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ニュースレター

米国輸出管理規制アップデート~2023年度の執行状況等について~

NO&T U.S. Law Update 米国最新法律情報

NO&T International Trade Legal Update 国際通商・経済安全保障ニュースレター

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 米国の輸出管理規則(Export Administration Regulations、以下「EAR」といいます。)に関して、米国政府は対中国向けの高度な集積回路や半導体製造装置の輸出を中心に厳しい姿勢を示し続けており、過去本ニュースレターでご紹介したとおり、2023年中にはいくつか大きなアップデートがありました。すなわち、米国商務省産業安全保障局(the U.S. Department of Commerce’s Bureau of Industry and Security、以下「BIS」といいます。)は、①2023年7月、EARを含む法令違反の可能性を認識した場合における企業の積極的な自主的開示(voluntary self-disclosures、以下「VSD」といいます。)を奨励し、認識した違反を報告しなかった企業に対する罰則を強化する旨を示したコンプライアンスノートを通じて、EAR違反が発生した場合の執行強化に取り組むことを対外的に公表し※1、また、②2023年10月、中国による先端コンピュータチップの調達、スーパーコンピュータの開発及び維持、並びに先端半導体の製造に関する能力を制限することを目的とした新たな2つの暫定最終規則案(以下総称して「本暫定最終規則」といいます。)を公表する※2等の取り組みを通じて、半導体、スーパーコンピュータ、AI等の重要技術における米国の優位を保つべく、戦略的な管理を行う方針を打ち出しています。

 本ニュースレターでは①及び②を含めた2024年1月末時点のEARの最新のアップデートについてご紹介します。

2023年度執行実績の公表

 BISは、2024年1月2日、2023年のEAR関連の執行実績(「Export Enforcement: 2023 Year in Review」、以下「本実績報告」といいます。)を公表しました※3。本実績報告は、冒頭、「歴史上、今ほど輸出管理が集団安全保障の中心となる時代はない。」と述べた上で、AIや量子コンピューティングのような破壊的な先進技術の進歩が21世紀の地政学的情勢を大きく左右するとして、これらの技術が悪意のある者に渡らないようにする輸出管理の執行強化は極めて重要であることをあらためて強調しています。本実績報告のポイントは以下のとおりです。

1. 破壊的技術ストライクフォースの立ち上げ

 2023年2月16日、BISは米国司法省と共に輸出管理の執行強化に取り組む専門部隊「破壊的技術ストライクフォース (Disruptive Technology Strike Force)」を設立したことを公表※4していましたが、本実績報告では、2023年において破壊的技術ストライクフォースによる計5件の刑事訴追※5(2件がロシア関連、2件が中国関連、1件が中国・イラン関連)、ロシア諜報機関への調達に関与した欧州の企業・個人に対する暫定拒否命令(Temporary Denial Order、以下「TDO」といいます。)の発令※6、及びエンティティ・リスト※7の積極的な活用・更新がなされたことが報告されています。

2. 過去最大規模の執行措置の実施

 BISは、安全保障上の重大な脅威に対する連邦捜査局(FBI)、国土安全保障省国土安全捜査局(HSI)、アルコール・たばこ・火器及び爆発物取締局(ATF)等の他の行政機関と連携した上で、過去最大規模の執行措置を実施したことを公表しています。2023年における執行事例は以下のとおりです。

  • 2023年4月19日付、ファーウェイ向けの直接製品規制に違反したとして米国のハードディスクドライブ製造企業であるシーゲイト・テクノロジーに対して3億ドルの罰金が課された事例※8
  • 2023年12月6日付、中国及びロシアのエンドユーザー向けに軍事機微技術を違法に輸出したベルギー人個人に対してアメリカ合衆国司法省(DOJ)と共に刑事訴追を行い、また、米国財務省外国資産管理室(OFAC)と共に当該個人及び当該個人が所有する法人をエンティティ・リスト及びSDNリスト(特別指定国民及び資格停止者リスト)に追加した事例
  • DOJと共に、ロシア軍やその関係者に対して一定の品目を供給した個人計14名に対して、各8件の刑事訴追を実施した事例
  • 2023年1月17日付、NASAの請負業者にて勤務していた個人が、中国の軍事ロケットシステムや無人航空機システムの開発に関与しているとしてエンティティ・リストに掲載されている北京航空航天大学に対して秘密裏に機密性の高い航空学ソフトウェアを提供したとして有罪答弁を得た事例※9
  • 2023年2月27日付、3Dプリントの開発を行う米国企業に対して、輸出管理の対象となっている航空宇宙及び軍用電子機器の設計図を中国に送付したことに関連して277万ドルの罰金が課された事例※10

