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ニュースレター

米国による1974年通商法301条追加関税の維持及び強化

NO&T International Trade Legal Update 国際通商・経済安全保障ニュースレター

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1. はじめに

 米国政府は2024年5月14日、2018年から課していた1974年関税法301条に基づく対中追加関税の4年後の法定レビューの結果に関する報告書※1、メモランダム及びプレスリリース※2を発表し、現状賦課している当該追加関税を維持するとともに、中国産電気自動車(EV)への追加関税を現行の4倍の100%に引き上げるなどの追加的な措置を課す方針を明らかにした。つづいて、米国通商代表部(USTR)は、2024年5月22日、プレスリリース※3を発表し、当該措置の詳細を示すUSTR連邦官報公告文※4についてアナウンスを行った。USTRは、法定レビューに際して、約1500のパブリックコメントを受領し、検討していた。今回の新たな追加関税措置は、早い品目で2024年8月1日から発動される。

 共和党トランプ政権に始まった対中貿易強行策は民主党バイデン政権でも維持されてきたが、バイデン政権下では、米国の労働者とビジネスを守り、戦略的産業分野の国内回帰と投資誘因、そして供給網強靱化を進めるための巨額の予算を伴う政策も並行して力強く推進されてきた※5

 今回の方針の発表は、両政権下で推進されてきたこうした政策の延長上にあり、また、さらにそれを一部の戦略的品目について強化するものといえるが、中国からの強い反発も招いていることから、日系企業を含む各国のビジネス環境への影響が懸念される。

2.301条追加関税の現状

 1974年関税法301条は、米国が当事国となっている貿易協定に違反したり、「不当な」又は「不合理な」行為により米国の通商を制限する外国に対して、米国が一方的に貿易措置を課す法的手段を規定している。USTRは、2018年3月当時のレポート※6で、米国企業が有する技術の中国側への移転を狙った中国政府による様々な慣行(例えば、合弁要求や外資出資規制、行政慣行、技術ライセンス要求、最先端技術を有する米国企業への国主導の出資や買収)やコンピューターネットワークへの不法な侵入による米国企業の営業秘密の取得といった、中国による「技術窃盗」を問題視し、その是正を迫るため、追加関税を累次にわたって賦課してきた。

 現行の追加関税賦課対象品目は非常に多岐にわたっているが、概要は表1のとおりである。

表1:現行の301条追加関税措置

賦課開始日 品目数 相当貿易額 追加関税率
List 1 2018.7.6 818 340億ドル 25%
List 2 2018.8.23 279 160億ドル 25%
List 3 2018.9.24
→2019.5.10
5745 2000億ドル 10%
→25%
List 4A 2019.9.1
→2020.2.14
3243 3000億ドル 15%
→7.5%
List 4B 2019.12.15 555 15%
(賦課無期延期中)

(出典)USTR及びホワイトハウスの資料並びに米国連邦官報等を基に作成

 なお、これらのリスト毎の現行の追加関税について、現在、一部の対象品目(429品目)は、2024年5月31日までの予定で追加関税の対象からの除外が認められている。

 USTRは、2024年5月24日のプレスリリース※7で、これら除外の有効期限を一律に2週間延長し2024年6月14日とするとともに、除外が認められていたうちの102品目についてはその日をもって除外を終了することを決定した。また、それ以外の品目については、有効期限が1年間延長され、2025年5月31日まで引き続き除外されることが決定された。一部の除外が打ち切られたのは、関係企業等により、たとえ除外を延長しても、近い将来に中国以外からの調達に切り替えることが示されなかったり、中国以外の地域からの調達が不可能であることが示されなかったりしたことによる。

 今回の決定により除外対象ではなくなる品目については、対象となる完成品ないし投入物の米国への輸入価格は上昇し、関連する製品の米国内での販売や製造は落ち込む可能性があるため、注意が必要である。

3.今回発表された措置

 今回米国政府が発表した措置は、(1)追加関税措置の維持と強化、(2)一部の産業用工作機械についての除外手続の設定、(3)太陽電池製造設備に対する適用除外の設定、である。

(1) 追加関税措置の維持と強化

 今回のUSTRからの報告書によれば、2018年から実行されてきた301条追加関税措置は、中国に技術移転を強要する慣行を一部是正させたことに加え、米国企業に中国以外からの調達を促せたことなどにより、米国企業の中国のそうした慣行に対する露出を軽減することができたことなど、一定程度措置が奏功したと評価されている。その一方で、中国による是正は依然として十分とはいえず、中国によるサイバー空間での技術や知財の窃盗は激しさを増していると指摘されている。

