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米国輸出管理規制アップデート ~ファーウェイとSMIC向け輸出許可申請の運用状況~

NO&T U.S. Law Update 米国最新法律情報

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 2021年10月21日、米国下院外交委員会(House Foreign Affairs Committee)の共和党グループは、米国商務省(the US Department of Commerce)から提出された中国の華為技術(ファーウェイ)と中芯国際集成電路製造(Semiconductor Manufacturing International Corporation、「SMIC」)向けの輸出許可申請の承認状況に関する報告書を公表しました※1。同報告書は、2020年11月9日から2021年4月20日までの約5カ月間に、米国商務省産業安全保障局(the US Department of Commerce’s Bureau of Industry and Security、「BIS」)が扱ったファーウェイとSMIC向けの輸出許可申請の状況についてまとめた内容となっています。

背景

 BISは、米国の国家安全保障や外交政策に反する活動に関与していると考えられる個人、法人及び団体等のリストであるエンティティ・リストを整備しています※2

 ファーウェイについては、2019年5月にファーウェイ及びその関連会社がエンティティ・リストに追加されて以降、2020年8月のエンティティ・リストの改正等により、ファーウェイ及び計152社のファーウェイ関連会社がエンティティ・リストに掲載されるに至っています。また、規制の潜脱を防ぐ目的で、米国輸出管理規則(Export Administration Regulations、「EAR」)の規制対象である特定の輸出規制品目分類番号(Export Control Classification Number、「ECCN」)に該当する技術・ソフトウェアの直接製品等に関する特別ルール(ファーウェイ向け直接製品ルール※3)も定められています。SMICについても、2020年12月に、SMIC及びその10の関連会社がエンティティ・リストに掲載されました。

 これらの措置により、EAR対象の品目をファーウェイ・SMICに輸出・再輸出・国内移転等する場合はBISの事前許可が必要となり、申請対象となる品目等によっては、当局による検討方針として”Presumption of denial”(原則不許可)という扱いとなることになっています。なお、ファーウェイ向け直接製品ルール及び当該ルールに関連してBISが公表したFAQsの概要、並びに、SMICのエンティティ・リストへの掲載については、「米国輸出管理規制アップデート~エンティティ・リストの更新とFAQsの公表~」(NO&T U.S. Law Update 米国最新法律情報 No. 53)でご紹介しています。

報告書の内容

 公表された商務省の報告書によれば、2020年11月9日から2021年4月20日までの約5カ月間に、BISが扱ったファーウェイとSMIC向けの輸出許可申請の状況は以下のとおり※4であり、期間中に行われた多くの申請が承認されていたことが明らかとなりました。

ファーウェイ向け SMIC向け
許可申請件数 169 206
承認 113(69.3%) 188(91.3%)
承認案件の合計額 約614億ドル 約419億ドル
差し戻し※5 48(28.4%) 17(8.3%)
却下 2(1.2%) 1(0.5%)

 米国下院外交委員会のマイケル・マコール氏(Michael McCaul)(共和党)は「悪意のある行動をする者に対する制裁やその他の手段に加えて、輸出管理は、技術及び物品の敵対勢力への移転を制限するための基礎的な制度である。」、「輸出管理において、より透明性が高く厳格な執行が必要である。」とのコメントを発表しています。

 他方、BISは、上記報告書の公表について、ファーウェイやSMIC向けの輸出が許可されたことは、それ自体は、BISのライセンスポリシーの有効性について正確な結論を導き出したり、また、これら2社向けの輸出について意味のある洞察を導くものではないと指摘しています。BISは、エンティティ・リストに掲載された特定の中国企業に関する許可申請データを任意の期間のみ切り取って公表することは、許可プロセスが政治化したり、BISその他の機関による安全保障上の判断を誤って伝える危険があるとのコメントを公表しています。

今後に向けて

 上記報告書が公表された2021年10月21日には、BISは、サイバーセキュリティ関連技術の輸出管理を強化するためにEARの改正を定めた暫定最終規則(Interim Final Rule)を公表しており、米国外の企業にとっても影響の大きい制度の整備がなされています。このような制度面の変化に加え、今回の報告書の公表を踏まえた制度の運用面への影響等についても、引き続き最新の動向を注視する必要があります。

脚注一覧

※3
(a)EARの規制対象である特定のECCNに該当する技術・ソフトウェアの直接製品や(b)EARの規制対象である特定のECCNに該当する米国原産の技術・ソフトウェアの直接製品であるプラント(又はそれを主要な構成部分とするプラント)により米国外で製造された製品について、(1)ファーウェイが製造、購入若しくは発注した部品、構成部分若しくは設備の製造・開発に使用されること、又は(2)ファーウェイが購入者、中間荷受人、最終荷受人若しくはエンド・ユーザー等として取引に関与することを知りながら輸出・再輸出等を行うことを許可の対象とするルール。

※4
各数値は、公表された報告書に記載の数値を引用しています。

※5
BISは、以下に掲げる場合、輸出許可申請を差し戻すことがあります。すなわち、①申請者自身が輸出許可申請の差し戻しを要求する場合、②許可の例外(License Exception)の適用がある場合、③許可申請の対象である品目が商務省の管轄ではない場合、④許可申請に必要書類を欠く不備がある場合、⑤申請者が、許可申請の審査を進めるために必要な書面のリクエストに応じない場合。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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