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2023年4月20日、シンガポール政府は、脱炭素社会を見据えた金融庁※1のネットゼロに向けたファイナンス(FiNZ)行動計画(「本行動計画」)を公表した※2。本行動計画は、アジアの温室効果ガスの排出量を吸収量及び除去量と均衡させて正味ゼロ(ネットゼロ)にするという脱炭素社会への移行と脱炭素活動を支援するためのファイナンス戦略を定めるものであり、2019年に開始した金融庁のグリーンファイナンス行動計画の範囲を拡大するものである。脱炭素社会への移行に係るファイナンスは、トランジション・ファイナンスとも呼ばれ、電力、不動産及び交通等の分野を着実に脱炭素化するための取組を支援する投資、貸付、保険及び他の関連ファイナンスを意味する。
近時、東南アジア域内のインフラや不動産投資等の個別案件においても、脱炭素化要素を投資や貸付の適格基準等として設定する案件をサポートする機会は増えつつあり、トランジション・ファイナンスの重要性は今後も増していくと見込まれる。
そこで、以下では、金融庁のネットゼロに向けたファイナンス行動計画について紹介する。
本行動計画は、次の4つの戦略目標から構成されている。
金融庁は、金融市場の参加者への意思決定のガイダンス提供及びグリーンウォッシング※3リスク対策という観点から、一貫性、比較可能性及び信頼性のある気候データ及び情報開示の促進を継続する。
金融庁は、金融機関による健全な環境リスク管理の実務の育成と、気候関連の金融リスク特定のための気候シナリオ分析及びストレステストの強化を継続する。また、金融機関による移行計画の監督にあたり、国際的な最善の実務を取り込んでいく。
金融機関による科学的根拠に基づく移行計画の採用を支援するため、金融庁は、信用ある域内の業界別の脱炭素化の取組支援について、国際エネルギー機関等の国際的パートナーと連携する。金融機関は、自らの温室効果ガス排出削減目標設定にあたり、また顧客の脱炭素化の取組について顧客と協働するにあたり、上記業界別の脱炭素化の取組を参照できるようになる。
金融庁は、脱炭素に向けた努力及び気候リスクの軽減を支援するため、革新的かつ信用性のあるグリーン及びトランジション・ファイナンスの手法と市場形成を促進する。
上述の目標達成のため、金融庁は、グリーンフィンテックの育成及び規模拡大を継続し、また労働者のスキル及び能力向上への投資を継続する考えを示している。
本行動計画を受け、脱炭素社会への移行と脱炭素活動の推進に関し、今後より具体的な計画や対応が講じられることが見込まれるため、今後の展開を注視する必要がある。
※1
シンガポール金融庁(Monetary Authority of Singapore)
※3
グリーンウォッシングとは、環境に配慮しているかのように装って、実際には実態が伴っていない活動を意味する。
※4
International Sustainability Standards Board (ISSB)
※5
1シンガポールドルを100円として計算している。
※6
Catastrophe bondsと呼ばれる大規模自然災害に係る一定のリスクを投資家に配分する証券を意味する。
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