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ニュースレター

フリーランス・事業者間取引適正化等法に基づくフリーランスの就業環境の整備 ―関連施行令、関連施行規則、関連指針、解釈ガイドライン等の公布・公表を受けて―

NO&T Labor and Employment Law Update 労働法ニュースレター

NO&T Competition Law Update 独占禁止法・競争法ニュースレター

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1 はじめに

 2024年5月31日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)(令和5年法律第25号。以下、「フリーランス保護法」といいます。)に関して、その施行日を2024年11月1日と定める政令(令和6年政令第199号)と共に、公正取引委員会及び厚生労働省から関係下位法令等が公布・公表されました。そのうち、厚生労働省が関わる関係下位法令等としては、以下のものが挙げられます。

  1. 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(令和6年政令第200号)」(以下、「本施行令」といいます。)

    • フリーランス保護法の委任を受けた政令として、政令で定める事項(同法12条の的確表示義務の対象となる募集情報の事項、同法13条1項の定める「継続的業務委託」に関する具体的な期間等)を明らかにしています。
  2. 厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則(厚生労働省令第94号)」(以下、「本施行規則」といいます。)

    • フリーランス保護法の委任を受けた厚生労働省令として、厚生労働省令で定める事項(同法12条の的確表示義務の対象となる募集情報の提供方法、同法14条1項2号の定める「妊娠又は出産に関する事由」、同法16条1項の事前予告の例外事由並びに同項の事前予告及び同条2項の理由開示の方法等)を明らかにするものです。
  3. 特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針(令和6年厚生労働省告示第212号)」(以下、「本指針」といいます。)

    • フリーランス保護法15条に基づいて定める告示であり、同法12条に規定する募集情報の的確な表示、同法13条に規定する育児介護等の両立に対する配慮及び同法14条に規定するハラスメント体制整備義務等に関し、特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な事項について具体的な内容及び実施の細則等を示すものです。
  4. 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方(令和6年5月31日公正取引委員会・厚生労働省)」(以下、「解釈ガイドライン」といいます。)

    • フリーランス保護法及び同法に関する政令、施行規則等の解釈を明確化することを目的として策定されたものです。

 本ニュースレターでは、これらの関係下位法令等の内容を踏まえ、特定受託事業者(フリーランス)の就業環境の整備に関するポイントを解説します。なお、フリーランス保護法の概要については、2024年2月に発行した独占禁止法・競争法ニュースレターNo.29・労働法ニュースレターNo.11にてご紹介しておりますので、併せてご参照ください。

2 募集情報の的確表示義務(同法12条)

(1) 募集情報の的確表示義務が適用される「特定受託事業者の募集」とは(本指針第2、1(2))

 特定業務委託事業者(発注事業者)は、広告などにより、特定受託事業者(フリーランス)の募集に関する情報を提供する際に、①虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないこと、及び②提供する情報を正確かつ最新の内容に保たなければならないこととされています(フリーランス保護法12条)。

 本指針によれば、同法の適用対象となる「特定受託事業者の募集」とは、特定受託事業者(フリーランス)に業務委託をしようとする者が、自ら又は他の事業者に委託して、特定受託事業者になろうとする者に対して広告等により広く勧誘することをいい、結果として募集に応じて業務委託を受けた相手方が特定受託事業者であったか否かにかかわらず、募集情報の提供の時点で、特定受託事業者に業務委託をすることが想定される募集をいうとされています。このため、募集の内容に照らして、専ら、①労働者の募集や、②所定の従業員※1を使用する事業者に業務委託をすることが想定される募集であって、特定受託事業者に業務委託をすることが想定されない募集には適用されません。

(2) 的確表示義務の対象となる募集情報(本施行令2条,(2)、本指針第2、1(4))

 的確表示義務の対象となる募集情報について、本施行令において、下記①~⑤の事項とすることが示され、本指針で、その具体的な内容が下記のとおりであることが示されました。

