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ニュースレター

銀行による銀行業高度化等会社への出資規制の改正

NO&T FinTech Legal Update FinTechニュースレター

著者等
佐々木修九本博延(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T FinTech Legal Update ~FinTechニュースレター~ No.6(2022年8月)
業務分野
キーワード
※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 2021年11月22日、「新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改正する法律」(令和3年5月26日法律第46号)(以下「本改正」といいます。)が施行されました。本改正の内容は多岐にわたりますが、本ニュースレターでは銀行による銀行業高度化等会社への出資規制の改正について取り上げます。

 また、2022年8月9日、金融庁は、「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の改正を実施し、他業銀行業高度化等会社の認可審査に係る考え方を示しました※1

銀行業高度化等会社に関する本改正のポイント

大きなポイントは以下の3点で、各類型の概要の比較については図表のとおりです。

  • 銀行又は銀行持株会社が子会社とすることができる銀行業高度化等会社の業務の範囲について、従来の「情報通信技術その他の技術を活用した当該銀行の営む銀行業の高度化若しくは当該銀行の利用者の利便の向上に資する業務」に加え、「地域の活性化、産業の生産性の向上その他の持続可能な社会の構築に資する業務」※2が追加され拡充しました。
  • 銀行業高度化等会社は以下のとおり分類され、一定の銀行業高度化等会社について緩やかな認可基準が適用されることになりました。

    • 国内の会社で、フィンテック会社や地域商社、あるいは本改正前は従属業務であった一定の業務を専ら営む会社(「一定の銀行業高度化等会社」※3※4
    • 国内の会社で、一定の銀行業高度化等会社以外の銀行業高度化等会社(「他業銀行業高度化等会社」※5
    • 外国の銀行業高度化等会社
  • 財務要件・ガバナンス等の一定の要件を満たすとして認定を受けた銀行持株会社(「認定銀行持株会社」)※6は、銀行業高度化等会社が営む業務のうち一定の業務(「特例銀行業高度化等業務」)を専ら営む会社を届出により子会社とすることができることになりました※7
他業銀行業高度化等会社 一定の銀行業高度化等会社 特例銀行業高度化等業務
業務内容 以下の業務を営む会社

  • ① 銀行業の高度化に資する業務
  • ② 利用者の利便の向上に資する業務
  • ③ 地域の活性化、産業の生産性の向上その他の持続可能な社会の構築に資する業務
  • ④ 上記①~③に資すると見込まれる業務
  • (a) 障害者雇用促進法上の認定に係る子会社、関係会社、関係子会社
  • (b) 以下の業務を専ら営む国内の会社(※1)

    • ① フィンテック
    • ② 地域商社(※2)
    • ③ 登録型人材派遣
    • ④ システム設計・プログラム販売等
    • ⑤ 広告宣伝
    • ⑥ ATM管理
    • ⑦ 成年後見制度、成年後見人等の事務支援等
    • ⑧ 上記①~⑦に関し必要となる業務であって、子会社対象会社が営むことができる業務
    • ⑨ 上記①~⑧に附帯する業務
  • (a) 障害者雇用促進法上の認定に係る子会社、関係会社、関係子会社
  • (b) 以下の業務を専ら営む国内の会社(※1)

    • ① フィンテック
    • ② 地域商社(※3)
    • ③ 登録型人材派遣
    • ④ システム設計・プログラム販売等
    • ⑤ 広告宣伝
    • ⑥ ATM管理
    • ⑦ 成年後見制度、成年後見人等の事務支援等
    • ⑧ 上記①~⑦に関し必要となる業務であって、子会社対象会社が営むことができる業務
    • ⑨ 上記①~⑧に附帯する業務
手続の種類・タイミング 5%超※8の議決権取得について事前認可 50%超の議決権取得(子会社化)について事前認可 認定銀行持株会社による50%超の議決権取得(子会社化)について事前届出
認可におけるいわゆる全損要件※9 全損要件あり 全損要件なし 認可不要

  • ※1 ①~⑨の業務の範囲内であれば、複数の業務を併営することができます※10。例えば、一定の銀行業高度化等会社として認可を得ることで、システム設計・プログラム販売等と広告宣伝の双方の業務を営む会社を子会社とすることが可能です。
  • ※2 「当該銀行の業務の健全かつ適切な運営に支障を来す著しいおそれがない」※11ことが求められますが、この要件については(i)物流への関与等について、実質的に在庫の保有リスクを伴わないこと、(ii)製造・商品加工への関与が基本的には想定されないことなどが求められると考えられます※12。なお、一定の銀行業高度化等会社でなく、他業銀行業高度化等会社の認可を取得して地域商社を営む場合には、在庫の規模・種類・性質等を考慮した上で在庫を適切に管理することができる態勢を整備することを前提に、在庫保有が可能となります※13
  • ※3 認定銀行持株会社制度により、届出で銀行持株会社の子会社とする地域商社については、保有できる在庫の金額に上限があります。具体的には、(i)銀行持株連結自己資本(国際行の場合にはTier1資本)の1%と(ii)当該地域商社の最終の貸借対照表上の純資産を比較し、(i)(ii)のいずれか低い方の金額が、当該地域商社の保有できる商品の在庫の上限となります※14

