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ニュースレター

港湾環境整備計画制度(みなと緑地PPP)―導入から1年

NO&T Infrastructure, Energy & Environment Legal Update インフラ・エネルギー・環境ニュースレター

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 港湾における新たな官民連携(Public Private Partnership; PPP)の仕組みである港湾環境整備計画制度、いわゆる「みなと緑地PPP」(以下「本制度」という。)の導入に係る港湾法の一部を改正する法律(令和4年法律第87号)の施行日※1からちょうど1年が経過した。現在、大阪市(所管:大阪港湾局)は常吉西臨港緑地の本制度を利用した整備・運営事業に係る公募手続を行っている※2ほか、福岡市が本制度を利用した新たな官民連携に向けたサウンディング型市場調査を行っている※3。本ニュースレターにおいては、本制度の内容、並びに大阪市及び福岡市における本制度利用に係る想定を概観したい。

港湾環境整備計画制度の概要

1. 本制度の位置づけ

 民間事業者による賑わい創出に資する公共還元型の港湾緑地等の施設整備を目的として、港湾法第51条以下に新たに規定されたのが本制度である。これは、昨年6月に内閣府民間資金等活用事業推進室により公表された「PPP/PFI推進アクションプラン(令和4年改定版)」※4における、「地域のにぎわい創出を図りつつ、民間資金を活用したインフラの維持・更新を効率的に進める観点から、Park-PFIと同様の枠組みについて河川、港湾等、他のインフラ分野においても導入するための具体的な準備を行う」との記載と呼応するものである。令和5年6月の「PPP/PFI推進アクションプラン(令和5年改定版)」においても、本制度の「導入促進を図る」ことが確認されている※5

 本制度は、港湾緑地等において、収益施設の整備と当該施設から得られる収益を還元して緑地等のリニューアル等を行う民間事業者に対し、緑地等の行政財産の貸付を可能とする認定制度である。港湾管理者にとっては民間資金の活用による緑地等の整備・管理に係る財政負担の軽減、民間の創意工夫を採り入れることによる緑地等のサービスレベルの向上が、民間事業者においては収益施設を長期的安定的に設置でき、緑地等の一体的整備により収益の向上にもつながる質の高い空間の形成が、利用者にとってはサービスの充実、緑地等の利便性・快適性・安全性の高まりが期待できるものとされている※6

 民間に対して、公共の管理する土地における収益機会を与え、そこで得られた収益を公共インフラの整備に係る費用の全部又は一部に充てさせ、もって、公共の費用負担を削減しつつ、民間の創意工夫を用いて魅力ある公共インフラを整備する、という発想は、正にPark PFI(都市公園法(昭和31年法律第79号)に基づく公募設置管理制度)※7と軌を一にするものといえる。

 「港湾」の民間活用というと、他に、港湾法の一部を改正する法律(平成28年法律第45号)により導入された占用公募制度が想起されよう。これは港湾区域内の水域の長期にわたる占用を行う民間事業者を公募により選定する仕組みである。昨今注目されている洋上風力発電プロジェクト※8には、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(平成30年法律第89号)に基づき一般海域において実施されるもののほかに、これに先立って創設されたこの占用公募制度を利用して港湾区域内の水域にて実施されるもの※9が存在する。なお、占用公募制度において例外的に民間事業者に付与される長期の利用権原は、港湾法第37条に基づく水域の占用に係る許可である。本制度は港湾緑地等の占用に係るものであるところ、港湾緑地等は港湾法第37条の許可の対象ではない。また、洋上風力発電事業を行う者の選定を公平に行おうとする占用公募制度と、官民連携による港湾緑地等自体の整備を目的とする本制度とでは、その目的・性質もかなり異なるものといえる。

 本制度はPark PFIや占用公募制度と異なり、公募により事業者を選定することを必須の前提とするものではない。少なくとも、港湾法の条文上は、港湾緑地等の貸付を受けようとする者は自ら港湾環境整備計画を作成し、港湾管理者の認定を受けることができるように読め、それゆえに、特定の事業者への恣意的な貸付がなされることを防ぐ観点から、第51条の2第3項にて、貸付が公正な手続に従って行われることを確保するために必要な措置※10が講じられることになっているものと理解できる。もっとも、地方公共団体の契約において、随意契約は例外的にのみ許容されるものであるし※11、本制度により港湾緑地の整備にあたって民間の創意工夫を採り入れたいという公共側の意向からすると、公募手続が採用されるのが原則となろう※12

