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医療広告ガイドラインの改正案について

NO&T Health Care Law Update 薬事・ヘルスケアニュースレター(法律救急箱)

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 2024年1月31日に医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)の改正案(以下「本改正案」といいます。)が公表されました。医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告(医療広告)については、原則として、医療法及び厚生労働省の告示に規定されている一定の事項(広告可能事項)以外は広告することができませんが、医療法及び同法施行規則に定める広告可能事項の限定解除の要件を満たした場合には、例外的に広告可能事項以外の事項であっても広告できるものとされています。医療広告ガイドラインにおいては、そうした限定解除の要件の解釈が示されていますが、本改正案では、特に、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)において承認等されていない医薬品・医療機器・再生医療等製品や、承認等された効能・効果又は用法・用量とは異なる効能・効果又は用法・用量にて使用する医薬品・医療機器・再生医療等製品(未承認医薬品等)を自由診療で使用する場合において、限定解除の要件として明示すべき内容が、新たに追記されています。

 最近、もともと2型糖尿病治療薬等として承認されているGLP-1受容体作動薬について、適応外で美容・痩身・ダイエット目的で使用すること(GLP-1ダイエット)等、美容・痩身目的での医薬品等の適応外使用に関する違反広告やそれに起因する消費者トラブルが問題となっており、本改正案はこのような問題に対処することを念頭に置いたものであると考えられます。

医療広告ガイドライン改正案の背景

 薬機法上、製薬会社等が未承認医薬品等を流通させることは禁止されており、また、未承認医薬品等の広告を行うことも禁止されています(薬機法14条1項、同法68条等)。他方で、薬機法上も、医師法や医療法等の各種関連法規制上も、医師が自らの責任の下で未承認医薬品等を医療行為の中で使用すること自体は禁止されていません。そのため、従来から、一定の要件を満たす場合に限り、医療機関等が、未承認医薬品等を用いた医療行為についての広告を行うことも可能となっていました。

 今回の改正については、2024年1月29日に開催された厚生労働省の分科会(第2回医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会)において議論がなされており、当該分科会において使用された資料(「医療広告ガイドライン」及び「美容医療サービス等の自由診療におけるインフォームド・コンセントの取り扱いについて」の改正について)から、今回の改正の背景・経緯等を読み取ることができます。

 当該資料では、本改正案の背景として、以下の2点が記載されています。

  • ○  最近、痩身目的等のオンライン診療において、処方薬や副作用の説明等が不十分な事例による消費者トラブルが問題になっている。
  • ○  医療広告のネットパトロール事業では、GLP-1ダイエット関係の通報受付件数が増えている。また、GLP-1ダイエットに関するものも含め、未承認医薬品等を用いた自由診療に関するウェブサイト上の医療広告について、限定解除要件(通常必要とされる治療等の内容・費用・主なリスク・副作用等の明示)に加え、医療広告ガイドラインQAで示している未承認医薬品等に係る要件(国内未承認であること、入手経路等、国内の承認医薬品等の有無、諸外国における安全性等に係る情報の明示)を満たさないものが大多数である。

医療広告ガイドライン改正案の内容

 医療広告については、前述のとおり、医療法及び厚生労働省の告示(「医業、歯科医業若しくは助産師の業務又は病院、診療所若しくは助産所に関して広告することができる事項(平成19年厚生労働省告示第108号)」)により、原則として、診療科名、病院の名称・所在場所、診療日・診療時間等の一定の事項(広告可能事項)のみ広告をすることが可能とされていますが、下記の4要件を満たした場合には、例外的に広告可能事項の限定解除が認められ、広告可能事項以外の事項の広告が可能とされています。なお、③及び④については、自由診療について情報を提供する場合にのみ必要とされています。

  • ①  医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
  • ②  表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
  • ③  自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
  • ④  自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

 この点に関連して、本改正案では、未承認医薬品等を自由診療で使用する場合には、広告可能事項の限定解除の要件として、以下の各事項についても十分に記載する必要がある旨が追記されています。

  1. 未承認医薬品等であることの明示
  2. 入手経路等の明示
  3. 国内の承認医薬品等の有無の明示
  4. 諸外国における安全性等に係る情報の明示
  5. 未承認医薬品等は医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度の救済の対象にはならないことの明示

 上記(i)から(iv)の要件は、これまでも「医療広告ガイドラインに関するQ&A」において未承認医薬品等を自由診療に使用する場合における広告可能事項の限定解除の要件として必要となることが示されていましたが、本改正案では、同じ内容が明記されています。

 他方で、上記(v)の要件は、「医療広告ガイドラインに関するQ&A」では示されていない要件であり、本改正案において、新しく追加されたものです。従前より上記(i)から(iv)の各事項を明示していた医療機関等についても、本改正案によれば、新たに(v)の事項を明示する必要があるため、対応の要否・内容について確認しておく必要があります。(v)の要件について、より具体的には「国内で承認を受けて製造販売されている医薬品・医療機器(生物由来等製品である場合に限る。(v)において同じ。)・再生医療等製品による副作用やウイルス等による感染被害で万が一健康被害があったとき、公的な救済制度(医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度)があるが、未承認医薬品・医療機器・再生医療等製品の使用は救済対象にならないこと、また、承認を受けて製造販売されている医薬品・医療機器・再生医療等製品であっても、原則として決められた効能・効果、用法・用量及び使用上の注意に従って使用されていない場合は救済対象にならないことを明示すること」が求められています。

 なお、医療広告ガイドラインの改正と併せて、厚生労働省による通知(「美容医療サービス等の自由診療におけるインフォームド・コンセントの取り扱いについて」)についても、「わが国で承認等されていない医薬品・医療機器・再生医療等製品を用いた治療(承認等された効能・効果又は用法・用量が異なる医薬品等を用いた治療も含む。)に係る説明に当たっては、①未承認医薬品等であること、②入手経路等、③国内の承認医薬品等の有無、④諸外国における安全性等に係る情報及び⑤未承認医薬品等は医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度の救済の対象にはならないことについて、必ず当該施術前に、当該施術を受けようとする者に対して、丁寧に説明しなければならないこと。」という内容を追記することが検討されています(前掲 第2回医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会資料「「医療広告ガイドライン」及び「美容医療サービス等の自由診療におけるインフォームド・コンセントの取り扱いについて」の改正について」)。厚生労働省の通知は、一般市民との関係において、それ自体が直接的に法的拘束力を持つものではありませんが、民事訴訟において説明義務違反の有無が争われた際等に、通知の内容に従っていたか否かが考慮要素の一つとして参酌される可能性もあり得ますので、上記通知の改正との関係においても、対応について検討しておく必要があると思われます。

パブリックコメントについて

 今回公表された医療広告ガイドラインの改正内容について、再考を促したい場合や、疑義を解消したい場合、その他規制当局に意見を述べたい場合には、パブリックコメントを提出することが可能です。コメントの受付締切期限は2024年2月29日23時59分に設定されています。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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