・マスク氏(以下「マスク氏」という)と利害関係のない株主は、9ヶ月にわたる検討期間の後、マスク氏の報酬プラン(以下「本プラン」という)を承認した。本プランは、12のトランシェから構成され、マスク氏に対しテスラ社の業績目標に応じた複数のストックオプションを付与するものとなっていたが、その推定価値は約560億ドルとされていた。その後、2024年1月30日までに本プランが定めるすべての業績目標が達成されたため、マスク氏に付与されたすべてのストックオプションが権利確定済みの状態となったが、マスク氏は当該ストックオプションを一切行使していなかった。
2024年1月30日、Tornetta v. Musk判決(以下「Tornetta I判決」という)において、デラウェア州裁判所は、本プランの取消を命じた。同判決では、マスク氏の持分比率は21.9%に留まるものの、マスク氏がテスラ社における報酬決定プロセスを支配していたとし、その結果、本プランは支配株主たるマスク氏との間の取引であると認定された。デラウェア州裁判所は、支配株主との間の取引はMFW基準(詳細は後述)が満たされない限り完全な公正性基準(entire fairness)に基づいて審査されるとした上で、本プランを承認した報酬委員会の各取締役はマスク氏から独立しておらず、また、株主による承認も十分な情報(“fully informed”)に基づくものではなかったため、MFW基準が満たされていないとし、被告ら(マスク氏、テスラ社のその他の取締役及びテスラ社)に対して、本プランを決定したプロセスとその報酬額がテスラ社及びその株主にとって完全に公正であることを証明する立証責任を課した。そして、被告らが当該立証責任を果たせなかったとして、マスク氏の支配株主としての信認義務違反及びその他の取締役の信認義務違反が認められ、本プランの取消しが命じられた。
Tornetta Iの判決後、テスラ社は本プラン及びTornetta I判決に関する追加の情報を株主に対して開示し、2024年6月13日、マスク氏と利害関係のない株主が本プランを追認(“ratifying”)する株主総会決議を行った。その後、Tornetta I判決の被告らがTornetta I判決による本プラン取消の決定の訂正(“Motion to Revise”)を求めたのが本判決(以下「Tornetta II判決」又は「本判決」という)の事件である。
結論として、Tornetta II判決は、Tornetta I判決の被告らの申立てを棄却し、Tornetta I判決の本プラン取消の決定を維持した。
デラウェア州では、株主による追認について、①法定された追認(“legal ratification”)(例:DGCL204条)と②コモンロー上の追認(“fiduciary ratification”)の2種類が認められており、本判決において被告らは②を主張した。デラウェア州裁判所は、②に基づく株主の追認の効果について、追認の対象となる会社の行為によってその効果が異なることを明らかにした。すなわち、株主による追認※8は、取締役の信認義務(fiduciary duty)違反の有無を裁判所が判断するにあたり、①審査基準そのものを変更させる効果があるか、②審査基準に基づく証明責任を転換する効果があるか、又は③何の効果もない場合があるとした上で、利益相反関係が会社の意思決定プロセスに影響を与える可能性がある状況においては、利益相反関係がより直接的かつ深刻になるにつれて、審査基準が厳格になり、株主の追認の信任義務違反に対する防御効果は減少するとした。そして、支配株主との取引の場合、類型的に少数株主の利益が害される可能性が高いことから、原則として完全な公正性基準(entire fairness)が適用され、株主の追認の効果は、②審査基準に基づく証明責任を転換させるに留まり、①審査基準そのものを変更するものではないとした。そして、支配株主との取引に関して①審査基準そのものを変更するためには、MFW基準(後述)に従う必要があるとした。
デラウェア州では、Kahn v. M&F Worldwide Corp., 88 A.3d 635(Del. Mar. 14, 2014)において、支配株主が関与するスクイーズ・アウト取引において、一定の要件をすべて満たす場合には、その妥当性に関して、最も厳格で完全な公正性基準(entire fairness)ではなく通常の経営判断原則(Business Judgement Rule)が適用される旨が示されている(以下「MFW基準」という)※9。