2. 制度の仕組み

(1) 主体

 本制度の主体となるのは「港湾管理者」である。港湾管理者は港湾法第4条に基づき独立した法人格を有する主体である港湾局と、地方公共団体のいずれかであり、国は港湾管理者とはならない。但し、対象となる港湾緑地等が国有であるか又は国が補助等を行ったものである場合には、本制度に基づく土地の貸付にあたり、国土交通大臣の同意が必要とされる(港湾法第51条の2第2項)。

(2) 収益事業と港湾施設の整備

 港湾緑地等の貸付を受けようとする者は、港湾環境整備計画を作成し、港湾管理者の認定を申請する。港湾管理者による認定の基準については第51条の2第1項に定めがあり、認定を受けた民間事業者は、当該港湾緑地等の貸付を受けることができる。港湾環境整備計画には、以下の記載を要するものとされている(港湾法第51条第2項第3号及び第4号)。

ア) 貸付を受けようとする緑地等の区域において整備する飲食店、売店その他の施設であって、当該施設から生ずる収益の一部を次のイに規定する港湾施設の整備に要する費用の全部又は一部に充てることができると認められるものに関する事項

イ) 貸付を受けようとする緑地等の区域において整備する休憩所、案内施設その他の港湾の環境の向上に資する港湾施設に関する事項

 すなわち、公共として整備させたいのが上記イの「休憩所、案内施設その他の港湾の環境の向上に資する港湾施設」であり、そのために上記アの「飲食店、売店その他の施設」の設置・運営を許容し、後者に基づく収益の一部を前者に充てさせる、という図式となる。各施設としてどのようなものが認められるかについて本制度自体に明確なルールは定められていないが、以下のようなものが想定されているようである※13

収益施設 飲食店、販売店、イベントホール、宿泊施設、荷物預り所、港湾展望施設、研修施設、学習体験施設等
港湾施設 休憩所、案内施設、見学施設、芝生、植栽、ベンチ、トイレ、駐車場、照明設備、備蓄倉庫等

 港湾管理者が港湾法第39条に基づき指定する分区の区域内では、港湾管理者としての地方公共団体の条例で定めるものを建設してはならないものとされており(同法第40条第1項)、多くの港湾管理者は、条例をもって、それぞれの分区において許容される構築物を明示し、それ以外の構築物を規制の対象としている。したがって、建築可能な施設は、かかる条例上の規制による制限を受けることとなろう。

(3) 貸付の内容

 本制度の対象となる「緑地又は広場」については、「国有財産法第3条第2項又は地方自治法第238条第4項に規定する行政財産であるものに限る。」という限定が付されている。かかる行政財産を私人が利用するためには、それが国有財産である場合には、国有財産法に基づく行政財産の目的外使用許可を受けるか、同法第18条第1項に基づく貸付を受ける必要がある※14。また、港湾管理者たる地方公共団体の公有財産である場合にも同様に、港湾施設管理条例等による港湾施設使用許可等を受けるか、地方自治法第238条の4第1項に基づく貸付を受ける必要がある。港湾法第51条の3第1項は「国有財産法第18条第1項又は地方自治法第238条の4第1項の規定にかかわらず」と規定しており、本制度は、これらの一般的なルールに対する特則として、本制度上の認定を受けた事業者に対する土地の貸付を定める趣旨である。

 かかる貸付関係は私法上の契約関係であるといえるから、民法の適用を受けるほか、借地借家法上の要件を満たす場合には、同法の適用がある。このため、港湾法第51条の3第1項では、賃貸借の存続期間の制限を定める民法第604条及び借地借家法第3条並びに契約更新時の更新期間の制限を定める借地借家法第4条の規定の適用を排除している。これらにより、賃貸借期間についての法律上の制限はないことになる※15

 賃貸借契約の内容については、港湾法第51条の5を受けた同法施行規則第15条の25において、「少なくとも」次に掲げる事項を規定すべきことが定められている。なお、「認定計画実施者」とは、本制度に基づき港湾環境整備計画につき認定を受けた民間事業者をいう。

