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ニュースレター

人生100年時代―学び直しや副業・兼業促進の動きと労務コンプライアンス上の留意点

NO&T Labor and Employment Law Update 労働法ニュースレター

著者等
緒方絵里子清水美彩惠(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Labor and Employment Law Update ~労働法ニュースレター~ No.4(2022年8月)
業務分野
キーワード
※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 人生100年時代を迎え、年金支給年齢も引き上げられる中で、学び直して能力・スキルを身につけ、また、起業やフリーランスとして働くことで、長く働き続けられる環境の実現に注目が集まっています。労働者も、就職先を検討するに当たり、研修や教育訓練の有無・内容、副業・兼業等の可否等を考慮するようになると考えられることから、企業の側も、優秀な人材を獲得・維持するために、研修・教育訓練の充実や副業・兼業等について検討することが求められるでしょう。

 2022年6月29日、厚生労働省から、職場における学び・学び直しを促進するため、労働政策審議会人材開発分科会における議論を踏まえ、「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」が公表されました。2022年5月に「人材版伊藤レポート2.0※1が公表されたことにより、人的資本経営への注目が高まっていますが、人材版伊藤レポート2.0の中でも、人材戦略の内容に関する「5つの共通要素」の1つとして、社員の「リスキル・学び直し」を促すための取組の重要性が強調されていました。

 また、2022年7月8日、厚生労働省は、副業・兼業を促進するため、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改正しました。ガイドラインの改正にあわせて、「『副業・兼業の促進に関するガイドライン』Q&A」も改正されています。

 本ニュースレターでは、厚生労働省が公表した「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」の概要及び「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改正の概要を紹介するとともに、企業が、社員の学び・学び直しや副業・兼業を促進する上での労務コンプライアンス上の留意点について解説します。

「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」の概要

 社員の学び・学び直しの促進は、急速かつ広範な経済・社会環境の変化に対応する人材開発の強化、社員のエンゲージメントや職場満足度の維持・向上等、企業・労働者双方の持続的成長に資するものとして注目されています。

 厚生労働省が公表した「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」は、職場における学び・学び直しを促進するための①「Ⅰ 基本的な考え方」、②「Ⅱ 労使が取り組むべき事項」、③「Ⅲ 公的な支援策」の3部で構成されており、企業が社員の学び・学び直しの促進に取り組む上で考慮すべき視点や考え方、推奨される取組例等が示されています。その概要は以下の通りです。

① 「Ⅰ 基本的な考え方」

  • – 経済・社会環境の変化は急速かつ広範であり、従前、日本企業内の人材開発において重視されてきた企業内におけるOJTによる教育訓練のみでは対応しきれないことから、企業・労働者双方の持続的成長を図るためには、労働者の自律的・主体的な学び・学び直しを促進することが重要
  • – 労働者の学び・学び直しの促進のためには、労使が「協働」して取り組むことが必要
  • – 学び・学び直しにあたっては、(i)職務に必要な能力・スキル等の明確化、学びの目標の共有、(ii)学びの機会の提供、(iii)学び・学び直しを促進するための伴走的な支援策の展開、(iv)学びの実践・評価という「学びのプロセス」を踏まえること

② 「Ⅱ 労使が取り組むべき事項」

  • – 労使が「協働」して取り組む上で、(i)経営者が学び・学び直しの基本認識を労働者に共有すること、(ii)職務に必要な能力・スキル等の明確化、学びの目標を共有すること、(iii)労働者の自律的・主体的な学び・学び直しの機会の確保(多様な形態による教育訓練機会の確保、副業・兼業や在籍型出向の活用等)、(iv)労働者の自立的・主体的な学び・学び直しを促進するための支援(学び・学び直しのための時間的配慮、費用の支援、キャリアコンサルタントの活用等)、(v)学びの実践、評価(身につけた能力やスキルを実践する場の提供、適切な評価)、(vi)管理職等の現場のリーダーによる労働者のサポート及び企業による現場リーダーへの配慮や支援等の6つの視点が重要

③ 「Ⅲ 公的な支援策」

社員の学び・学び直しを促進するにあたっての留意点

 企業における社員の学び・学び直しの機会の提供、学び・学び直しのための時間的配慮、費用の支援等は、社員のワークエンゲージメントを高め、また、優秀な人材の獲得・維持にも繋がることから、各企業においても、様々な取組が行われており、かかる取組は、厚生労働省による「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」の公表によりますます加速することが予想されます。そこで、以下では、社員の学び・学び直しの促進における留意点について解説します。