  1. 「業務の内容」
    業務委託における成果物の内容又は役務提供の内容、業務に必要な能力又は資格、検収基準、不良品の取扱いに関する定め、成果物の知的財産権の許諾・譲渡の範囲、違約金に関する定め(中途解除の場合を除く。)など
  2. 「業務に従事する場所、期間又は時間に関する事項」
    業務を遂行する際に想定される場所、納期、期間、時間など
  3. 「報酬に関する事項」
    報酬の額(算定方法を含む。)、支払期日、支払方法、交通費や材料費等の諸経費(報酬から控除されるものも含む。)、成果物の知的財産権の譲渡・許諾の対価など
  4. 「契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。)に関する事項」
    契約の解除事由、中途解除の際の費用・違約金に関する定めなど
  5. 「特定受託事業者の募集を行う者に関する事項」
    特定業務委託事業者(発注事業者)となる者の名称や業績など

 これらの的確表示義務の対象となる募集情報に掲げられている事項は、求人の際に全ての事項を表示することを義務付けられているものではありませんが、本指針は、当事者間の募集情報に関する認識の齟齬を可能な限り無くし、業務委託後の取引上のトラブルを未然に防ぐという観点から、これらの事項を可能な限り含めて情報を提供することが望ましいとしています(本指針第2の5)。

(3) 的確表示義務の対象となる募集情報の提供方法(本施行規則1条、本指針第2、1(3))

 本施行規則1条及び本指針第2、1(3)によれば、フリーランス保護法12条1項の厚生労働省令で定める的確表示義務の対象となる募集情報の提供方法は、①新聞、雑誌等の刊行物に掲載する広告、②文書の掲出又は頒布、③書面の交付、④ファクシミリ、⑤電子メール等(SNS等のメッセージ機能等を利用した電気通信を含む。)、⑥テレビやラジオ、インターネット上のオンデマンド放送や自社のホームページ、クラウドソーシングサービス等が提供されるデジタルプラットフォーム等であるとされています。

(4) 募集情報に係る虚偽の表示や誤解を生じさせる表示の禁止(本指針第2、2及び3)

 特定業務委託事業者(発注事業者)は、広告などにより特定受託事業者(フリーランス)の募集に関する情報を提供するに当たっては、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないこととされています。

ア 募集情報に係る虚偽の表示の禁止(本指針第2、2(1))

 例えば、募集情報の提供時に、意図的に募集情報と実際の就業に関する条件を異なるものとした場合や、実際には存在しない業務に係る募集情報の提供をした場合等は、虚偽の表示に該当します。ただし、事後的に当事者間の合意に基づき、募集情報から実際の契約条件を変更することとなった場合は虚偽の表示には該当しないとされています。本指針は、虚偽の表示の具体例として以下のものを挙げています。

(虚偽の表示の具体例)

  • 実際に業務委託を行う事業者とは別の事業者の名称で業務委託に係る募集を行う場合
  • 契約期間を記載しながら実際にはその期間とは大幅に異なる期間の契約期間を予定している場合
  • 報酬額を表示しながら実際にはその金額よりも低額の報酬を予定している場合
  • 実際には業務委託をする予定のない特定受託事業者(フリーランス)の募集を出す場合
イ 募集情報に係る誤解を生じさせる表示の禁止(本指針第2、3(1)、(2))

 一般的・客観的に誤解を生じさせるような表示は、誤解を生じさせる表示に該当します。本指針では、特定業務委託事業者(発注事業者)が特定受託事業者(フリーランス)に誤解を生じさせることのないよう留意すべき事項として以下のものを挙げています。

【特定受託事業者(フリーランス)に誤解を生じさせないよう留意すべき事項】

  • 関係会社を有する者が特定受託事業者の募集を行う場合、業務委託を行う予定の者を明確にし、当該関係会社と混同されることのないよう表示しなければならないこと
  • 特定受託事業者の募集と、労働者の募集が、混同されることのないよう表示しなければならないこと
  • 報酬額等について、実際の報酬額等よりも高額であるかのように表示してはならないこと
  • 職種又は業種について、実際の業務の内容と著しく乖離する名称を用いてはならないこと
ウ 他の事業者に広告等による募集を委託した場合(本指針第2、2(3)及び3(3))

 本指針は、特定業務委託事業者(発注事業者)は、他の事業者に広告等による募集を委託した場合に、当該他の事業者が虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしていることを認識した場合には、情報の訂正を依頼するとともに、他の事業者が情報の訂正をしたかどうか確認を行わなければならないとしています。情報の訂正を繰り返し依頼したにもかかわらず他の事業者が訂正しなかった場合には、特定業務委託事業者は募集情報の的確表示義務(フリーランス保護法12条)の違反にはならないとされています。