3. 執行政策の強化

 「最も重要な米国の技術を最も危険な者の手に渡さない」という理念の下、本実績報告においては、2023年4月にBISが公表したEAR違反に関する自主開示及び他者の違反に関する開示を促すための政策方針の明確化のための覚書(Clarifying Our Policy Regarding Voluntary Self-Disclosures and Disclosures Concerning Others)の公表(以下「本覚書」といいます。)※11やEARに対する違反が反復的、継続的、又は明白に継続している場合における特定のTDOを180日間ではなく1年間更新することを認めるための規則改正※12等、2023年における執行政策強化の取り組みが紹介されています。

4. 省庁間、学術界、産業界、外国政府との連携強化

 BISは、省庁間、学術界、産業界、外国政府との連携強化を進めており、2023年度中には特に以下の取り組みを行ったとのことです。

  • 外国政府との協力の下、年間1,500件以上のエンドユースチェックを実施
  • DOJ及び財務省との連名のコンプライアンスノートの公表※13
  • オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国及びG7各国との輸出執行調整メカニズムの確立
  • OFACとの間の緊密な連携とパートナーシップのための覚書の締結

EAR違反の自主開示奨励のための方針改定

 BISは、2024年1月16日、2023年4月に公表したEAR違反に関する自発的な自己開示及び他者に関する開示についての政策方針を明確化するための本覚書を改定する新たな覚書(以下「新覚書」といいます。)を公表しました。本覚書では、EAR違反に対する効果的な法執行を行うためには産業界及び学術界による協力が必要であるとした上で、(1)自己の潜在的なEAR違反に関するVSDと(2)他者による潜在的なEAR違反に関する開示についての政策方針を公表していましたが、新覚書においては、より効率的かつ効果的なVSDプログラムの導入を目指し、本覚書の改定を行うものとしています。新覚書においては、半導体、スーパーコンピュータ、AI等の重要技術を悪意ある者の手から保護するためには米国の企業及び大学が果たす役割が極めて重要であることを改めて強調した上で、産業界及び学術界からのより適切なサポートが得られるよう、本覚書の内容について概要以下のとおり改定を行っています。

  • 初回届出、延長申請、説明資料を含む資料提出は、Eメールでの提出を強く奨励する。
  • 加重要因(aggravating factor)※14が存在しない軽微な違反(BISは多くの違反がこれに該当するとしています。)を開示する者に対しては、簡略化した説明資料の提出を認めるファストトラックを適用する※15
  • 加重要因(aggravating factor)が存在しない軽微な違反は四半期毎にまとめて提出することを認める。
  • VSDの対象品目(VSDを行う当事者が違反の可能性を認識している品目)を購入、利用、移転、保管すること等は本来禁止されているが、VSDを行った者はこれらを行うための特別許可を申請でき、BISはその申請を迅速に審査することを約束する。また、違法に輸出された品目を米国に返送しようとする申請者に対しては、申請者が誰かを問わず、そのような再輸出を許可することが推定される。

本暫定最終規則に関するFAQの公表

 2023年12月29日、BISは本暫定最終規則に関するFAQs(以下「本FAQ」といいます。)を公表しました※16。本FAQは、本暫定最終規則に対してBISに寄せられた各質問に対するコメントを公表するものとなっていますが、特に注目すべき内容を以下紹介します。

