icon-angleicon-facebookicon-hatebuicon-instagramicon-lineicon-linked_inicon-pinteresticon-twittericon-youtubelogo-not
People 弁護士等紹介

多岐にわたる分野の専門的知識と実績を持つ弁護士が機動的にチームを組み、質の高いアドバイスや実務的サポートを行っています。

Publications 著書/論文

当事務所の弁護士等が執筆したニュースレター、論文・記事、書籍等のご紹介です。多様化・複雑化する法律や法改正の最新動向に関して、実務的な知識・経験や専門性を活かした情報発信を行っています。

Seminars 講演/セミナー

当事務所では、オンライン配信を含め、様々な形態でのセミナーの開催や講演活動を積極的に行っています。多岐にわたる分野・テーマの最新の企業法務の実務について解説しています。

Who We Are 事務所紹介

長島・大野・常松法律事務所は、国内外での豊富な経験・実績を有する日本有数の総合法律事務所です。 企業が直面する様々な法律問題に対処するため、複数の弁護士が協力して質の高いサービスを提供することを基本理念としています。

SCROLL
TOP
Publications 著書/論文
ニュースレター

上場ベンチャーファンドに関する2023年の改正動向について ―東証ルール、日証協ルールの改正

NO&T Capital Market Legal Update キャピタルマーケットニュースレター

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 2022年8月付けのニュースレター※1でご紹介のとおり、東証は、同年12月に、上場ベンチャーファンドの資産運用の健全性確保等の観点から、上場審査基準等の整備を行いました。

 上記改正に加え、この度、東証は、スタートアップのための資金供給の強化等に向けた環境整備や上場ベンチャーファンドの情報開示の内容や頻度に関する近時の議論※2を踏まえ、投資者保護に留意しつつ、スタートアップへの資金供給を強化する観点から、上場ベンチャーファンドの運用資産等に関する開示基準について、所要の見直しを行うことを公表しました。

 また、これに先立ち、日証協は、上場ベンチャーファンドの資産運用の健全性確保等に係る上場審査基準等の整備等これら一連の東証における制度整備を踏まえ、「有価証券の引受け等に関する規則」等の一部改正を行いました。本ニュースレターでは、上記東証における開示基準(以下「東証ルール」といいます。)の見直し及び日証協における規則(以下「日証協ルール」といいます。)改正(2023年11月6日から施行)の概要についてご紹介いたします。

 なお、2023年12月14日に公表された東証による上記改正案の内容は、2024年3月を目処に実施予定とされており、現在パブリック・コメント手続きに付されている段階であるため、今後見直しがなされる可能性がある点にご留意ください。

1. 東証ルール

 改正前においては、上場ベンチャーファンドに係るベンチャーファンド発行投資法人及びベンチャーファンド資産運用会社(以下「上場ベンチャーファンド発行者等」といいます。)は、下記①の事項を週1回、下記②から⑤の事項を月1回開示する必要がありますが、今回の公表においては、これらの情報開示の頻度等が過度な負担とならないよう、運用資産等に関する下記①から⑤の事項を、3か月に1回開示しなくてはならないこととされました※3

  1. 当該上場ベンチャーファンドの1口当たり純資産額
  2. 上場後5年以内の株券等、上場後5年以内の継続保有株券等及び上場後5年を経過した継続保有株券等の銘柄
  3. 未公開株等及び未公開株等関連資産の発行者の概要
  4. 直近の運用状況及び短期的な運用方針
  5. 上場後5年を経過した継続保有株券等の保有理由及び運用方針

 なお、上記③(未公開企業の概要)については、改正前においては、未公開企業の直前期及び直前々期に係る売上高や経常利益、当期純利益、配当総額、総資産の額、総負債の額、純資産の額を記載することとなっています(有価証券上場規程施行規則別添八.I.2.二.b)。しかし、多くの未公開企業の売上高や経常利益、当期純利益、配当総額が一般的には公表されていない現状を踏まえ、その理由を注記することを前提に、これらの額を記載しないことができることとする趣旨の改正も併せて導入される予定です。なお、運用資産等の状況を適時に投資者が把握できるよう、総資産の額や総負債の額、純資産の額を記載する必要があることには改正前後で変更はない予定です。