① 労働時間該当性の明確化

 社員の学び・学び直しの機会の提供として、各企業は、外部講師を招いた研修や社内勉強会の開催、社員同士の勉強会の開催、外部の教育訓練プログラムへの参加、オンラインの学習の機会提供等、様々な形態により、学びの機会を提供することが考えられます。社員が、企業が提供した研修や勉強会等に参加した時間は、労働時間として評価されるわけではなく、企業がこれらの研修や勉強会等への参加を業務命令として義務づけたと評価される場合(研修や勉強会等への参加が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価される場合)に限り、労働時間に該当するとされています。研修や勉強会等が任意参加なのか参加必須なのかによって変わってきますので、特に、休日や夜間に開催される場合やオンラインで実施される場合には、これらは参加・受講必須ではなく希望者による任意参加のものであり、これらに参加する時間は労働時間には該当しないこと等を明確化しておくべきでしょう。

② 学び・学び直しのための費用負担

 社員の学び・学び直しの機会の1つとして、海外留学制度や社員の資格取得を支援する制度を設ける企業もあり、制度の内容も様々です。海外留学や資格取得のための準備期間について特別に休職や休暇を認めるものもあれば、留学や資格取得の費用の全部又は一部を会社で負担することを認める場合もあります。留学等の費用を会社が負担する場合には、社員が留学等の後、直ぐに退職してしまった場合には、留学等の費用について返還を求めたいという事情もあるでしょう。このため、実務上、企業側が、留学費用を負担するに当たり、帰国後に一定期間以上会社で勤務をしない場合に、会社が負担した費用の全部又は一部を返還する旨の誓約書等の提出を求めることや、留学費用を社員に貸し付ける形とし、帰国後、一定期間勤務することで返還を免除するという制度設計にすることがあります。そのような合意の有効性は、労働契約の不履行について、違約金や損害賠償額の予定を定めることを禁止する労働基準法16条や公序良俗に反する合意を無効とする民法90条との関係で問題となります。合意の有効性の判断にあたっては、留学等と業務の関連性の有無・程度、留学するか否か、留学先や学科の選択等における労働者の選択の自由の有無・程度、復職後何年間の継続勤務を求めるか等が考慮されると考えられており、事案により裁判例の結論も分かれています。社費による留学や資格取得制度を設けるにあたっては、これらの点にも留意して、制度を整備・運用する必要があります。

副業・兼業の促進に関するガイドラインの改定の概要

 副業・兼業は、かつては、自社における就労への支障や企業秘密の漏洩等への懸念から、就業規則等によって原則禁止とすることが一般的でしたが、「働き方改革実行計画」(2017年3月28日働き方改革実現会議決定)において、副業・兼業の促進を図るとされました。人生100年時代を見据えて、副業や兼業を通じて個人のキャリアの多様化を促進し、定年まで一つの会社で働いて終わりということではなく、副業や兼業をきっかけに定年後も長く働き続けられる環境作りが促進されることが期待されます。

 これらの動きを背景として、厚生労働省が、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2018年1月)を策定(その後2020年9月に改定)していましたが、厚生労働省は、さらに副業・兼業を促進する目的で、2022年7月8日付けで、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定し、企業に対して、副業・兼業への対応状況についての情報公開を推奨していく考えを示しました。「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改正の概要は以下の通りです。

 副業・兼業の促進に関し、企業に求められる対応として、従前から求められていた労働時間管理、健康管理に加えて、「副業・兼業に関する情報の公表」に関する事項が追加され、企業は、①副業・兼業を許容しているか否か、②条件付きで許容している場合にはその条件について、自社のホームページ等において公表することが望ましいとされました。厚生労働省は、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定に伴い、2022年7月13日付けで、「『副業・兼業の促進に関するガイドライン』Q&A」も改定し、「4.副業・兼業に関する情報の公表」に関するQ&Aを公表しています(同58~59頁)。

副業・兼業を促進するにあたっての留意点

 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改正により、厚生労働省が、企業に対して、副業・兼業に関する情報の公表を推奨したことに伴い、社員の副業・兼業等を認めるか否か、また、認める場合にどのような条件で認めるべきかについて検討を開始する企業も少なくないでしょう。そこで、副業・兼業等の促進にあたり、企業が留意すべき点について、以下解説します。