本判決は、MFW基準によって審査基準を経営判断原則(Business Judgement Rule)に引き下げるためには、支配株主との間で対象となる取引の経済的な条件について交渉を開始する時点(“at the start of economic negotiations”)において、①十分な情報(“fully informed”)に基づいた少数株主の過半数による承認、及び②当該取引を交渉・承認する特別委員会の設置のプロセスを開始する必要があるとした上で、本プランは2017年時点で既に交渉が始まっているため、2024年の段階でテスラ社がMFW基準の適用を試みたとしても、審査基準の引き下げは認められないとした。そのため、本プランは原則通り完全な公正性基準(entire fairness)の対象であり、(1)のとおり、事後的な株主の追認の効果は、原告側に完全な公正性基準(entire fairness)の立証責任を転換することに留まるものとされた。
本判決は、株主による本プランの追認は、原告側に立証責任を転換するための要件を満たしていないと判断した。裁判例上、立証責任の転換が認められるためには、株主による承認が十分な情報によるものであり、かつ、強制されていないことが必要とされるが、デラウェア州裁判所は、株主による投票前にテスラ社が配布した委任状説明書には重大な情報の不備があったため、株主の投票が十分な情報に基づくものではなかった点を指摘している。特に、本件委任状説明書における株主の追認の効果に関する記載が、以下の点で不正確であったと指摘されている。
本判決は、株主による追認がTornetta I判決後に行われたため、そもそも判決の修正を求める適切な手続的根拠がないと判断した。被告らは衡平裁判所規則(Court of Chancery Rules)※10に基づいて申し立てを行ったが、被告らが根拠として引用した規則54(b)(複数の請求に関する判決の変更)、規則59(a)(新たな裁判の根拠)、規則60(b)(判決又は命令からの救済)はいずれも本件に適用されないとした。すなわち、本判決は、規則59(a)及び規則60(b)は新たに発見された証拠(“newly discovered evidence”)を考慮するために別途新たな裁判を行うことを認めているが、前回の裁判の段階で存在していなかった新たに創出された証拠(“newly created evidence”)を考慮するものではないため、Tornetta I判決後に行われた株主総会決議を根拠としてTornetta I判決を覆す手続的な根拠は存在しないと判断した。
※1
アーンアウト条項とは、買収対価の一部について、クロージング時に確定的に支払われるものとせず、クロージング後一定期間内に当事者間で合意された条件(一定のマイルストーン等)が成就することを条件として、また、その達成度に応じて支払われるものとする条項をいう。
※2
アーンアウトの支払いはクロージング後一定期間における対象会社の実績等に依存するため、対象会社を支配している買主が、一定の恣意的な操作を行うことにより、アーンアウトの指標達成を阻害する可能性がある。これを防ぐために、アーンアウト期間における対象会社の事業運営について、アーンアウトを最大化するよう事業運営を行う等の買主の一定の義務を規定する場合がある。
※3
他方、「内向き(inward facing)」の義務とは、Alexionの本製品の開発に関する行動や意思決定プロセスを同社の他の製品の開発に関するそれらと比較するものであるとした。
※4
アストラゼネカ社は、当該買収により5億ドルのシナジー創出を約束していた。
※5
Osborn ex rel. Osborn v. Kemp (Del. 2010)
※6
Eagle Indus., Inc. v. DeVilbiss Health Care, Inc. (Del. 1997)
※7
米国において医療機器を販売するために必要となる認可取得の経路の一つであり、当時はMonarch及びiPlatformは510(k)経路による認可取得が行われることが想定されていた。
※8
十分な情報(“fully informed”)によるものであり、かつ、強制されていない(“uncoerced”)場合に限る。
※9
詳細は当事務所発行の米国最新法律情報No.130「デラウェア州M&A最新判例アップデート 2024年上半期編」(2024年11月)を参照。
本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。
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