2022年8月9日適用の監督指針改正

 2022年8月9日、主要行等向けの総合的な監督指針及び中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針が改正されました。この改正には、他業銀行業高度化等会社に関する改正が含まれており、子会社認可に際しての収支要件について、3年以上の期間を収支予想期間とすることが可能である旨の明示などがなされていますが※15、他業銀行業高度化等会社の認可審査に関しても、以下のような規定が追加されています。

(主要行等向けの総合的な監督指針Ⅴ-3-3-4(2)③に以下追記※16
「他方、他業銀行業高度化等会社の業務については、当庁所管以外の一般事業会社が行う業務であることが多く、また、同会社の認可審査事項に全損規定(施行規則第17条の5の2第2項第2号)があることに鑑み、当該業務の実現可能性や実施予定の業務に係るリスク等の詳細を確認することまでは求められていないことに留意すること。」

 他業銀行業高度化等会社については、2021年11月の本改正により業務の外縁が広がったと考えられるところ、他業銀行業高度化等会社が営む業務は、金融庁が従来から所管する事業者の業務範囲を超える可能性があることを踏まえて、審査において、「当該業務の実現可能性や実施予定の業務に係るリスク等の詳細を確認することまでは求められていない」ことを明確化するため、上記の改正が行われたものと思われます。

今後の展望

 本改正を受けて銀行業高度化等会社の業務範囲は着実に広がりをみせています。2020年12月22日に公表された銀行制度WGの報告書※17においても言及されているように、銀行は、自らが持続可能なビジネスモデルを構築した上で、日本経済の回復・再生を支える「要」としての役割を果たすべく、創意工夫を凝らした新しいビジネスにチャレンジすることが期待されていると思われます。

 2022年8月9日に改正された監督指針では、特に他業銀行業高度化等会社に関して、その性質に鑑みた審査上の着眼点が規定されており、また、多様な他業銀行業高度化等会社の認可事例が出てきていることなどを踏まえると、銀行にとっては、新しいビジネスにチャレンジしやすい制度・環境が整いつつあると考えられます。

脚注一覧

※1
2022年8月9日金融庁「「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について)(https://www.fsa.go.jp/news/r4/ginkou/20220809/20220809.html

※2
銀行法16条の2第1項15号、52条の23第1項14号

※3
銀行法施行規則17条の4の3、34条の18の2参照

※4
なお、「一定の銀行業高度化等会社」には、障害者雇用促進法上の認定に係る子会社、関係会社、関係子会社も含まれます(図表参照)。

※5
銀行法施行規則17条の5第3項

※6
銀行法52条の23の2第6項

※7
特例銀行業高度化等業務を専ら営む会社は、銀行持株会社の子会社である銀行の子会社ではないことが必要となります。

※8
銀行持株会社の場合には15%超

※9
銀行法施行規則17条の5の2第2項2号は「当該申請に係る他業銀行業高度化等会社等に対する出資が全額毀損した場合であっても、申請銀行及びその子会社等(当該認可により子会社等となる会社を除く。)の財産及び損益の状況が良好であることが見込まれること。」とのいわゆる全損要件を定めています。銀行法施行規則17条の5第2項が定める通常の子会社認可の要件では全損要件は要件とされておらず、銀行業高度化等会社に係る認可取得において、全損要件は重要なポイントとなります。

※10
2021年11月10日金融庁「令和3年銀行法等改正に係る政令・内閣府令案等に関するパブリックコメントの結果等について」パブリックコメント回答No.108参照(https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20211110/01.pdf

※11
銀行法施行規則17条の4の3第2号

※12
中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針Ⅲ-4-7-4

※13
中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針Ⅲ-4-7-5(4)

※14
銀行法施行規則34条の19の9第2項、「銀行法施行規則第三十四条の十九の七第二項第一号並びに第三十四条の十九の九第一項第一号及び第二項の規定に基づき、金融庁長官が定める比率等を定める件」(金融庁告示第百号)第3条

※15
主要行等向けの総合的な監督指針Ⅴ-3-3(注1)及び中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針Ⅲ-4-7(注1)

※16
中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針Ⅲ-4-7-5(2)③にも同内容が追加されています。

※17
2020年12月22日「金融審議会 銀行制度等ワーキング・グループ報告‐経済を力強く支える金融機能の確立に向けて‐」(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20201222/houkoku.pdf

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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