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ニュースレター

ネイチャーポジティブの実現に向けた生物多様性増進活動促進法の成立

NO&T Infrastructure, Energy & Environment Legal Update インフラ・エネルギー・環境ニュースレター

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1. はじめに

 今通常国会で「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律」(以下「生物多様性増進活動促進法」という。)が成立し、2024年4月19日に公布された。生物多様性増進活動促進法は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。

 2022年12月のCOP15で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を踏まえ、政府は、昨年3月、生物多様性基本法に基づき、「2030年ネイチャーポジティブ」の実現を一つの柱とする「生物多様性国家戦略2023-2030」(以下「生物多様性国家戦略」という。)を策定した。また、近時のTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の流れも受け、企業経営においても生物多様性や自然資本の重要性が一段と意識されるようになっている。

 今回成立した生物多様性増進活動促進法は、ネイチャーポジティブの実現のためには、政府の取組みだけでなく、民間などによる生物多様性の保全に貢献する活動を促進することが必要であるとの環境大臣答申に基づき、中央環境審議会が2024年1月30日付で行った答申「自然再興の実現に向けた民間等の活動促進につき今後講ずべき必要な措置について」(以下「中央環境審議会答申」という。)の内容を踏まえたものである。

 以下本稿では、中央環境審議会答申も踏まえつつ、生物多様性増進活動促進法を概説する※1

2. 「2030年ネイチャーポジティブ」とは

1. 生物多様性国家戦略における5つの基本戦略

 生物多様性国家戦略が掲げる「2030年ネイチャーポジティブ」とは、2030年までに「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること」(ネイチャーポジティブ:自然再興)を意味する。

 この目標を実現するために、生物多様性国家戦略は、以下の5つの基本戦略に沿った取組みを行うものとしている(同25頁~26頁参照)。

戦略の概要

基本戦略1
生態系の健全性の回復

基本戦略2
自然を活用した社会課題の解決

基本戦略3
ネイチャーポジティブ経済の実現

基本戦略4
生活・消費活動における生物多様性の価値の認識と行動(一人一人の行動変容)

基本戦略5
生物多様性に係る取組を支える基盤整備と国際連携の推進

 特に、基本戦略1では、昆明・モントリオール生物多様性枠組が掲げる2030年ターゲットの一つである「30by30目標」(2030 年までに陸域と海域の 30%以上を保全するという目標)の達成に向け、保護地域に加え、OECM (Other Effective area-based Conservation Measures:保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)による保全の取組みを進め、普通種を含めた生物群集全体の保全を図りつつ、生物多様性への負荷軽減と質の向上を図ることで、気候変動等への強靱性(レジリエンス)にも寄与する生態系の健全性を回復させる旨が示された。

2. OECMと自然共生サイト

 生態系の健全性の回復には、場所に紐付いた取組みを推進することが必要であり、それゆえに、国立公園等の保護地域の拡張のみならず、OECMの設定が必要であると考えられている※2。また、里地里山、社寺林、企業緑地や都市の緑地といった身近な自然や、農林水産業を通じて生態系の保全が図られてきた場所などは、国だけでなく、企業、団体、個人、都道府県や市町村などの地方公共団体(以下「民間等」という。)の自主的な取組みによって保全がなされている場合も多い※3。そのため、保護地域やOECMによる生態系のネットワーク化を図り、生物多様性の保全を推進することが重要となるのである※4。OECMに関する議論は、生態系の健全な回復に際し民間等の取組みがいかに重要かを再認識させるものであった。

 OECMの設定及び管理の促進に向け、2022年9月から有識者会議(OECMの設定・管理の推進に関する検討会)での検討が進められてきた。環境省は、2023年度から、企業等からの申請に基づいて、民間の取組み等によって生物多様性の保全が図られている区域を「自然共生サイト」として認定し、自然共生サイトのうち保護地域との重複を除いた区域を「OECM」として国際データベースに登録する仕組みを本格運用している。自然共生サイトの認定数は、初回の2023年度前期が122ヵ所※5、2回目の2023年度後期が62ヵ所※6に上った。

3. 生物多様性増進活動促進法の制定経緯と概要

1. 制定経緯

 中央環境審議会答申は、生態系の健全な回復に際して民間の取組みが重要な意義を有することを前提に、生物多様性の損失を抑える施策とその向上を図る施策の両方を推進することで、ネイチャーポジティブの実現に向けた生態系の健全性回復に繋がる「場所と紐付いた民間等の活動」を促進する必要性を提示した※7。また、国には、自然共生サイトの運用も踏まえ、民間等が積極的に生物多様性保全の活動に取組み、またそのことが、きちんと世の中に評価され、活動の継続性に繋がるよう、法制化に向けた対応が求められているとした※8