(i)  港湾管理者は、認定計画実施者が港湾環境整備計画の認定の取消しを受けたときは、当該貸付契約を解除するものとすること(第1号)。

(ii)   港湾管理者は、認定計画実施者が認定計画に従って港湾の環境の整備に関する事業を実施していないと認めるとき、認定計画実施者が法令若しくは当該貸付契約に違反したとき又は当該事業の実施に関し不正の行為があったと認めるときは、当該貸付契約を解除することができるものとすること(第2号)。

(iii)   港湾管理者は、認定計画の適正かつ確実な遂行を確保するため必要な限度において、認定計画実施者に対し、質問し、帳簿書類その他の物件を調査し、又は参考となるべき報告若しくは資料の提出を求めることができ、認定計画実施者はこれに応じなければならないものとすること(第3号)。

(iv)   認定計画実施者は、貸し付けられた緑地等に関し、これを第三者に転貸し、及びこれに係る賃借権を譲渡してはならないこと。ただし、認定計画実施者が、貸し付けられた緑地等の一部について、当該緑地等の本来の用途又は目的を妨げない限度において、これを第三者に転貸することについて港湾管理者の承諾を得たときは、この限りでないこと(第4号)。

(v)       認定計画実施者は、貸し付けられた緑地等に自己の権原によって附属させた物を担保に供しようとするときは、港湾管理者の承諾を得なければならないものとすること(第5号)。

(vi)   非常災害に際し円滑な物資輸送及び避難地の確保を図る必要がある場合その他公益上特別の必要がある場合において、港湾管理者が貸し付けられた緑地等を認定計画実施者以外の者の利用に供すべきことを認定計画実施者に指示したときは、認定計画実施者はその利用を受忍しなければならないものとすること(第6号)。

(i)  港湾管理者は、認定計画実施者が港湾環境整備計画の認定の取消しを受けたときは、当該貸付契約を解除するものとすること(第1号)。

(ii)   港湾管理者は、認定計画実施者が認定計画に従って港湾の環境の整備に関する事業を実施していないと認めるとき、認定計画実施者が法令若しくは当該貸付契約に違反したとき又は当該事業の実施に関し不正の行為があったと認めるときは、当該貸付契約を解除することができるものとすること(第2号)。

(iii)    港湾管理者は、認定計画の適正かつ確実な遂行を確保するため必要な限度において、認定計画実施者に対し、質問し、帳簿書類その他の物件を調査し、又は参考となるべき報告若しくは資料の提出を求めることができ、認定計画実施者はこれに応じなければならないものとすること(第3号)。

(iv)   認定計画実施者は、貸し付けられた緑地等に関し、これを第三者に転貸し、及びこれに係る賃借権を譲渡してはならないこと。ただし、認定計画実施者が、貸し付けられた緑地等の一部について、当該緑地等の本来の用途又は目的を妨げない限度において、これを第三者に転貸することについて港湾管理者の承諾を得たときは、この限りでないこと(第4号)。

(v)         認定計画実施者は、貸し付けられた緑地等に自己の権原によって附属させた物を担保に供しようとするときは、港湾管理者の承諾を得なければならないものとすること(第5号)。

(vi)   非常災害に際し円滑な物資輸送及び避難地の確保を図る必要がある場合その他公益上特別の必要がある場合において、港湾管理者が貸し付けられた緑地等を認定計画実施者以外の者の利用に供すべきことを認定計画実施者に指示したときは、認定計画実施者はその利用を受忍しなければならないものとすること(第6号)。

港湾環境整備計画制度の実用例

 以下では、大阪市による常吉西臨港緑地の本制度を利用した整備・運営事業に係る公募手続の概要及び福岡市による本制度を利用した新たな官民連携に向けたサウンディング型市場調査の概要をみていきたい。

