
新木伸一 Shinichi Araki
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2022年12月16日の与党による「令和5年度与党税制改正大綱」(「与党大綱」)※1、同月23日の政府の「令和5年度税制改正の大綱」(「政府大綱」)※2の公表を受けて、持分を一部残したスピンオフ(株式分配)(「パーシャルスピンオフ」)を税制適格とする税制改正が行われることが明らかになった。
従来、スピンオフ実施法人がその完全子会社であるスピンオフ対象法人の株式の全てを一度に分配するスピンオフ(「100%スピンオフ」)のみが税制適格とされており、これがスピンオフ実施後も資本関係を維持したいと考える企業が利用を躊躇する一因となっていた。本改正は、スピンオフ実施後も一定の資本関係を維持しつつ、段階的に事業を切り出すための手法として、パーシャルスピンオフを活用する途を拓くものであり、重要な意義を有する。
本ニュースレターではパーシャルスピンオフに関する今回の税制改正の概要を紹介するとともに、本改正を受けた実務上のポイントを整理する。
パーシャルスピンオフに関する税制改正の概要は、与党大綱の公表を受けた「令和5年度税制改正大綱:スピンオフ税制、税制適格ストックオプション、スタートアップ税制の改正」(NO&T税務ニュースレター No.18(2022年12月))でも紹介しているが、その後に公表された政府大綱でもその内容に変更はない※4。
具体的には、以下の【図表】に掲げる要件を充足することで、スピンオフ実施法人が、その完全子会社の持分を一部(20%未満)残す形での株式分配(パーシャルスピンオフ)※5が税制適格となる。税制適格となるスピンオフには、スピンオフ対象法人株式の現物配当に当たって、スピンオフ実施法人の株主にみなし配当課税(法人税法24条1項3号、所得税法25条1項3号)が適用されることはなく、また、スピンオフ実施法人においてスピンオフ対象法人株式に係る譲渡損益課税も生じず、課税が繰り延べられることとなる(法人税法61条の2第8項、租税特別措置法37条の10第3項3号、同37条の11第3項)。
パーシャルスピンオフの税制適格要件は以下のとおりである。
【図表】政府大綱におけるパーシャルスピンオフの税制適格要件(下線部が100%スピンオフとの差異)
事業再編計画認定要件 | 2023年4月1日から2024年3月31日までの間に産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受けた法人(スピンオフ実施法人)が、特定剰余金配当※6として行う現物配当であること |
---|---|
完全子会社要件 | スピンオフ対象法人がスピンオフ実施法人の完全子会社であること |
分配要件 | 株式分配の直後に、スピンオフ実施法人が有するスピンオフ対象法人の株式の数が発行済株式総数の20%未満となること |
株式按分交付要件 | 株式分配によって、スピンオフ対象法人株式がスピンオフ実施法人の株主の持株割合に応じて交付されること |
従業者継続要件 | スピンオフ対象法人のスピンオフ直前の従業者の概ね90%以上がその業務に引き続き従事することが見込まれていること |
非支配要件 | スピンオフ実施法人が株式分配の直前に他の者による支配関係がなく、スピンオフ対象法人が株式分配後に他の者による支配関係があることとなることが見込まれていないこと |
主要事業継続要件 | スピンオフ対象法人の主要な事業が引き続き行われることが見込まれていること |
特定役員継続要件 | 株式分配前のスピンオフ対象法人の特定役員※7の全てが株式分配に伴って退任するものではないこと |
新株予約権等要件 | スピンオフ対象法人の特定役員に対して新株予約権が付与され、又は付与される見込みがあること等の要件※8を満たすこと |
現行制度と対比して、新たな税制適格パーシャルスピンオフの要件は、以下の4点がポイントとなる。
なお、今般の税制改正においては、令和4年度税制改正要望において経済産業省から要望の出されていた、完全子会社以外のスピンオフは対象となっていない。したがって、例えば、上場親会社が上場子会社株式をスピンオフする場合には、従前どおり税制適格要件を充足せず、スピンオフ実施法人である上場親会社、スピンオフ対象法人である上場子会社株式を受領することになるスピンオフ実施法人の株主の両者が課税されることに留意を要する。
以下、税制適格パーシャルスピンオフでポイントとなる点について、若干の留意点を整理する。
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