(5) 募集情報に係る正確かつ最新の表示の義務(本指針第2、4)

 特定業務委託事業者(発注事業者)は、広告等により特定受託事業者(フリーランス)の募集に関する情報を提供するに当たっては、正確かつ最新の内容を保たなければならないとされています。

 本指針では、特定受託事業者の募集に関する情報を正確かつ最新の内容に保つための適切な対応の例として、以下の措置が示されています。

【募集情報を正確かつ最新の内容に保つための対応の例】

  • 特定受託事業者の募集を終了した場合又は募集の内容を変更した場合には、当該募集に関する情報の提供を速やかに終了し、又は当該募集に関する情報を速やかに変更すること
  • 広告等により募集することを他の事業者に委託した場合には、当該事業者に対して当該情報の提供を終了するよう依頼し、又は当該情報の内容を変更するよう依頼するとともに、他の事業者が当該情報の提供を終了し、又は当該情報の内容を変更したかどうか確認を行わなければならないこと(なお、情報の変更等を繰り返し依頼したにもかかわらず他の事業者が変更等をしなかった場合には、募集情報の的確表示義務に違反することにはなりません)
  • 特定受託事業者の募集に関する情報を提供するに当たっては、当該情報の時点を明らかにすること

3 育児介護等と業務の両立に対する配慮・努力義務(同法13条)

(1) 育児介護等と業務の両立に対する配慮・努力義務(本施行令3条、本指針第3、1(1)~(3))

 特定業務委託事業者(発注事業者)は、政令で定める一定期間以上行う継続的な業務委託(「継続的業務委託」)について、特定受託事業者(フリーランス)が育児介護等と両立して業務が行えるよう、その申出に応じて必要な配慮をしなければならないとされています(フリーランス保護法13条1項)。「継続的業務委託」以外の業務委託の場合には、育児介護等と業務の両立に対する配慮の努力義務が課されています(同条2項)。

 本施行令において、フリーランス保護法13条1項の「政令で定める期間」は6か月とすることが示されました。

 それを踏まえ、本指針においては、「継続的業務委託」に関する具体的な期間、継続的業務委託の期間の算定方法等について、以下の内容とすることが示されています。

  • 「継続的業務委託」とは、6か月以上の期間行う業務委託又は当該業務委託に係る契約の更新により6か月以上の期間継続して行うこととなる業務委託を意味する。
  • 継続的業務委託の期間の算定に際しては、業務委託に係る契約を締結した日を「始期」、業務委託に係る契約が終了する日を「終期」とする。
  • 業務委託に係る給付に関する基本的な事項についての契約(以下、「基本契約」といいます。)を締結し、基本契約に基づいて業務委託を行う場合における継続的業務委託の期間の算定に際しては、基本契約を締結した日を「始期」、基本契約が終了する日を「終期」とする。
  • 業務委託契約又は基本契約の締結日から6か月を経過せずとも、当該締結日からその契約の終了日までの期間が6か月以上であることが見込まれるのであれば、「継続的業務委託」に該当することになる。
  • 期間の定めがない(「終期」の定めがない)業務委託又は基本契約は、継続的業務委託に含まれるものとして取り扱われる。
  • 契約の更新により継続して行うこととなる業務委託の期間については、最初の業務委託又は基本契約の始期から最後の業務委託又は基本契約の終期までを算定する。※2

(2) 特定業務委託事業者(発注事業者)がすべき育児介護等に対する配慮(本指針第3、2(1))

 本指針において、特定業務委託事業者(発注事業者)は、特定受託事業者(フリーランス)が育児介護等と両立しつつ業務委託に係る業務に従事することができるよう、下記の①から④に掲げる事項について、継続的業務委託の場合には配慮しなければならないこと、それ以外の業務委託の場合には配慮するよう努めなければならないことが示されています。