1. 常吉西臨港緑地に係る本制度の利用

 大阪市による常吉西臨港緑地の本制度を利用した整備・運営事業に係る公募手続(本「1.」において、以下「本件」という。)の概要は以下のとおりである※16

(1) 公募手続

 公募型プロポーザル方式により事業者を選定することとしている。

(2) 収益事業と港湾施設の整備

 a. 収益事業

 事業者において提案可能な港湾施設は、「大阪港臨港地区の分区における構築物の規制に関する条例」(昭和40年4月1日条例第32号)第3条及び別表に記載されるものであり、具体的には、「スポーツ施設、レクリエーション施設、宿泊機能、物品販売店、飲食店など」が挙げられている。本件にて収益施設の建築が認められる分区は「マリーナ港区」とされており、同条例では、マリーナ港区では、飲食店のほか、旅館やホテルも建築することが認められている。これが港湾法第51条第2項第3号に定める収益施設となる。なお、契約期間の満了又は下記の借地権設定契約の解除の際には、市が特に承認した場合を除き、原状回復(施設を撤去)した上で用地を返還するものとされている。以上の収益施設の整備に加え、事業者は、イベントの開催やプロモーション活動等の賑わい創出事業も行うものとされている。需要変動は事業者のとるべきリスクとされており、いわゆる独立採算型の事業となる。

 b. 収益を充てて実施すべき業務

 これに対し、事業区域において、整備する施設から得られた収益の一部を「休憩所、案内施設、芝生、植栽、ベンチ、トイレ、駐車場、照明設備、備蓄倉庫等」といった港湾施設の整備に充当することが求められており、これが港湾法第51条第2項第4号に定めるものということになる。これらについては、契約終了後、原則として市に帰属することになるものとされている。また、事業者は、事業区域内の各種施設の維持管理を担うこととなる。市の費用負担は予定されておらず、事業者自らが設置する施設による収益等をもとに事業を実施することが求められている。

(3) 契約関係

 本件では、「市有財産事業用定期借地権設定合意書」(以下「借地権設定契約」という。)と「常吉西臨港緑地の魅力向上・管理運営事業協定書」(以下「事業協定書」という。)の締結が予定されている※17。事業者は、SPCを設立し、これをもって貸付を受ける主体とすることも可能とされている。

 a. 市有財産事業用定期借地権設定合意書

 借地権設定契約には、以下の事項等が定められる。

  • 土地の貸付は、借地借家法第23条第2項に定める事業用定期借地権の設定としてなされる。したがって、契約更新に係る同法の規定は適用されず、また、事業者が市に対する建物買取請求を行うことはできない(第1条)。
  • 契約期間は契約締結日から令和26年3月31日とされる(約20年間)(第4条)。
  • 賃料(借地権設定契約(案)では空欄)として、月額30万円以上の公募手続において事業者が提案した金額が記入される(第5条)。
  • 土地について市は契約不適合責任を負わない(第10条)。
  • 「使用上の制限」として、物件特有の容認事項が規定されている(第11条)。事業協定書第6条にも同様の規定が置かれている。
  • (i)借地権の移転・土地の転貸、(ii)建築した建物等の賃貸等、(iii)建築した建物等への担保権設定につき市の承諾が必要とされる(第12条)。(i)及び(iii)はそれぞれ港湾法施行規則第15条の25第3号及び第4号に対応するものといえる。
  • 実地調査権(第18条)は、後述の事業協定書第8条とともに、港湾法施行規則第15条の25第3号に対応する規定と考えられる。
  • 解除事由には、事業者が、(i)港湾法第51条の2第1項各号のいずれかに適合しないものとなり、市の勧告に従い必要な措置をとらなかったとき、及び、(ii)事業協定書が解除されたときが定められている(第19条)※18。前者は港湾法施行規則第15条の25第1号を受けたものといえる。同規定は港湾環境整備計画に係る認定の「取消しを受けたとき」に解除できるようにすることを求めているが、認定の取消しが可能な要件と同じ要件により契約を解除できるものとすることで、同じ目的を達成することが企図されたものといえよう。港湾法施行規則第15条の25第2号に直接対応した文言は見受けられないが、借地権設定契約や事業協定書の違反等(前者につき借地権設定契約第19条第2項第1号乃至第3号、後者につき事業協定書第15条第1号及び第2号)として捕捉する趣旨であろう。
  • 契約終了時は建物等を除去の上、原状回復する必要がある(第24条)。