 こうした慣行の更なる是正を中国に促すため、今回、米国政府は、USTRからの推奨に基づき、現行の301条追加関税措置(上記表1参照)を維持することとし、さらに、下記表2記載の各対象産品(382品目、約180億ドル相当)について、追加関税の引き上げと新規賦課を行うこととした。対象品目の具体的な関税分類番号(HTSUSコード)は、USTR連邦官報公告文※8のAnnex Aに列挙されている。

表2:今回追加関税が強化されることが表明された対象品目

対象品目 現行税率 変更後 時期*1 背景事情(ホワイトハウス)
鉄鋼・アルミニウム 0~7.5% 25% 2024年 中国の非市場経済型過剰生産
半導体 25% 50% 2025年 中国のレガシー半導体市場でのシェアと生産能力の急拡大
EV 25% 100% 2024年 中国の補助金・非市場慣行による過剰生産
バッテリー・バッテリー部品・重要鉱物
EV用リチウムイオンバッテリー 7.5% 25% 2024年 EV用バッテリー供給網の一部で80%を超える中国の市場支配
EV用以外のリチウムイオンバッテリー 7.5% 25% 2026年
バッテリー部品 7.5% 25% 2024年
天然黒鉛・永久磁石 0% 25% 2026年
その他の指定重要鉱物 0% 25% 2024年
太陽電池 25% 50% 2024年 グローバル太陽電池供給網の一部の80-90%を支配する中国の不公正な慣行
船舶対陸上クレーン 0% 25% 2024年 シェアの過度な集中を招いている中国の不公正な慣行
医療用品
注射器・注射針 0% 50% 2024年 COVID-19パンデミック時への反省と中国産のダンピング品
個人用保護具(レスピレーターマスクやフェイスマスクの一部を含む) 0~7.5% 25% 2024年
医療用ゴム手袋・手術用ゴム手袋 7.5% 25% 2026年

*1 具体的な引き上げ発動時期は、2024年分は同年8月1日、2025年及び2026年分はそれぞれの1月1日だとされている。

(出典)USTR及びホワイトハウスの資料を基に作成

(2) 一部の産業用機械についての除外手続の設定

 上記の追加関税強化策と同時に、米国内の産業振興に不可欠な産業用機械類について、除外申請プロセスが設定される。これは、HTSUSコード84類及び85類の広範な用途にわたる機械類が対象であり、USTR連邦官報公告文※9のAnnex Bに対象品目が列挙されている。除外申請手続の詳細は別の公告で示される。除外申請が認められれば、2025年5月31日まで有効となる。

(3) 太陽電池製造設備に対する適用除外の設定

 さらに、19種類の特定されたスペックの太陽電池製造用装置については、戦略的分野における米国内での製造を増強する観点から、追加関税対象から無条件であらかじめ一定期間除外される(2025年5月31日まで)。対象となる装置は、USTR連邦官報公告文※10のAnnex Cに列挙されている。

4.パブリックコメントの募集

 利害関係をもつ企業、産業界、業界団体などは、今回の措置についてのパブリックコメントを、2024年5月29日から2024年6月28日までの間、所定のフォームによりUSTRに対して提出することができる。法律事務所が企業等の代理人として意見を提出することもできる。意見のうち営業秘密にかかる部分はその旨指定すれば公表しない扱いとすることができる。求められている意見の内容は、概要以下のとおりである。

  • Annex Aの品目: 内容が中国の不公正慣行を是正するのに有効かどうか、米国経済や消費者への影響、新たな追加関税対象品目のカバー範囲の妥当性等。
  • Annex Bの品目: 列挙されている除外申請対象品目の範囲の妥当性等。
  • Annex Cの品目: 列挙されている除外対象品目の範囲及びその品目の記述の妥当性。

5.措置の影響と対応

(1) 今回の措置によるあり得る影響と対応

 今回の追加関税の維持及び強化措置による影響は、対象産品に関係する企業にとっては、小さくないと考えられる。

  • 対象中国産品の対米輸出への影響:追加関税が強化される対象品目(上記表2参照)については、中国産品の米国への輸出に対する直接的な価格面での影響は大きい。また、追加関税を実際に引き上げるタイミングの直前期は、米国への輸入量が増大する可能性がある。
  • 米国以外の市場への対象中国産品の流入:追加関税引き上げ後、米国市場への流入が難しくなる中国産の対象製品は、日本を含めた米国以外の諸国・諸市場に流入する可能性が高い。そのため、今回の対象産品と競合する製品を製造し内外で販売を行っているメーカーや商社は、当該米国外の国・市場に流入する中国産の競合品の輸入量と価格の変化に注意し、不当なダンピング輸出が行われていないか等にも留意しながら、戦略的に販売やサプライの調節を行うことが必要になる。代替需要を求めて日本市場へのEVを始めとする対象中国産品の流入量増大の可能性にも備える必要がある。
  • 米国市場における中国産以外の競合品の相対的優位:反対に、米国市場においては、EVを始めとする中国産の対象品目が米国市場から当面締め出される結果、日本産を含め中国産以外の対象産品が米国市場において相対的に競争力が高まることが予想される。
  • 迂回輸出国と米国が見なす国からの対米関連輸出に対する追加関税措置:今回の本措置とは別に、米国政府は中国からの迂回輸出先と見ている東南アジア等からの米国への不公正な輸出に対しても、貿易措置(アンチダンピング税や補助金相殺関税を含む)を強化する姿勢を示している。東南アジア他の海外製造拠点で製造し、米国に輸出する対象産品についても、想定外の多額の追加特殊関税負担を避けるため、中国産の投入物の使用状況などに注意したサプライチェーン管理が必要となる。