  1. 配慮の申出の内容等の把握
    特定受託事業者から育児介護等に対する配慮の申出を受けた場合には、話合い等を通じて、当該者が求める配慮の具体的な内容及び育児介護等の状況を把握すること
  2. 配慮の内容又は取り得る選択肢の検討
    特定受託事業者の希望する配慮の内容や希望する配慮の内容を踏まえたその他の取り得る対応について、行うことが可能であるか否かを十分に検討すること
  3. 配慮の内容の伝達及び実施
    具体的な配慮の内容が確定した際には、速やかに申出を行った特定受託事業者に対して、その内容を伝え、実施すること
  4. 配慮の不実施の場合の伝達・理由の説明
    特定受託事業者の希望する配慮の内容やその他の取り得る対応を十分に検討した結果、業務の性質や実施体制等に照らして困難であることなどにより、やむを得ず必要な配慮を行うことができない場合には、特定受託事業者に対して配慮を行うことができない旨を伝達し、その理由をわかりやすく説明すること

(3) 特定業務委託事業者(発注事業者)による望ましくない取扱い(本指針第3、3)

 本指針は、特定業務委託事業者(発注事業者)による望ましくない取扱いとして以下のものを挙げています。

ア 特定受託事業者(フリーランス)からの育児介護等に対する配慮の申出の阻害

(具体例)

  • 育児介護等に対する配慮の申出に際して、膨大な書類を提出させる等の特定受託事業者にとって煩雑又は過重な負担となるような手続を設けること
  • 特定業務委託事業者の役員又は労働者が、育児介護等に対する配慮の申出をされると周囲に迷惑がかかるといった申出を躊躇する要因となるような言動をすること
イ 特定受託事業者(フリーランス)が育児介護等に対する配慮の申出をしたこと又は配慮を受けたことのみを理由とする契約の解除その他の不利益な取扱い

(具体例)

  • 特定受託事業者がその家族の介護のために特定の曜日や時間の業務を行うことが難しくなったことを理由として配慮の申出をしたところ、当該申出者による別の曜日や時間での業務の遂行が可能であって、当該業務を別の曜日や時間に振り替えても業務委託契約の目的を達成できることが見込まれるにもかかわらず、配慮の申出をしたことを理由として、当該申出者との間の契約を解除すること
  • 特定受託事業者が出産に関する配慮を受けたことを理由として、現に役務を提供しなかった業務量に相当する分を超えて報酬を減額すること
  • 特定受託事業者が育児や介護に関する配慮を受けたことにより、特定業務委託事業者の労働者が繰り返し又は継続的に嫌がらせ的な言動を行い、当該特定受託事業者の能力発揮や業務の継続に悪影響を生じさせること

4 ハラスメント対策に係る体制整備義務(同法14条)

(1) ハラスメント対策に係る体制整備義務(本指針第4、1~4、本施行規則2条)

 特定業務委託事業者(発注事業者)は、特定受託業務従事者※3(「特定受託事業者である個人及び特定受託事業者である法人の代表者」)に対し、「業務委託におけるハラスメント」が発生することがないよう、その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならず(フリーランス保護法14条1項)、特定受託業務従事者が相談を行ったことやその相談を受けた特定業務委託事業者の対応に協力した際に事実を述べたことを理由として不利益な取扱いをすることはできないとされています(同条2項)。

 「業務委託におけるハラスメント」とは、特定業務委託事業者(発注事業者)との間で、業務委託契約を締結した特定受託業務従事者に対して、当該業務委託に関して行われるセクシュアルハラスメント(同条1項1号)、妊娠、出産等に関するハラスメント※4(同項2号)、パワーハラスメント(同項3号)をいうものと定められています。

(2) 特定業務委託事業者(発注事業者)が業務委託におけるハラスメントを防止するために講ずべき措置(本指針第4、5)

 本指針は、特定業務委託事業者(発注事業者)は、業務委託におけるハラスメントを防止するために、下記のような措置を講じなければならないとしています。下記内容は、自らの雇用する労働者に対しハラスメント防止措置を講ずることを求める既存の労働関係法制におけるハラスメント関連指針を参考にしつつ定められたという経緯から、基本的にそれらの指針と同様の内容となっています。

  1. 特定業務委託事業者(発注事業者)の方針等の明確化及びその周知・啓発

    • 業務委託におけるハラスメントに対する方針の明確化(就業規則等の定め、社内イントラネット等へ掲載、研修等の実施)
    • 業務委託におけるハラスメントに対する厳正な対処方針及び対処内容の規定(業務委託におけるハラスメントに関する懲戒規定の創設等)
  2. 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