  • 本暫定最終規則の対象には米国への輸出は含まれるのか?(I.Q3.)
  • 含まれない。
  • 本暫定最終規則において一定の集積回路(ECCN3A090及び4A090に含まれる一定の集積回路。)を輸出・再輸出するための特定の先端コンピューティング(以下「NAC」といいます。)に対する許可例外※17に関して、事前通知に基づくBISの審査はNACのパラメーターを満たす点に限定されるものと理解してよいか(III.A8.)。
  • BISは、パラメーターのみならず、安全保障上の懸念の有無を確認し、輸出許可を必要とするものか審査を行う。当該安全保障上の懸念は、品目の種類、数量、エンドユーザー、エンドユースを含む多くの要因を考慮して審査を行う。
  • NAC許可例外で認められた「.z項」に該当する品目(ECCN 5A002.zや5A992.z)について、更にEARの許可例外の要件を遵守する必要があるか?(III.Q12.)
  • 「.z項」に該当する品目は、場合によっては、輸出のためにEAR上の複数の要件を満たす必要があり、NAC許可例外が認められる場合であっても、別途輸出許可例外が必要となる場合がある。

今後に向けて

 上記のとおり、BISは高度な集積回路や半導体製造装置といった重要な技術に関する輸出管理規制を強化すると共に、法令違反を犯した者に対しては重大な罰則を課し、他方で仮に違反が生じた場合でも法令を遵守しようと行動する者に対しては一定のインセンティブを与える姿勢を明確にしています。そのような状況において、EARの対象となる可能性がある日本企業においては、コンプライアンス部門のみならず会社組織全体を通じてこれまで以上のEARの遵守体制の見直し・その遵守の徹底が求められる状況にあり、仮にEAR違反が生じた場合には重大なビジネスリスクを抱える可能性があるため、EARに関する今後の政策方針や規制強化の最新の動向について引き続き注視する必要があります。

脚注一覧

※1
詳細は、米国最新法律情報No.97/危機管理・コンプライアンスニュースレターNo. 79/国際通商・経済安全保障ニュースレターNo.10「米国制裁法・輸出管理規則等の安全保障関連法令違反の自主的な報告に関するコンプライアンスノートの公表」をご確認ください。

※2
詳細は、米国最新法律情報No.107/国際通商・経済安全保障ニュースレターNo.13「米国輸出管理規制アップデート~先端コンピューティング及び半導体製造装置関連の輸出管理規制の強化~」をご確認ください。

※7
エンティティ・リストとは、EARのもとで整備されている、米国の国家安全保障や外交政策に反する活動に関与していると考えられる個人、法人及び団体等のリストのことをいいます。エンティティ・リスト及びエンティティ・リスト掲載者への輸出規制の詳細は、本ニュースレターNo.53「米国輸出管理規制アップデート~エンティティ・リストの更新とFAQsの公表~」をご確認ください。

※11
詳細は、米国最新法律情報No.88/国際通商・経済安全保障ニュースレターNo.8「米国輸出管理規制アップデート~EAR違反の開示に関する政策方針の公表~」をご確認ください。

※13
脚注1を参照ください。

※14
Section III(A) of Supplement No.1 to Part 766によれば、社内において刑事罰の対象となる行為が蔓延している、上級管理職による隠蔽若しくは関与、又は国家安全保障法に繰り返し違反している等の事情がこれに該当することとされています。

※15
従来より、ファストトラック審査においては、最終提出後60日以内にノーアクションレター(no-action determination letter)又は警告書(warning letter)が発出されることとされています。

※17
新たな許可例外プログラムが創設され、ECCN 3A090及び4A090に含まれる一定の集積回路(技術的要件を一定の範囲内で下回るハイパフォーマンスではない集積回路)について、カントリー・グループで「D:1」、「D:4」又は「D:5」に指定された国への輸出・再輸出・国内移転の許可例外を設けると共に、マカオ又はカントリー・グループで「D:5」に指定された国(中国を含みます。)に輸出・再輸出する場合は事前に通知が必要とされ、米国政府は当該通知から25日以内に、新たな許可例外の適用を認めるか、輸出許可を求めるか決定することとされています。このような技術的要件の変更及び通知プログラムの導入により、より広範な先端コンピューティング用集積回路がEARの規制対象に含まれることとなります。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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