 以上のとおり「使用上の制限」が加わり、また、港湾法施行規則上規定すべき内容に配慮した規定が見受けられるほかは、基本的には純粋に土地の賃貸借に関する事項が規定されているものといえる。このため、市が求める港湾施設の整備や維持管理についての事項を定めるための別契約が必要となり、これを担うのが事業協定書であると整理されているものと見受けられる。

 b. 常吉西臨港緑地の魅力向上・管理運営事業協定書

 上記a.にてまとめて記載した事項のほか、事業協定書には以下の事項等が定められている。

  • 事業協定書に基づき事業区域の清掃、巡回、点検、警備、維持管理及び修繕を行うべきこと(第3条)、要求水準書及び管理・運営計画書に従った業務遂行を行うべきこと(第3条、第6条)、事業者における事業経費の負担(第5条)、業務報告書の提出及び調査への協力(第8条)などは、市が求める維持管理運営に関する基本的な事項を定めたものといえる。
  • 市所有施設の破損等の場合や事故等発生時の対応(第9条、第10条)、第三者に対する損害の負担(第12条)、リスク分担(第14条)として、PPPにおける重要要素である公共と民間事業者とのリスク分担に係る事項も定めている。
  • 公共上特別の必要がある場合における一時的な公共的利用を受忍すべき旨の定め(第4条)が置かれているが、これは、港湾法施行規則第15条の25第6号の要請であり、本件においては、借地権設定契約ではなく事業協定書に規定されている。
  • 解除事由には借地権設定契約が解除された場合が含まれる(第15条)。

2. 福岡市「みなと100年公園」構想

 福岡市においては、同市東区香椎浜ふ頭を対象とした官民連携事業への民間事業者の参入意欲や事業手法に関するアイデアを募集するサウンディング型市場調査が行われている※19(本「2.」において、以下「本件」という。)。2023年11月24日までに提案書の受付がなされ、同年12月15日まで個別対話が実施され、2024年1月以降調査結果が公表されるスケジュールである※20

 この調査においては、①市の費用負担により、市又は事業者にて行う緑地再整備事業、②本制度を利用した収益施設及び公共部分の整備等を内容とする認定制度事業、並びに、③指定管理による運営管理事業(独立採算型)の3つの事業について、その実施可否及び一体的又は分離した形での実施など最適な事業形態について検討を行うものとされている。なお、現状想定されている事業期間は指定管理の開始日から20年間とのことである。

 ②の認定制度事業については、「カフェやレストラン等の収益施設の導入」と「老朽化した遊具や休憩所、トイレなどの公共部分の再整備」による緑地利用者の利便性の向上と環境の改善による緑地等の活性化を図ることが企図されている。

 本制度と他の官民連携手法との併用について、国土交通省は「例えば、貸し付けられる区域以外の緑地等や近接する海岸について、同一の者が一体的な運営を担うことにより、賑わい空間として効果的かつ効率的な運営が期待できます。」※21としており、本件は正に、本制度と他の制度との併用により適正な官民連携の手法を探るものとして、興味深い。

おわりに

 本制度は比較的シンプルな制度であり、かつ長期にわたり私法上の賃貸借契約の締結を認めるものである点で、事業者にとっては安定性が高く投資しやすく、公共側にとっては参入事業者を呼び込みやすい制度であるように見受けられる。本制度については、その実用化が開始されてから間もないため、公表されている事例も限られるが、今後どのようにその利用が拡大されていくことになるのかが注目されるところである。

脚注一覧

※1
令和4年11月18日交付、令和4年12月16日施行。

※2
https://www.city.osaka.lg.jp/port/page/0000606515.html(最終アクセス:2023年12月21日)

※4
https://www8.cao.go.jp/pfi/actionplan/pdf/actionplan_r4_2.pdf(最終アクセス:2023年12月21日)

※5
https://www8.cao.go.jp/pfi/actionplan/pdf/actionplan_r5_2.pdf(最終アクセス:2023年12月21日)

※6
「港湾分野における官民連携の推進~港湾環境整備計画制度の創設について~」(令和5年2月3日、国土交通省港湾局産業港湾課)(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanminrenkei/content/001584622.pdf(最終アクセス:2023年12月21日))6頁。

※7
Park PFIについては、勝山輝一・村治能宗「Park PFIの動向」(NO&T Infrastructure, Energy & Environment Legal Update ~インフラ・エネルギー・環境ニュースレター~第3号(2019年12月))も参照されたい。

