
塚本宏達 Hironobu Tsukamoto
パートナー(NO&T NY LLP)/オフィス共同代表
ニューヨーク
NO&T U.S. Law Update 米国最新法律情報
NO&T Europe Legal Update 欧州最新法律情報
ロシアがウクライナに対する全面的な軍事侵攻を開始したことに対応し、EUを初めとする各国が相次いで対ロシア経済制裁措置を発表しました。2022年2月28日までに発表されたこれらの経済制裁措置の具体的な内容については、当事務所の米国最新法律情報No.69/欧州最新法律情報No.8をご覧ください。本ニュースレターは、その後のEUにおける経済制裁措置のアップデートを概説するものです。
なお、本ニュースレターは2022年3月29日時点の情報に基づきます。ロシアに対する経済制裁措置を巡る状況は日々目まぐるしく変動しています。当事務所では、ロシア・ウクライナ危機対応に関する専用のお問い合わせ窓口を設けていますので、最新情報については以下の専用メールアドレスまでお問い合わせください。
ロシア・ウクライナ危機対応 相談窓口:russia-support@noandt.com
EUでは、2022年3月2日以降現在に至るまで、相次いでロシア(及びベラルーシ)に対する追加的な制裁措置の実施を決定しています。かかる追加的な制裁措置の概要は以下のとおりです。
(1) ロシアの放送局による放送の禁止※1
事業者は、以下のロシアの放送局のコンテンツを放送し、放送を可能にし、容易にし、又はその他放送に資する行為を禁止される。これらのロシアの放送局に対する放送の許認可・免許、及び放送・配信に係る手配を停止する。
(2) SWIFT決済システムからのロシアの銀行の排除※2
以下のロシアの銀行がSWIFT決済システムから排除される。
(3) ロシア直接投資基金(Russian Direct Investment Fund)が共同出資する事業への出資、参加その他の拠出の禁止※3
(4) ユーロ建て銀行券の譲渡・供給の禁止※4
(i)ロシア又はロシア国内の自然人、法人、若しくは法的事業体・団体(ロシア政府及びロシア中央銀行を含む。)に対し、又は(ii)ロシアにおいて使用する目的※5で、ユーロ建ての銀行券を販売し、供給し、譲渡し、若しくは輸出することが禁止される。
(1) ロシアの個人又は団体に対する海上航行用品・無線通信技術の提供の禁止※6
以下の各行為が禁止される。
(2) 資産凍結及び渡航制限の拡大
資産凍結及び渡航制限の期間が2022年9月15日まで延長され※7、対象として、以下の者が追加された※8。
(3) ベラルーシの金融分野に対する制裁措置※9
ベラルーシについても、以下の制裁措置が導入された。
(1) 貿易・投資関連制裁の拡大※11
(2) 資産凍結及び渡航制限の拡大※13
資産凍結及び渡航制限の対象として、15名の個人(Roman Abramovich氏、German Khan氏、その他の著名な実業家等)、並びに航空、軍民両用技術、造船、及び機械製造部門における9つの事業体が追加された。
これまでに導入されている対ロシア・ベラルーシ経済制裁措置は、①EU領域内及び②EU加盟国の管轄下にある航空機又は船舶の機内において適用されることに加え、EU領域の内外を問わず、③EU加盟国の国民、及び④EU加盟国の法律に基づいて設立された法人、事業体又は団体に対しても適用されます。
さらに、⑤その全部又は一部の事業がEU領域内で行われている法人、事業体又は団体に対してもEUによる制裁が適用されることとされています。これにより、EUとの関係が必ずしも明らかでないケースに対しても、EUによる制裁が適用されることとなる可能性があるため、留意が必要です。
なお、制裁措置の導入前に締結された契約に基づく義務の履行(猶予期間)、緊急/人道的供給に関する例外等、個別の制裁に適用される種々の例外があります。
以上のEUによる制裁の緊密性や、その適用が広範な領域にまで及ぶ可能性を踏まえ、ビジネスに対する影響の有無を検討し、必要に応じて速やかに法的助言を得ることが望ましいと考えられます。
※1
理事会規則2022/350、理事会規則833/2014及び理事会決定2014/512を改正する理事会決定2022/351
※2
理事会規則2022/345、並びに理事会規則833/2014及び理事会決定2014/512を改正する理事会決定2022/346
※3
同上。
※4
同上。
※5
但し、ロシアに旅行する自然人及び同行するその親族による個人利用目的、及び国際法に基づき免除を受けるロシア国内の外交団、領事機関又は国際機関による公的利用目的の場合を除く。
※6
理事会規則2022/394、並びに理事会規則833/2014及び理事会決定2014/512を改正する理事会決定2022/395
※7
理事会決定2014/145を修正する理事会決定2022/411
※8
理事会規則2022/396、並びに理事会規則269/2014及び理事会決定2014/145を改正する理事会決定2022/397
※9
理事会規則2022/398、並びに理事会規則765/2006及び理事会決定2012/642を改正する理事会決定2022/399
※10
但し、ベラルーシに旅行する自然人及び同行するその親族による個人利用目的、及び国際法に基づき免除を受けるベラルーシ国内の外交団、領事機関又は国際機関による公的利用目的の場合を除く。
※11
理事会規則2022/428、理事会規則833/2014及び理事会決定2014/512を改正する理事会決定2022/430
※12
但し、化石燃料(特に石炭、石油及び天然ガス)、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、パラジウム及び鉄鉱石のロシアからの又はロシアを経由してのEUへの購入、輸入又は輸送に特に必要な取引、並びに(i)乃至(iii)に列挙された法人、事業体又は団体が少数株主であるロシア国外のエネルギープロジェクトに関連する取引については、例外が適用される。また、2022年3月16日以前に締結された契約については、2022年5月15日まで適用されない。
※13
理事会規則2022/427、理事会規則2014/269及び理事会決定2014/145を改正する理事会決定2022/429
本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。
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