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新しい環境保護政令における拡大生産者責任(EPR)(ベトナム)

NO&T Asia Legal Update アジア最新法律情報

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

ベトナムでは新しい環境保護法(法律第72/2020/QH14号。以下「新法」)が2022年1月1日に施行され、その施行細則となる政令第08/2022/ND-CP号(以下「政令08号」)が同月10日に成立・施行されている。本稿では、そのうち、製造業者や輸入業者にとって実質的なコスト負担の増加につながる可能性がある、いわゆる「拡大された生産者責任」の観点からの規制に焦点を当ててご紹介したい。

新法における拡大生産者責任の概要

「拡大された生産者責任」(Extended Producer Responsibility: EPR)とは、「生産者が、その生産した製品が使用され、廃棄された後においても、当該製品の適正なリサイクルや処分について一定の責任を負うという考え方」などと定義されている(日本の経済産業省「3R政策」参照。)。

新法ではリサイクルと廃棄処分について規定を分け、(1)リサイクル価値がある製品・包装を製造又は輸入した者に対するリサイクル責任、及び、(2)有害物質を含有している、リサイクルが困難、又は回収・処分が容易でない製品・包装を製造又は輸入した者に対する回収・処分責任という2つの側面から拡大生産者責任を定めるとともに、一定の条件の下で、製造者・輸入者に財政貢献(すなわち、一定の金銭の支払い)を求めている。

(1)リサイクル責任

新法では、輸出(再輸出)される製品・包装又は研究開発目的で製造・輸入される製品・包装を除き、リサイクル価値がある製品・包装として別途政令で定めるものを製造・輸入した者は、所定のリサイクル率及び条件で当該製品・包装をリサイクルする義務を負う。かかる義務を負う者は、①(物理的に)リサイクルを行うか、②リサイクルをサポートするためベトナム環境保護基金(以下「VEPF」)に対して一定の金銭を支払う(財政貢献をする)かを選択することができる。①リサイクルを行うことを選択した者は、天然環境資源省に対して、毎年、リサイクル計画を登録するとともに、リサイクル実績について報告しなければならない。②VEPFに対する財政貢献については、製品・包装の分量・個数に応じてその料率が定められること、VEPFが受領した金銭はあくまでリサイクルのために使用され、その金額及び使途については公表され、透明性が確保されていなければならないことが規定されている。施行に当たっての詳細は政令で定めることとされている。

(2)リサイクルや回収・処分が容易でない製品・包装の回収・処分責任

輸出(再輸出)される製品・包装又は研究開発目的で製造・輸入される製品・包装を除き、有害物質を含有する、リサイクルが困難、又は回収・処分が容易ではない製品・包装を製造・輸入した者は、こうした製品・包装の回収・処分のための活動をサポートするため、VEPFに対し財政貢献をする義務を負う。VEPFは受け取った財政貢献金を、廃棄物の回収・運搬・処分や、かかる処分にかかる技術の研究開発・発展のために使うこととされている。リサイクル責任の場合と同様、VEPFに対する財政貢献金額については、製品・包装の分量・個数に応じてその料率が定められること、VEPFが受領した財政貢献金及びその使途については公表され、透明性が確保されていなければならないことも規定されている。そして、施行に当たっての詳細は政令で定めることとされている。

政令08号における拡大生産者責任の主なポイント

政令08号では、上述した新法で定めるリサイクル責任及び回収・処分責任の具体的な内容・運用などについて、概要、以下のように定めている。

(1)リサイクル責任

リサイクル責任の対象となる製品・包装を別紙において列挙し、かかる対象製品をベトナム国内市場において販売するために製造・輸入した者(但し、以下の責任主体から除外される者を除く。)は、所定のリサイクル責任を負うこととしている。

責任主体から除外される者:

  • 輸出(再輸出)・研究目的で製品・包装を製造・輸入した者
  • 包装が対象となる製品の年間売上が300億ベトナムドン(約1億4200万円)に満たない包装の製造者、及び、200億ベトナムドン(約9500万円)に満たない包装の輸入者

対象となる製品:電球、携帯電話・タブレット端末、パソコン、ディスプレイ、プリンター、印刷機、AV機器(カメラ、スピーカー・アンプ)、テレビ・スクリーン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・乾燥機、ストーブ・オーブン・電子レンジ、太陽光発電パネル、蓄電器、電池、エンジン用潤滑油、チューブ・タイヤ、車両(2輪、3輪及び4輪)、所定の重機

