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ニュースレター

欧州の企業持続可能性DD指令(CSDDD)の正式採択と日本企業に与える影響

NO&T Compliance Legal Update 危機管理・コンプライアンスニュースレター

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1. はじめに

 EUでは、企業に人権・環境デュー・ディリジェンスを義務付ける企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)の成立に向けて長らく審議されてきましたが、対象企業の条件を緩和した案において本年4月24日に欧州議会による最終投票がなされ、5月24日にEU理事会における正式な承認を経て採択が最終決定されました。

 CSDDDは以下の売上高の要件を満たす日本企業が直接適用対象となるほか、直接的には適用対象とならない日本企業にとっても、取引先である欧州企業からの要請等を通じて、実務上大きな影響を受けることが想定されます。そのため、本ニュースレターでは、CSDDDにより求められる内容を改めて整理し、日本企業に与える影響について紹介します。

2. 企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)の採択

(1) CSDDDに関するこれまでの経緯と今後の流れ

 CSDDDは、2022年2月に欧州委員会から案文が公表されて以降、欧州議会およびEU理事会の審議が継続しており、2023年12月にEU理事会と欧州議会による企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)に関する暫定合意がなされたものの※1、ドイツやイタリアの反対等により2024年2月28日のEU理事会では否決され、同年3月15日、大幅に対象企業の範囲を狭める形で修正されたCSDDD案(以下「修正CSDDD案」といいます。)に基づきEU理事会の常設代表委員会において合意がなされました※2。その後、上記のとおり、欧州議会・EU理事会による正式な採択がなされています。

 今後、CSDDDはEU官報に掲載されてから20日後に発効し※3、加盟国は2年間でCSDDD導入のための法規制と行政手続を整えることになります。

(2) CSDDDにおける対象企業(2条)

 正式採択されたCSDDDにおける対象企業は以下のとおりであり、基本的に修正CSDDD案の内容が維持されています。また、以下のとおり、企業の規模や売上高に応じて適用までのスケジュールが異なっています。

EU企業

  • 従業員数が5,000名超および売上高15億ユーロ超:3年以内
  • 従業員数が3,000名超および売上高9億ユーロ超:4年以内
  • 従業員数が1,000名超および売上高4億5,000万ユーロ超:5年以内

非EU企業

  • EU域内の売上高15億ユーロ超:3年以内
  • EU域内の売上高9億ユーロ超:4年以内
  • EU域内の売上高4億5,000万ユーロ超:5年以内

 上記の基準値については、単独で閾値を満たさない場合であっても、連結ベースでこれを満たす場合には親会社に適用されることになります。

 CSDDDの対象に含まれる場合には、下記(3)で記載する人権・環境デュー・ディリジェンス義務等を負うことになるため、まず自社ないし自社グループが適用対象か否かの確認を行うことが重要です※4

(3) 対象企業の義務

 CSDDDは、対象企業に対し、以下のとおり自社のバリューチェーンにおける人権・環境リスクのデュー・ディリジェンスを求めています。対象企業の義務として求められているデュー・ディリジェンスは、国連のビジネスと人権に関する指導原則に沿った基本的な枠組みを踏襲するものですが、デュー・ディリジェンスの対象となるリスクの内容やバリューチェーンの範囲が広範であり、かつデュー・ディリジェンスの実施方法等が具体化された上で対象企業の義務として定められている点に特徴があります。

人権・環境リスクに関するデュー・ディリジェンスの実施(5~12条)

  • 対象企業は、実際のまたは潜在的な人権・環境リスクを軽減・予防するためのデュー・ディリジェンスを実施することが求められます。人権・環境リスクには、強制労働、奴隷制度、労働力搾取、生物多様性の損失、環境汚染等が含まれます。
  • デュー・ディリジェンスの範囲は自社のみならず、活動の連鎖(chain of activities)における直接的または間接的な取引先を対象とするとされており、「活動の連鎖」には、設計、製造、輸送、供給といった上流と、流通、輸送、保管といった下流※5の双方が含まれます。
  • デュー・ディリジェンスはリスクベースのアプローチで実施すべきとされており、①ポリシーの策定、②実際のまたは潜在的な人権・環境リスクを特定・評価し、リスクマッピングの結果に基づいて優先順位付けを行うこと、③リスクの予防・緩和、④実際に生じたリスクの解消等が定められています。

利害関係者(ステークホルダー)との対話(13条)