(2) 産業用機械類についての除外申請の活用

 今回設定される新たな除外申請プロセス(上記3. (2))の対象になる産業用機械類のリストに、自社が関係する製品が含まれる場合には、除外申請の必要性の有無を速やかに検討する必要がある。

 これまでの一連の301条追加関税措置における除外申請手続の例によれば、申請者は申請品目を除外すべき理由を申請書に具体的に記載する必要がある。申請者は、当該産品が中国からのみ入手可能なのかどうか(第三国からの調達ができないのか)、「中国製造2025」政策関連製品でないかどうかなどの事項を、詳しく説明する必要がある。除外申請に関する手続は、追って官報で公告される。

6.まとめ ~国際通商ルールとの関係、今後の見通し~

 今回の追加関税措置は、2024年秋の米国大統領選を睨んだ政治的な動機づけによるものだという見方もある。そもそも、1974年通商法301条は、米国が他国によるWTO協定違反やそれ以外の不公正だと見なす貿易慣行を一方的に認定することにより、制裁措置として、米国がWTO協定などで他の加盟国に約束している関税の上限税率(譲許税率)を超える追加関税を一方的に課す制度である。米国は、かつて1980~90年代、半導体、自動車補修用部品などについて、日本に対しても調査を実施した経緯がある。

 301条は、差別的に関税を高めるものであり、世界貿易機関(WTO)の定める紛争解決のルールに則さずに一方的追加関税を行う制度であることから、これまでにも度々、WTOの場において、制度自体や個別の追加関税措置が争われてきた。WTOの場では、かつて、その制度自体は条件付きでWTO協定違反とはならないと判断されたことがある※11。その一方で、今回の米国政府の発表で維持することが示されたList 1及びList 3(表1参照)の各追加関税措置をめぐっては、2018年、中国が米国をWTOに提訴し、WTOのパネルは、2020年、米国の措置正当化の主張を退け、当該措置はWTO協定(GATT1.1条、2.1(a)及び2.1条(b))に違反するとの判断を行った※12。これに不服がある米国は上級委員会に上訴したが、上級委員会は現在米国の委員任命ブロックにより委員が不足し機能不全に陥っているため、上訴審理がストップし、結論が出ない状態のままである。この状態は今後もしばらく続くとみられている。

 今回の米国の措置に対抗する姿勢を見せている中国、そして、別の切り口からEVなどの中国産品に対して貿易措置を検討しているEUがあり、日本は、そうした諸国の狭間におかれている。各国が実行する貿易措置により、物品の国際的な流れる方向、価格、数量などが変動することから、取引主体である企業としてはそれらを予測した行動が求められている。また、その場その場の状況に応じて、国際通商ルールに則して取引主体の利益を守るために利用できる政府レベルで実行できる通商措置(アンチダンピング税、補助金相殺関税や、セーフガード関税など)もある。

 対象産品を取引する主体の視点からは、まずは「受け身」の分析として措置により自社が関連する原材料や製品群にどのような影響が及ぶのかを世界的な通商環境を踏まえて大局的に分析し、サプライチェーンの調整などにより対応していくことに加え、他国ではより活発な政府を巻き込んだ「攻め」対応の可能性も状況によっては併せて検討していくことが、現在の不安定な国際ビジネス環境においては重要であろうと思われる。

脚注一覧

※7
USTRプレスリリース、2024年5月24日、”USTR Extends Certain Exclusions from China Section 301 Tariffs

※8
前注4参照。

※9
前注4参照。

※10
前注4参照。

※11
WTOパネル報告書、1999年12月22日、US — Section 301 Trade Act (WT/DS152/R)
https://docs.wto.org/dol2fe/Pages/SS/directdoc.aspx?filename=Q:/WT/DS/152R.pdf&Open=True

※12
WTOパネル報告書、2020年9月15日、US — Tariff Measures (China) (WT/DS543/R)
https://docs.wto.org/dol2fe/Pages/SS/directdoc.aspx?filename=q:/WT/DS/543R.pdf&Open=True

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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