① 労働時間の管理

 企業は、自社で雇用する労働者が、他社でも雇用される場合には、自社と他社で就労した労働時間を通算して管理することが求められます(労働基準法38条1項)。仮に自社では法定労働時間(1日8時間、週40時間)以内の労働に収まっていたとして、週末に副業として他社で働いている場合には、通算すれば法定労働時間を超過することから、副業・兼業先における労働時間は、時間外労働時間の算定にも影響します。このため、副業・兼業等を認める企業は、他社における労働時間を、労働者からの申告等により把握することが求められます。他社での労働時間を通算管理する負担は小さくないことから、各企業は、副業・兼業等の促進を検討するにあたっては、労働時間の通算管理の考え方について理解しておく必要があります。「副業・兼業の促進に関するガイドライン」に労働時間の通算把握の詳細が述べられていますが、非常に煩雑で、実務上、現実的な方法とは言えません。そこで、厚生労働省は、副業・兼業を行う場合の簡便な労働時間管理の方法として、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」において「管理モデル」の枠組みを示しています。「管理モデル」を導入すれば、各企業は、自らの事業場における法定外労働時間の上限を設定し、その範囲内で労働をさせることで、他社の労働時間を把握する必要がなくなります。「管理モデル」の導入には、各企業が自らの事業場における法定外労働時間の上限を設定することに加え、先に労働者を雇用する企業と副業先の企業が、「管理モデル」によることを合意する必要がある等、一定の手続が必要になる点には注意が必要ですが、厚生労働省は、副業・兼業を認めるに当たり、管理モデルによる副業・兼業であることを要件とすることも差し支えないとの立場を示していますので(「『副業・兼業の促進に関するガイドライン』Q&A」・1-21)、管理モデルによる副業・兼業であることを条件に副業・兼業等を認めることもあり得ると考えられます。

 また、労働基準法38条1項の労働時間の通算規定は、フリーランス、独立、起業として副業を行う場合には適用されません。労働時間の通算管理の負担、また、「管理モデル」の導入手続の負担を考慮し、それらが現実的ではない場合には、フリーランス、独立、起業等の方法による副業・兼業等を容認するという選択肢もあり得るところでしょう。但し、労働時間の通算規定が適用されないとしても、副業・兼業により総労働時間が長くなれば過重労働に繋がりかねず、また、本業にも支障をきたしかねないことから、稼働時間について一定の制限を設けて副業・兼業を承認する、就業時間中の職務専念義務や誠実義務を遵守するよう誓約書の提出を求める等の工夫が考えられます。

② 企業秘密の管理・競業行為の制限

 社員が、副業・兼業をする場合には、企業秘密の保護についても留意する必要があります。社員は、企業に対して、労働契約に付随する信義則上の付随義務として、職務上知り得た秘密を保持する義務(秘密保持義務)を負うと解されており、会社の就業規則や雇用契約にも、社員の秘密保持義務に関する規定が設けられていることが一般的です。もっとも、社員が副業・兼業をする場合には、通常の場合と比較してより一層、顧客情報を含む企業秘密の流出を防止するよう注意する必要性が高まります。兼業・副業の許可にあたって競業しないことを条件とした上で、就業規則の規定が存在する場合においても、副業・兼業等を行おうとする社員に対して、個別の誓約書の提出を求め、社員の秘密保持義務や競業禁止義務の遵守を求めることが必要です。また、誓約書において、可能な限り、秘密保持義務の内容を具体的かつ明確に記載し、秘密保持義務に違反した場合には懲戒処分の対象になることを注意喚起する等の対策を検討するべきでしょう。

最後に

 厚生労働省による「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」の公表や改正、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の公表により、各企業における社員の職場における学び・学び直しの促進、副業・兼業等の促進を含めた取組が加速化することが予想されます。各企業におかれては、本ニュースレターで解説した労務コンプライアンス上の留意点も参考にしていただき、学び・学び直しの支援策の内容や、副業・兼業等を容認するか否かの検討、必要な体制整備等の準備を行っていただければと思います。

脚注一覧

※1
人材版伊藤レポート2.0については、NO&T Capital Market Legal Update No.11/NO&T Labor and Employment Law Update No.3「人材版伊藤レポート2.0により加速する人的資本経営における情報開示法務・労務コンプライアンス上の留意点」(2022年6月)にて紹介しておりますので、そちらもご覧ください。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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