    • 業務委託におけるハラスメントに関する相談窓口の設置(既存の職場におけるハラスメント相談窓口を活用することも可能)及び特定受託業務従事者(フリーランス)に対する周知(業務委託契約に関する書面やメールなどに相談窓口の連絡先を記載する等)
    • 相談窓口の担当者が相談に対し適切に対応できるようにすること(業務委託におけるハラスメントに関する相談に広く応じること、マニュアルに基づく対応や研修の実施等)
  3. 業務委託におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

    • 事案に係る事実関係の迅速かつ正確な把握
    • 被害者に対する配慮のための措置の適正な実施(被害者と行為者との間の関係改善に向けた援助、被害者と行為者を引き離すための被害者の就業場所の変更や行為者の配置転換、事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置の実施)
    • 行為者に対する懲戒処分その他の措置の適正な実施
    • 再発防止に向けた措置の実施(社内イントラネット等で業務委託におけるハラスメントに対する方針を再度周知・啓発、業務委託におけるハラスメント防止のための研修等の実施)
  4. ①から③までの措置を講ずるに際しては、併せて次の措置を講じること

    • 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために必要な措置及びその旨の周知
    • 業務委託におけるハラスメントに関する相談や事実関係の確認等への協力を理由とする不利益取扱いの禁止及びその旨の周知

5 中途解除等の事前予告・理由開示(同法16条)

(1) 中途解除等の事前予告・理由開示

 特定業務委託事業者(発注事業者)は、「継続的業務委託」(前記3.のとおり、政令で定める一定期間以上行う継続的な業務委託を指し、本施行令及び本指針によれば、6か月以上の期間行う業務委託又は当該業務委託に係る契約の更新により6か月以上の期間継続して行うこととなる業務委託を意味します。)を中途解除(契約の不更新を含む。)する場合は、厚生労働省令で定める例外事由に該当しない限り、中途解除等の30日前までに、特定受託事業者(フリーランス)に対してその予告をしなければならないとされています(フリーランス保護法16条1項)。

 また、当該予告の日から契約終了日までの間に、特定受託事業者が契約の中途解除等の理由の開示を請求した場合には、特定業務委託事業者は、遅滞なく中途解除等の理由を開示しなければならないとされています(同条2項)。

(2) 事前予告・理由開示の方法(本施行規則3条、5条)

 本施行規則は、フリーランス保護法16条1項の厚生労働省令で定める事前予告の方法(本施行規則3条)及び同条2項の厚生労働省令で定める理由開示の方法(本施行規則5条)は、①書面を交付する方法、②ファクシミリを送信する方法、③電子メール等(ただし、記録を出力することにより書面を作成できるものに限る。)であるとしています。

(3) 事前予告の例外事由(本施行規則4条、解釈ガイドライン第3部の4(2))

 本施行規則4条は、フリーランス保護法16条1項に規定する厚生労働省令で定める事前予告の例外事由が以下のものであると規定しています。

  1. 災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合
  2. 他の事業者から業務委託を受けた特定業務委託事業者(発注事業者)が、当該業務委託に係る業務(以下、「元委託業務」といいます。)の全部又は一部について特定受託事業者(フリーランス)に再委託した場合であって、当該元委託業務に係る契約の全部又は一部が解除され、当該特定受託事業者に再委託した業務(以下、「再委託業務」といいます。)の大部分が不要となった場合その他の直ちに当該再委託業務に係る契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。)をすることが必要であると認められる場合
  3. 特定業務委託事業者が特定受託事業者と業務委託に係る給付に関する基本的な事項についての契約(以下、「基本契約」といいます。)を締結し、基本契約に基づいて業務委託を行う場合又は契約の更新により継続して業務委託を行うこととなる場合であって、契約期間が30日間以下である一の業務委託に係る契約(基本契約に基づいて業務委託を行う場合には、当該基本契約に基づくものに限ります。)の解除をしようとする場合
  4. 特定受託事業者の責めに帰すべき事由により直ちに契約を解除することが必要であると認められる場合
  5. 基本契約を締結している場合であって、特定受託事業者の事情により、相当な期間、当該基本契約に基づく業務委託をしていない場合

 なお、解釈ガイドライン第3部の4(2)においては、仮に、特定業務委託事業者(発注事業者)と特定受託事業者(フリーランス)との間で、一定の事由があれば事前予告なく中途解除することができると定めていたとしても、それだけで直ちに事前予告なく解除できるものとなるわけではなく、厚生労働省令で定める事前予告の例外事由に該当する必要があることが指摘されています。