  • 人権・環境リスクの特定・軽減等のため、利害関係者との対話(エンゲージメント)が求められ、利害関係者が報復を受けることなく参加できるように対応しなければならないことが定められています。
  • このような利害関係者との対話は、リスクの特定・評価、リスクの予防・緩和計画の策定、取引関係の終了等の各段階において行わなければならないとされており、利害関係者との対話が合理的に不可能な場合には、信頼できる見識を有する専門家との協議を実施しなければならないとされています。

第三者に開かれた苦情処理手続(14条)

  • 対象企業は、守秘義務を確保した形で、第三者の人権・環境リスクに関する情報や懸念を申告することができる手続を確立することが求められます。当該第三者には、リスクを受けるまたは合理的な理由で受けたと考える自然人または法人、市民社会組織や人権擁護者などこれらの人々を代理する者、バリューチェーンにおける労働者を代表する労働組合等を含むものとされます。
  • 申告に十分な根拠がある場合には、対象企業はデュー・ディリジェンスのシステムの中で適切な対応をとらなければならないとされています。
  • また、苦情処理手続の中では、申告を申し立てた者に対し、当該申告に関する適切なフォローアップを企業に要請できる権利や、適切なレベルで会社の代表者と協議する権利、講じられた措置等について情報提供を受ける権利を確保するものとされています。

年次のモニタリング(15条)

  • 対象企業は、少なくとも12か月ごとに、デュー・ディリジェンスの実施状況をモニタリングしなければならず、利害関係者からの情報等を考慮した上で、方針や是正措置等を更新することが求められます。

年次報告書の公表(16条)

  • 対象企業のウェブサイト上に年次報告書を公表することが求められます。

気候変動緩和のための移行計画の採用・実施(22条)

  • 対象企業は、気候変動緩和のための移行計画を採用・実施しなければならず、移行計画には、企業の期限付きの気候変動目標、目標を達成するための主要な行動を含めて策定することが求められます。

(4) 違反した場合の制裁等(27条、29条)

 対象企業は、CSDDDに違反したことにより、生じた損害を賠償する民事責任を負うことが定められています(ただし、バリューチェーンの取引先のみによって生じた損害については、対象企業は損害賠償責任を負わないものとされています)。

 また、EU加盟国の国内法規において、違反企業に対する制裁金(少なくとも全世界の純売上高の5%を上限とする)に関する定めを置くものとされています。

4. 日本企業に与える影響

 今後、CSDDDが直接適用される日本企業においては、CSDDDが定める広範なデュー・ディリジェンス義務を遵守することが求められることになります。CSDDDで求められるデュー・ディリジェンスを実施するためには、まず自社のサプライチェーンの状況を踏まえ、どこに優先的に対応すべき人権・環境リスクがあるのかを把握すること、およびCSDDDが適用されるまでに備えなければならない人権・環境デュー・ディリジェンスの遵守体制とのギャップを確認することが重要です。また、サプライチェーンのリスク分析・モニタリングや苦情処理手続の導入・整備については相応の期間を要するため、適用開始に備えて順次準備を開始することが必要となります。指令発効後、モデル契約条項に関するガイダンスやデュー・ディリジェンス義務の履行に関するガイドラインが整備されることが予定されており、これらが実務のスタンダードになることも見据えておく必要があるように思われます。

 一方、CSDDDが直接適用されない日本企業においても、CSDDDの発効によりグローバル・スタンダードが変化し、また、取引先である欧州企業等からより具体的な取組を求められるなど、多くの企業が影響を受けることが見込まれます。また、将来的には、審議過程で削除されたハイリスクセクターの企業に関する適用対象の拡大がされるなど※6、対象企業の範囲が広がる可能性もあることから、上記のような取組を段階的に進めることが有用と思われます。

脚注一覧

※1
CSDDD暫定合意案の概要については、2024年1月発行「欧州の人権・環境デュー・ディリジェンスの義務化に向けて~企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)の欧州議会とEU理事会の暫定合意内容~」(本ニュースレター第82号)をご参照ください。

※3
2024年5月31日時点でEU官報は掲載されておらず、本NLは欧州議会において承認された版に基づき記載しておりますが、最終版において軽微な修正がなされている可能性があります。

※4
別途、一定の基準額以上のフランチャイズ契約またはライセンス契約を締結している場合の対象要件が定められています。

※5
製品の廃棄は対象としないものとされています。

※6
将来的に見直しがなされる可能性がある旨が明示されています。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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