 その上で、①場所と紐付いた活動計画の国による認定制度の導入、②活動の対象範囲、計画策定主体と活動内容のあるべき方向性、③認定計画に基づく活動の継続性及び質の担保への対応策、④関係する分野・施策との連携強化、⑤活動を促進するための方策の推進を答申の柱とした。政府は、中央環境審議会答申を踏まえ、2024年3月5日に法案を閣議決定して今通常国会に提出し、同年4月12日、生物多様性増進活動促進法として成立した。生物多様性増進活動促進法は、公布の日(2024年4月19日)から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される(附則第1条)※9

2. 生物多様性増進活動促進法の要点

(1) 増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の認定制度の創設

 生物多様性増進活動促進法の最大のポイントは、①企業等が作成する増進活動実施計画と、地域の多様な主体と連携し取りまとめ役としての役割が期待される市町村作成の連携増進活動実施計画の認定制度を設け、②認定を受けた者に対し、その活動内容に応じて、自然公園法に基づく手続等のワンストップ化・簡素化を可能とする制度を設けたことである。まず、生物多様性増進活動促進法は、「地域生物多様性増進活動」(第2条第3項)に関する増進活動実施計画の認定制度と、市町村を対象とする「連携地域生物多様性増進活動」(第2条第4項)に関する連携増進活動実施計画の認定制度をそれぞれ定めている。

  1. 「地域生物多様性増進活動」とは、里地、里山その他の人の活動により形成された生態系の維持又は回復、生態系の重要な構成要素である在来生物(外来生物法※10に定義される。)の生息地又は生育地の保護又は整備、生態系に被害を及ぼす外来生物(外来生物法に定義される。)の防除及び鳥獣の管理その他の地域における生物の多様性の増進のための活動をいう。地域生物多様性増進活動を行おうとする者(連携地域生物多様性増進活動を行おうとする市町村を除く。)は、単独で又は共同して、主務省令で定めるところにより、地域生物多様性増進活動の実施に関する計画(増進活動実施計画)を作成し、主務大臣の認定を申請することができる(第9条第1項)。増進活動実施計画には、①地域生物多様性増進活動の内容及び実施時期、②地域生物多様性増進活動の区域、③地域生物多様性増進活動の目標、④地域生物多様性増進活動の実施体制及び⑤計画期間を記載する必要がある(同条第2項)。
  2. 他方、「連携地域生物多様性増進活動」とは、地域生物多様性増進活動のうち、地域の自然的社会的条件に応じ、市町村と地域における多様な主体が有機的に連携して行うものをいう。その策定主体は、市町村のみである。すなわち、連携地域生物多様性増進活動を行おうとする市町村は、単独で又は共同して、基本方針(第8条に従い主務大臣が策定する地域生物多様性増進活動の促進に関する基本的な方針)に基づき、主務省令で定めるところにより、当該市町村の区域における連携地域生物多様性増進活動の促進に関する計画(連携増進活動実施計画)を作成し、主務大臣の認定を申請することができる(第11条第1項)。連携増進活動実施計画には、①連携地域生物多様性増進活動の内容及び実施時期、②連携地域生物多様性増進活動の区域、③連携地域生物多様性増進活動の目標、④連携地域生物多様性増進活動の実施体制、⑤上記①~④に掲げるもののほか、連携地域生物多様性増進活動の促進のために必要な事項並びに⑥計画期間を記載する必要がある(同条第2項)。
  3. 申請を受けた主務大臣は、関連する増進活動実施計画又は連携増進活動実施計画が以下の基準に適合すると認めた場合、これを認定する(第9条第3項、第11条第8項)。
認定基準
  1. 基本方針に照らして適切なものであり、かつ、当該(連携)地域生物多様性増進活動を確実に遂行するために適切なものであること。
  2. 当該(連携)地域生物多様性増進活動がその実施区域における生物の多様性の維持又は回復若しくは創出に資するものであること。
  3. 当該(連携)地域生物多様性増進活動に自然公園法上の「生態系維持回復事業」(同法第2条第7号)が含まれる場合、同法第39条第2項又は第3項の環境大臣の確認又は認定が得られる場合に該当すること。
  4. 当該(連携)地域生物多様性増進活動に自然環境保全法上の「生態系維持回復事業」が含まれる場合、同法第30条の3第2項又は第3項の環境大臣の確認又は認定が得られる場合に該当すること。
  5. 当該(連携)地域生物多様性増進活動に絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(以下「種の保存法」という。)上の保護増殖事業(同法第6条第2項第6号)が含まれる場合、同法第46条第2項又は第3項の環境大臣の確認又は認定が得られる場合に該当すること。
  6. 当該(連携)地域生物多様性増進活動に外来生物法に定義される「特定外来生物」の防除が含まれる場合には、市町村が行う防除にあっては同法第17条の4第1項の確認をすることができる場合に、地方公共団体以外の者が行う防除にあっては同法第18条第1項の認定をすることができる場合に該当すること。
  7. その他主務省令※11で定める基準に適合すること。
(2) 関連許認可のワンストップ化等