 また、特定業務委託事業者と特定受託事業者との間の合意に基づく契約終了の場合は契約の解除には該当しないものの、その際には、契約の解除に関する合意に係る特定受託事業者の意思表示が自由な意思に基づくものであったかどうかについて慎重に判断する必要があることも指摘されています。

(4) 理由開示の例外事由(本施行規則6条、解釈ガイドライン第3部の4(6))

 本施行規則6条は、フリーランス保護法16条2項に規定する厚生労働省令で定める理由開示の例外事由として、①「第三者の利益を害するおそれがある場合」(本施行規則6条1号)と②「他の法令に違反することとなる場合」(同条2号)を挙げています。

 そして、解釈ガイドライン第3部の4(6)では、①の例外事由としての「第三者の利益を害するおそれがある場合」とは、契約の解除の理由を開示することにより、特定業務委託事業者(発注事業者)及び特定受託事業者(フリーランス)以外の者の利益を害するおそれがある場合をいうものであり、②の例外事由としての「他の法令に違反することとなる場合」とは、契約の解除の理由を開示することにより、例えば、法律上の守秘義務に違反する場合などをいうと説明されています。

6 最後に

 デジタル社会の進展や専門性重視の傾向などを背景として、働き方の多様化が進展する中で、コロナ禍以降も、フリーランスとして働く例が増えており、企業が、フリーランスと取引を行うケースは今後ますます増加することが予想されます。

 今般、フリーランス保護法が本年11月1日に施行されることとなり、関係下位法令等が公布・公表されたことにより、募集情報の的確な表示、育児介護等と業務の両立に対する配慮、ハラスメント体制整備義務等、中途解除等の事前予告の例外的事由等の規制の細目や運用の方向性が示されました。フリーランスと取引をする機会が見込まれる各企業におかれては、目前に迫ったフリーランス保護法の施行に向けて、既存の労働関係法令に基づいて整備した社内体制・ツールを活用することや、新たな体制を構築するなど、その準備に当たって、本ニュースレターをお役立ていただければ幸いです。

脚注一覧

※1
フリーランス保護法は、従業員を使用せず1人の「個人」として業務委託を受けるフリーランスと、従業員を使用して「組織」として業務委託を行う発注事業者との間で交渉力などに格差が生じることを踏まえて、フリーランスの就業環境の整備等を図ることを目的としていることから、同法の適用対象となる「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないものとされています(同法2条1項)。そして、解釈ガイドライン第1部の1(1)によれば、「従業員を使用」とは、①1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、②継続して31日以上雇用されることが見込まれる労働者(労働基準法(昭和22年法律第49号)第9条に規定する労働者をいう。)を雇用することをいうとされています。

※2
ここで、「契約の更新により継続して行うこととなる」と判断されるためには、①契約の当事者が同一であり、その給付又は役務の提供の内容が少なくとも一定程度の同一性を有し、②前の業務委託に係る契約又は基本契約が終了した日の翌日から、次の業務委託に係る契約又は基本契約を締結した日の前日までの期間の日数が1か月未満であること、という2つの要件を満たす必要があります。
なお、本指針では、給付等の内容の一定程度の同一性の判断に当たっては、機能、効用、態様等を考慮要素として判断することとされ、その際、原則として「日本標準産業分類」の小分類(3桁分類)を参照し、前後の業務委託に係る給付等の内容が同一の分類に属するか否かで判断することとされています(本指針第3、1(3))。

※3
「特定受託業務従事者」とは、「特定受託事業者である個人及び特定受託事業者である法人の代表者」(フリーランス保護法2条2項)と定義されています。法人等の取引主体たる事業主に対するハラスメントが観念できないことから、「特定受託事業者」という属性を有する自然人を意味するものとして別途定義が設けられています。

※4
フリーランス保護法14条1項2号では、「特定受託業務従事者の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動によりその者の就業環境を害すること」と定義されており、本施行規則2条において、「厚生労働省令で定める妊娠又は出産に関する事由」として、①妊娠したこと、②出産したこと、③妊娠又は出産に起因する症状により業務委託に係る業務を行えないこと若しくは行えなかったこと又は当該業務の能率が低下したことが挙げられています。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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