※8
港湾と洋上風力との関係では、港湾法の一部を改正する法律(令和元年法律第68号)により導入された基地港湾制度も重要である。基地港湾制度については、渡邉啓久「洋上風力発電プロジェクト推進のための基地港湾制度」(NO&T Infrastructure, Energy & Environment Legal Update ~インフラ・エネルギー・環境ニュースレター~ No.18(2022年3月))を参照のこと。

※9
北九州響灘洋上風力発電事業などが著名である。

※10
かかる措置は港湾法施行規則(昭和26年運輸省令第98号)第15条の22に規定されているところ、所定の事項を2週間公衆の縦覧に供する旨、利害関係者は当該期間の満了日までに港湾管理者に意見書を提出することができる旨等が規定されているが、特に「公募」的な取扱いが求められているところではない。

※11
地方公共団体における契約には地方自治法第234条が適用され、かかる契約の相手方の選定は一般競争入札によるのが原則である。したがって、本制度に基づく土地賃貸借契約の締結相手方を随意契約の方法により選定できるのは、地方自治法施行令第167条の2に定める要件を満たす場合に限られる。各地方公共団体において、随意契約によることが認められる同条第1項第2号の「性質又は目的が競争入札に適しないもの」について解釈の指針を示している例がある。例えば、大阪府随意契約ガイドライン(https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/34578/00303398/18-2_zuikeigaidorain_R031001%20.pdf(最終アクセス:2023年12月21日))3(2)では、「コンペ、プロポーザル方式等の競争ないし比較競技により契約の相手方を予め特定した場合は、本号による随意契約が許されると解する。」との解釈が示されており、このように公募プロセスを用いる場合には随意契約が許容されるという解釈や基準を示す地方公共団体が多い。

※12
脚注6の国土交通省の資料8頁以下に本制度に係る手続フローのイメージが記載されているが、そこでも公募によることが当然の前提になっている。

※13
脚注6の国土交通省の資料11頁Q1。

※14
使用許可も貸付も行政財産の「用途又は目的を妨げない限度において」許容される点で同じである。両者の区別については「行政財産を貸付け又は使用許可する場合の取扱いの基準について」(昭和33年1月7日蔵管第1号)等を参照。

※15
Park PFIにおける設置管理許可期間の上限は20年であり、これよりも長期の事業を予定する場合にも公共側は20年経過時の更新を約束できないため、事業への参画を企図する事業者側から懸念が示されることがある。本文記載のとおり、本制度に基づく港湾緑地等の貸付はより長期となり得るため、特に投下資本の回収に長期間を要する施設を設置しようとする民間事業者を呼び込む観点からは、Park PFIと比較して本制度はより魅力的なものとなり得よう。もっとも、脚注6の国土交通省の資料では、「貸付期間の設定にあたっては、事業規模や民間事業者から必要となる意見を収集するマーケットサウンディングの結果等を踏まえて適切に設定することが望ましい」(同資料11頁Q2)との考え方が示されており、事業期間について「概ね30年以内(賃貸借契約による)」とされている(同資料7頁)。

※16
特に言及が無い限り、本「1.」における以下の記載は「常吉西臨港緑地の魅力向上・管理運営 事業者募集要項」(https://www.city.osaka.lg.jp/port/cmsfiles/contents/0000606/606515/00_bosyuyoukou.pdf(最終アクセス:2023年12月21日))の記載に基づく。

※17
本文の記述は大阪市が公表するこれらの契約書の案文(借地権設定契約につきhttps://www.city.osaka.lg.jp/port/cmsfiles/contents/0000606/606515/06_bessi6.pdf(最終アクセス:2023年12月21日)、事業協定書につきhttps://www.city.osaka.lg.jp/port/cmsfiles/contents/0000606/606515/05_bessi5.pdf(最終アクセス:2023年12月21日))に基づく。

※18
公共用、公用又は公益事業の用に供するために必要な場合の解除規定は置かれていない(なお、港湾法施行規則第15条の25の要請ではない。)。これは事業の安定性の観点からは好ましいことといえよう。

※19
特に言及が無い限り、本「2.」における以下の記載は「みなと100年公園(港湾緑地)における民間活力導入に向けたアイデア募集(サウンディング型市場調査)」(https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/114637/1/01_minato100_jissiyoryo_V01a.pdf?20231101115628(最終アクセス:2023年12月21日))に基づく。

※21
脚注6の国土交通省資料11頁Q3。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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