包装が対象となる製品:食品、化粧品、薬品、肥料・動物飼料・獣医薬、家庭用・農業用・医療用の洗剤・調合剤、セメント

施行時期

  • 包装が対象となる製品、並びに、電池・蓄電器、潤滑油及びチューブ・タイヤ:2024年1月1日
  • 電化製品:2025年1月1日
  • 車両・重機等:2027年1月1日

責任主体から除外される者を除き、ベトナム国内市場で販売するために対象製品・包装を製造・輸入した者は、以下のリサイクル率でリサイクルを自ら行うか、天然環境資源省が公表する認可されたリサイクル業者に委託するか、又は、以下の財政貢献金をVEPFに支払う必要がある。リサイクルを自ら行う場合の年間のリサイクル計画・(前年の)実績については毎年3月31日までに天然環境資源省に登録しなければならない。

リサイクル率:製品・包装毎に、概要以下の通り定められている。

  • 包装:材質に応じ、10~22%の間で定められている
  • 電池・蓄電器:種類に応じ、8~12%
  • エンジン用潤滑油:15%
  • タイヤ・チューブ:5%
  • 電化製品:種類に応じ、5~9%(但し、携帯電話は15%)
  • 車両:種類に応じ、0.5~0.7%(但し、重機は1%)

財政貢献を求められる金額:以下の計算式により算出する。リサイクル・コスト基準については具体的な数値は政令では示されておらず、天然環境資源省が3年毎に定め、首相に提出することとされている。

[財政貢献金額] = [リサイクル率] × [製品・包装の分量] × [リサイクル・コスト基準]

財政貢献金は年に一回4月20日までにその全額を一括して支払うか、又は、年に2回の分割払いとし、半額ずつをそれぞれ4月20日及び10月20日までに支払う必要がある。

(2)リサイクル・回収困難な製品・包装の回収・処分責任

政令08号では、回収・処分責任の対象となる製品・包装について、以下の対象製品・包装を別紙において列挙している。こうした対象製品・包装をベトナム国内市場において販売するために製造・輸入した者(但し、以下の責任主体から除外される者を除く。)は、毎年3月31日までに当該製品・包装の種類及び分量を所定のフォームに従って管轄当局に申告するとともに、以下の財政貢献金額をVEPFに対して支払う義務を負う。

責任主体から除外される者:

  • 輸出(再輸出)・研究目的で製品・包装を製造・輸入した者
  • 対象となる製品の年間売上額が300億ベトナムドン(約1億4200万円)に満たない製造者、及び、200億ベトナムドン(約9500万円)に満たない輸入者

対象製品・包装:殺虫・殺菌剤の容器、使い捨ての電池、オムツ・生理用ナプキン・使い捨てウエットタオル、ガム、タバコ、合成プラスティックを用いた各種製品(例えば、トレイ・ナイフ・フォーク・スプーン・箸・カップ・箱・使い捨て食品ラップ、シャンプー・歯磨き・整髪剤・風船・テープなど、衣類・アクセサリー・革製品・鞄・靴・サンダル、玩具、家具、建設資材など)

財政貢献金額:対象製品・包装毎に、一定数量・分量あたりの金額(例えば、殺虫剤容器は材質毎に1個あたり20~250ベトナムドン、トレイ・ナイフ・フォーク・スプーン・箸・カップ等の場合1kgあたり1500ベトナムドン、タバコの場合20本あたり60ベトナムドン)、あるいは、対象製品等の売上・輸入価値に対する割合(例えば、使い捨て電池、オムツ・ウエットタオル類、ガムは、その1%)の形で定められている。財政貢献金額は5年に一回見直すこととされている。

(3)関係当局間での情報の共有

リサイクル責任・回収処分責任を負う主体や、対象製品・包装の情報の把握等にあたっては、税務当局、税関当局、企業登録を管轄する当局が情報を共有すること、国家EPR電子ポータルは税務・税関・企業登録それぞれのデータベースと接続させることが規定されている。上述のリサイクル・回収処分責任を巡る運用にあたっては、企業登録情報、納税・通関に関する情報を当局側も把握した上で規制を運用することを想定しているものと思われる。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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