 (連携)増進活動実施計画に、自然公園法、自然環境保全法、種の保存法、鳥獣保護法、外来生物法、森林法、都市緑地法に基づく許認可等を必要とする行為(開発行為など)が含まれている場合、本来、当該行為を実施しようとする者は、別途自然公園法などに従って必要となる許認可等を得なければならないはずである。一方、生物多様性増進活動促進法は、(連携)増進活動実施計画の実施に典型的に付随すると考えられる一定の許認可等について、(連携)増進活動実施計画の認定を別途取得することを不要とする仕組みを設けた(第15条乃至第21条)。

(3) 認定連携市町村による生物多様性維持協定

 主務大臣によって連携増進活動実施計画の認定を受けた市町村(認定連携市町村)は、認定連携増進活動実施計画の実施のため必要があると認めるときは、認定連携活動実施者及びその認定連携増進活動実施計画に係る実施区域(第11条第2項第2号に掲げる区域であって、海域を除き、生物の多様性が維持されている区域に限る。)内の土地又は木竹の所有者又は使用及び収益を目的とする権利(臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。)を有する者(「土地の所有者等」と定義される。)との間で、生物多様性維持協定を締結し、当該土地の区域内の連携地域生物多様性増進活動を行うことができる(第22条第1項)。これにより、認定連携市町村による長期的・安定的な連携地域生物多様性増進活動の実施の促進が期待される。

 生物多様性維持協定には、①生物多様性維持協定の目的となる土地の区域(生物多様性維持協定区域)、②生物多様性維持協定区域内の連携地域生物多様性増進活動に関する事項、③生物多様性維持協定の有効期間及び④生物多様性維持協定に違反した場合の措置が規定される(同条第1項各号)。また、生物多様性維持協定の内容は、(i) 生物の多様性の維持を図るために有効かつ適切なものであること、(ii) 土地及び木竹の利用を不当に制限するものでないこと、並びに (iii) 上記①乃至④に掲げる事項について主務省令で定める基準に適合するものであること、という各基準に適合するものでなければならない。

 生物多様性維持協定の成立には、生物多様性維持協定区域内の土地の所有者等の全員の合意が必要であり(第22条第2項)、その内容は予め縦覧に供され、関係者による意見書提出の対象となる(第23条)。生物多様性維持協定が締結されると、認定連携市町村は、主務省令で定めるところにより、その旨を公告し、かつ、その写しを公衆の縦覧に供するとともに、生物多様性維持協定区域である旨を当該区域内に明示しなければならない(第24条)。このような手続を経て成立した生物多様性維持協定は、その公告のあった後において当該生物多様性維持協定区域内の土地の所有者等となった者に対しても、その効力を有する(第26条)。

4. 最後に

 地域生物多様性増進活動を実施する企業等にとっては、増進活動実施計画の認定に伴う許認可等のワンストップ化・簡素化という法律に定められた恩恵だけでなく、増進活動実施計画の認定及びそれに基づく活動の遂行を情報開示していくことで、自社の取組みをステークホルダーに示す好機会となることも期待できるであろう。生物多様性増進活動促進法に基づく(連携)増進活動実施計画の認定制度が積極的に活用され、生物多様性の維持・回復が促進されることが期待される。

脚注一覧

※1
なお、従来の生物多様性に関する議論状況については、当事務所ESGプラクティスチーム(編著)『ESG法務』(金融財政事情研究会、2023年9月)35頁以下及び本ニュースレターNo.22宮下=渡邉=星野「生物多様性の保全と企業活動 ~COP15/昆明・モントリオール生物多様性枠組、TNFD~」(2023年2月)を参照されたい。

※2
中央環境審議会答申1頁

※3
中央環境審議会答申2頁

※4
中央環境審議会答申1頁

※7
中央環境審議会 自然環境部会 自然再興の実現に向けた民間等の活動促進に関する小委員会(第3回)資料3「自然再興の実現に向けた民間等の活動促進につき今後講ずべき必要な措置について(答申)【概要版】」

※8
中央環境審議会答申3頁

※9
生物多様性増進活動促進法の施行に伴い、地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律(平成22年法律第72号)は廃止される。

※10
特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律

※11
本書執筆時において、主務省令の内容は開示されていない。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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