 但し、未公開株等に関する組入計画の進捗状況等を周知する観点から、上場後6か月以内に上場審査の形式要件の1つである運用資産等の比率を満たすことが見込まれる場合により上場するときには本運用資産等の比率を満たすまで又は運用資産等の比率を満たさず猶予期間入りした場合における猶予期間内は、上記②から⑤までの事項を、月1回以上開示しなければならないとされています。

2. 日証協ルール

 「有価証券の引受け等に関する規則」(以下「規則」といいます。)及び「『有価証券の引受け等に関する規則』に関する細則」(以下「細則」といいます。)について、ベンチャーファンド市場への円滑な上場に資する観点から、以下の改正が行われました。

  1. 「株券等」の定義規定に「ベンチャーファンド(金商法第2条第1項第11号に掲げる投資証券であって、投資者の資金を主として未公開株等に対する投資として運用することを目的とするもの)」が追加されました(規則第2条第1号)。
  2. 主幹事就任規制に関する規定の対象として投資証券であるベンチャーファンドが追加されました(規則第2条第11号、第9条第2項、第10条第6号、細則第2条、第3条第1項等)。
  3. 新規公開及び上場発行者による公募増資等における引受審査項目としてベンチャーファンドに係る項目が追加されました(規則第16条第1項第3号、第17条第1項第4号、細則第9条第3項及び第10条第3項)。

3. おわりに

 ベンチャー・スタートアップへの投資におけるエコシステムの構築や制度設計については様々な動向があり、その一部として近時においても、経済産業省が官民によるインパクトスタートアップ育成支援プログラム「J-Startup Impact」を設立したり、デジタルアセット共創コンソーシアムが「ベンチャーキャピタル×デジタル証券化」という文脈で、投資事業有限責任組合(LPS)の有限責任出資組合員(LP)持分を裏付け資産とした特定受益証券発行信託スキームによるデジタル証券化スキームを提案したりする等、様々な動きがあるところです。これまで以上に未上場のベンチャー企業が投資対象として重要な役割を担っていくことが予想されるところ、上場ベンチャーファンドもこのような投資における重要な選択肢となることが期待されます。

脚注一覧

※2
令和5年6月16日閣議決定「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023 改訂版」、金融審議会「市場制度ワーキング・グループ・資産運用に関するタスクフォース報告書」(令和5年12月12日公表)。なお、同報告書16頁では、「上場ベンチャーファンドにおいては、株式売却等による余剰資金について、財務戦略の多様化や再投資の実行が困難である場合等の使途として自己投資口の取得も選択肢となり得るものと考えられる。このため、自己投資口の取得についてインサイダー取引規制の対象とした上で、自己投資口の取得を可能とすることが考えられる。」との指摘がある点も注目に値します。

※3
なお、運用資産等に係る資産の譲渡又は取得等を決定した場合や未公開株等が金融商品取引上に上場されることとなった場合、未公開株等及び未公開株等関連資産の発行者につき破産手続開始の申立てが行われた場合等において、運用資産等の状況を適時に投資者が把握できるよう、上場ベンチャーファンド発行者等は、直ちにその内容を開示する必要があることに変更はありません。また、その他の場合でも、運用資産等に関する重要な事項であって、投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすものについて、上場ベンチャーファンド発行者等は、直ちにその内容を開示する必要があります。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


全文ダウンロード(PDF)

Legal Lounge
会員登録のご案内

ホットなトピックスやウェビナーのアーカイブはこちらよりご覧いただけます。
最新情報をリリースしましたらすぐにメールでお届けします。

会員登録はこちら

弁護士等

ファイナンスに関連する著書/論文

キャピタルマーケットに関連する著書/論文

アセットマネジメント/ファンドに関連する著書/論文

金融レギュレーションに関連する著書/論文

証券化/ストラクチャードファイナンス/信託に関連する著書/論文

M&Aに関連する著書/論文

プライベートエクイティ/ベンチャーキャピタル・スタートアップに関連する著書/論文

決定 業務分野を選択
決定